オックスフォード大学が認定したことで話題になっている「10年後になくなる仕事」。せっかくスキルや経験を身につけても、世の中の流れで必要とされなくなってしまう職業であったら…。現代は様々な業界でのテクノロジーの進化が早く長くビジネスシーンで活躍するためには、残る仕事、残らない仕事を見極めることが肝心。10年後になくなる仕事とその理由を検証します。
もくじ
コンピュータやロボットにできる仕事はなくなる
かつてインターネットが普及し始めた時、各企業には自社のwebサイト、商品サイトを作成するというニーズがあり、webデザイナー、コーダー、ブログラマといった職業は技術職として売り手市場でした。インターネット、IT関連の専門技術を身につければ「ずっと食べていける」と思われていました。ところが昨今では、自動的にwebサイトを生成するシステムが浸透し、こうした職能を持つ人たちが重宝されなくなってきています。このように「花形職業」だったはずの仕事もテクノロジーの進化で、「人に委ねなくてもいい仕事」へと短期間で変化してしまいます。
「10年後になくなる仕事」として、AI(人工知能)に取って代わられてしまう仕事が挙げられます。かつてのロボットは「パターン化されたルーティンワークには優れているが応用が利かない」とされていました。ところが最新のAIでは、こうしたウィークポイントはも解消されています。AIが膨大なビッグデータを取り込むことであらゆるパターンを把握。人間レベル…どころか人間以上に、あらゆる状況に対応できて応用が利く存在になってきています。
AIの進化で人間に代わられてしまうのは、例えばどんな職業でしょうか。電話オペレーター、データ入力、施設の案内係、簿記・会計など、パターン化しやすい職業は早期になくなるでしょう。レストランの案内係やレジ係は既に無人レジやタッチパネルによるオーダーが導入されていますね。こうした職業は既にロボットやコンピュータに変わりつつあるため、それほど意外ではないかもしれません。ところが「人と人とのコミュニケーション」「決め細かい専門知識」などが必須と認識されている仕事にも、10年後になくなるとされているものがいくつかあります。
パターン化できる専門職・技術職はなくなる
この「10年後になくなる仕事」で衝撃だったのは、単純作業、ルーティンワークだけでなく「人でなくてはできない」と思われていた職業が多数含まれていたところにあります。その代表的な仕事が「専門知識を要する職」または「コミュニケーションが必要な職」です。例えば「スポーツの審判」「銀行の融資担当者」「不動産ブローカー」「保険・クレジットカードの審査」「クレーム対応」など。これらの仕事がAIに変わられるというのは意外ですが、共通点として「専門知識は必要であっても、決まったルールを膨大なビッグデータとしてインプット」することで可能な職業です。
例えば金融機関の融資やクレジットカードの審査ですが、一定段階までは既に「スコアリング」という申込者の属性を点数化して自動的にジャッジをする手法を取り入れています。さらに膨大なビッグデータをインプットしたAIによって、人間の視点で判断する部分は限りなく削減されていき、それを専門とする人は不要になっていきます。目の前データ、状況からジャッジする性質のこうした職業は、人間でなくてもできるようになるため、10年後になくなる仕事とされています。
知的労働職・技術職も安心できない
さて、これらのような「決まったルールで測れない」とされる知的労働者・技術職にも、なくなる仕事が複数あります。その例として挙げられているのが「測量技術者」「彫刻師」「ネイリスト」「塗装職人」「映写技師」「動物部リーダー」などです。人は眠ったり、休息の時間も必要でさらにコンディションによってパフォーマンスが左右されます。さらにビッグデータによる分析力の向上とともに、センサー技術の進化によって、これまで人でなくてはできないとされていた職業もロボットの方が正確にできる世の中になっていきます。
さらに知的労働者という認識の職業でも、このビッグデータ+センサー技術によって10年後になくなってしまうと言われます。例えば「トレーダー」「ファイナンシャルプランナー」「講師」「弁護士助手」など。まさか自動化できないだろうという職業も安心してはいられません。
人間にしかできない企画・クリエイティブ職は残る
技術の向上で本当にSF映画のように、人の仕事がロボットやAIに奪われてしまうのでしょうか。万能に見えるロボットやAIにもウィークポイントがあります。それは予測できないことやデータのないことには対応できないという点です。過去の事例があるパターンや決められていることを正確に行うのは得意ですが、クリエイティブ・企画といった「これまでに例のないことを生み出す仕事」はロボットやAIが苦手としています。
このように「今までにないものが求められる」仕事であれば、人間の強みが最も発揮されるでしょう。特に日本社会は「前例に習う」のが無難でよしとされてきた国民性ですが、こうした意識では人間が職場に必要なくなってしまいます。どんな業界、ポジションであっても、10年後に失職してしまわないように「今までにないものを生み出す」という意識で仕事に向き合っていくことが「残る仕事」をする人になれるでしょう。
まとめ
「10年後になくなる仕事」には、意外な職業も多かったと思います。ロボットに変わられる仕事。ビッグデータでパターン化しやすい仕事。センサー技術の向上で人間に委ねる必要がなくなる仕事。これらが将来なくなっていく仕事です。「せっかく経験を積んで技能を習得したのに、なくなってしまう職業だなんて」「なくなるのが心配で、どんなスキルを積んだらいいか読めない」という声もあるでしょう。ですが「10年後、なくなる仕事」と言っても、全く人間を介さないわけではありません。必ずしも「全て人間がプレイヤーである必要はない仕事」なので、言い換えれば「監督するのは人間」である必要はあります。その特殊技能を極めて、上位レイヤーから判断できるようになれば「ロボットを監督する人」にもなれます。
かつて印刷・グラフィックの世界でDTPへと飛躍的な技術革新を遂げた時、紙でレイアウトをするデザイナーや写植オペレーターは失職していきましたが、エディター、アートディレクターとより技能を極めた人々はより上位のポジションで活躍しています。今回「10年後になくなる仕事」と言われているのは、あくまでAIやビッグデータやセンサーでより正確に行えるという側面からの観点。その道を極めて業界を牽引できる存在になるか、どうかが肝心ではないでしょうか。10年後にはどんな職業であっても、受け身で作業をする労働者は淘汰され、人間が思考し、発想し、クリエイティブする能力を持つ人たちが職業人として活躍するのではないでしょうか。
職業名だけで「心配・安心」といったものではなく、仕事への取り組み、姿勢が左右する時代になっていきそうです。「10年後になくなる仕事」と言われてしまった職業についている方、勉強中の方は。その業界でより精巧で人間にしかできないものを追求することで、むしろ「この職業を守る」という誇りも生まれるかもしれませんね。