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ワンランク上の社員へ ロジカルシンキングを鍛える三段論法の使用例

2000年代以降外資系企業の進出も増え始め、仕事に対するグローバルな視点や考え方が必要とされています。

こうした中、広まり始めたのが「ロジカルシンキング」や「論理的思考」といった思考法。元々は学術やITの用語ですが、考えを整理して、意見や主張を正確に伝えるためのビジネススキルとして、国内外問わず様々なシーンで活用されています。

「三段論法」は、論理的思考の最も基本的な形です。使い方を覚えて、活躍の幅をひろげましょう。

三段論法の基本形B=C、そしてA=B、ゆえにA=C

ある前提から理詰めで結論を導くための、最も基本的な形が三段論法です。図式化すると次のようにあらわされます。

三段論法の基本形

(大前提) BはCである

(小前提) AはBである

(結 論) ゆえにAはCである

これを実際に使ってみると次のようになります。

例1

(大前提) 鳥は卵を産む

(小前提) 鶏は鳥である

(結 論) ゆえに鶏は卵を産む

最初に鳥全体に当てはまることをいい、次に鶏が哺乳類の一部であることを言います。そして最後に全体に当てはまることが一部にあてはまることを言います。

このように、広く当てはまる大きな前提と、部分的に当てはまる小さな前提という、二つの前提から結論を導く論理の形式が、三段論法です。

三段論法には主語を入れ替えた様々なパターンがありますが、これは最も多く使われる形です。

ビジネスで使おう 三段論法の使用例1

三段論法は、当たり前の事実から話を始めることで、結論に説得力を持たせられます。また、順序だてて論を展開することで、重要なポイントがどこにあるのか分かりやすくなります。

このように、「できるだけ誰にでも理解できる形に仕事を整える」ことを、ビジネスでは「標準化」といい、業務が複雑化する現代では特に重宝されるスキルです。

ここでは、ビジネスでの使用例として、プレゼン発表と企画レジュメの作成という2つを紹介します。

論理の流れを意識したプレゼンは聞きやすい

「残業時間削減のための改善案」を発表する場合を考えてみます。

例2  案を列挙した場合

残業時間を減らすために改善案を発表します。これはベンチャー企業△△を参考にしました。

一つ目は各部門責任者による定例会議の開催です。

二つ目は×××です…

例3 三段論法を使用した場合

今回提案しますのは、事務工程の見直し及び効率化のための業務改善案です。

同業他社の間で利益を上げている企業を調べたところ、設立5年以内のベンチャー系企業は全て収益率が高いことが分かりました。

それらベンチャー企業の特徴として、残業時間削減の取り組みに力を入れていることが挙げられます。

したがって、残業時間の削減が利益向上に効果があると考えられます。そのために、主に作業の省略・時間の短縮に効果的と思われる改善案を提案します。

一つ目の案は…

いかがでしょうか。例2は本題に入るのが早い半面、なぜ残業の話が始まるのかが不明確で、他社を参考にするのも唐突に感じます。一方、例3は残業時間短縮が会社の利益と結びついていることが強調され、参加者がどこを重点的に聞けばよいのか、分かりやすくなります。

レジュメの結論に説得力を持たせる

レジュメとは要約や履歴書を示す言葉です。今度は上記の「残業時間削減のための改善案」プレゼン用のレジュメを考えてみます。

例4 標準的な会議レジュメ

(1)提案事項

①残業時間の削減

②業務の効率化

(2)検討事項

①定例会議の開催

②事務工程の見直し

③年間計画の策定

(3)その他

例5 三段論法を意識した会議レジュメ

(1)社内の現状と課題

・収益率の減少(前年度〇%減)

(2)同業他社との比較

・A社 収益推移 重点取り組み

・B社 …

(3)課題解決に有効と思われる取り組み

・働きやすい環境作り

・残業時間の削減

(4)提案事項

①定例会議の開催

②事務工程の見直し

いかがでしょうか。例4では提案が箇条書きで並んでおり、レジュメを見ただけでは、これから出される提案のどこが重要なのかが分かりません。

例5では、これから出される提案は、社内の課題を解決するためのものだということが、レジュメの段階で分かります。また、それらの提案は、現状の分析や調査に基づいたものであることも分かります。これらにより、提案に説得力が生まれます。

三段論法をもっと使いこなす応用系

三段論法は非常に便利なテクニックですが、取り扱いには注意も必要です。

なぜなら、三段論法には主語を入れ替えるなど様々な変化形がありますが、その全てが論理的に正しいわけでは無いからです。組み合わせは全部で256通りありますが、その中で、論理的に確実に正しいと言える組み合わせは、実は24通りしかありません。

三段論法の様な形をしているものの、よく考えると筋が通っていなかったり、結論が間違っているということもよくあります。曖昧な論理で人を意のままに操ろうとする論法は「詭弁術」とよばれ、古代ギリシャの時代から悩みの種とされていました。

ここでは「詭弁」を避けるための応用系を紹介します。

一見正しいようで誤っている三段論法

例6 一部に関わる前提から全体へ話を広げる場合

(大前提)上司「私は飲み会が好きである」

(小前提)「私は出世している」

(結 論)「故に飲み会が好きな人は出世をする」

一見正しいように思えますが、結論が間違っています(当てはまらない場合もある)。大前提、小前提は共に正しいことを言っています。しかし飲み会が好きな人「全て」が出世するとは、どこでも触れていません。

このように、一部の話から始め、全体を判断することを「飛躍」といい、結論を誤る危険があります。

例7 結論は正しいが前提が誤っている場合

(大前提)商品は売り物にならない。

(小前提)売り物にならないものは会社に必要だ。

(結 論)会社には商品が必要だ

結論は正しく、三段論法の形式は為しているものの、大前提と小前提が誤っています(比喩や皮肉としてはあり得るかもしれません)。論理の形や結論だけでなく、どういう前提から結論が導かれたのか、その道筋を見る必要があります。

説得の幅を広げる高度な三段論法

より高度な三段論法として複合系と呼ばれるものがあります。中でも「PならばQ」という「ならば」を使った論理は強力で、説得や応援など様々な場面で使われてきました。

三段論法の複合系

(大前提)PならばQである。またはRならばSである。

(小前提)PかRである。

(結 論)ゆえにQかSである。

例8 新企画を止める場合

(大前提)新企画が成功すると同期から妬まれるし、失敗したら上司の評価が下がる。

(小前提)企画は成功か失敗のどちらかだ。

(結 論)ゆえに同期から妬まれるか、上司の評価が下がるかだ。

どちらを選んでも悪い結果が出る=だったらやらない方が良いという論理でジレンマ(両刀論法)といいます。相手のチャレンジを止める論理として古代ギリシャから使われていました。

前提が正しいかどうかを見直すと、会社によっては次のように言い直すことができるかもしれません。

例9 新企画を勧める場合

(大前提)新企画が成功すると自信が付くし、失敗しても次に活かすことができる。

(小前提)企画は成功か失敗のどちらかだ。

(結 論)ゆえに自信か、良い経験のどちらかを得る。

どちらを選んでも良い結果が出る=だったらやった方が良い、という前向きな励ましになります。

プレゼンだけではない 三段論法の使用例2

三段論法が正しい場合、誤っている場合の両方を知ると、プレゼンだけではなく、意見の修正や調整にも使うことができるようになります。

例えば、会議中の発言や提案で違和感を覚えた際に、その主張を三段論法に直すことで、原因を特定できることがあります。

また、自分がこれからやろうとしている取り組みと目的を三段論法にすることで、やるべきことが明確になる場合があります。

このように、論理を使って仕事の方法を考えることは、「ロジカルシンキング」や「論理的思考」と呼ばれます。

さり気ない誘導で会議や交渉の調整役を

会議の発言を軌道修正する使い方として、下記の例を考えます。

例10 他社の事業を参考にする案

「2010台以降、インターネット通販大手会社の売り上げが大きく伸びている。わが社もそれを見習ってネット通販事業に参入してはどうか。今後売り上げが伸びるに違いない」

会議でこのような提案が出されました。この提案を検証するために、三段論法に整理してみましょう。

例11

(大前提)インターネット通販大手会社の売り上げが伸びている。

(小前提)わが社はインターネット通販事業に参入する。

(結 論)故に、わが社の売り上げも伸びる。

論理的な繋がりとして気になるのは、大前提の「インターネット通販大手会社」=小前提の「インターネット通販事業」という論理です。これは会社と事業を同一にみているため、その会社の売り上げ増の原因が、本当にネット通販だけなのかを検証する必要があります。

こうした場合は、「売り上げを確実に伸ばすために、その会社の事業を、より詳しく検討してはどうでしょうか」と発言すると、結論をより確かにするためのアシストができるでしょう。

ロジカルシンキングで思考を整理

今度は自分の行動を検証する例を考えます。

例えば、あなたは将来転職をする可能性を考え、英語を覚えたいと思いつきました。英語が転職に有利だという結論(仮説)を確かにするために、どのような前提が必要となるかを考えます。

例11 転職に英語は有用か

(大前提)転職を有利に進めるには〇〇だ。

(小前提)英語を覚えることは〇〇だ。

(結 論)英語を覚えることで転職を有利に進められる。

これまでとは逆に、結論から前提を考えます。例えば、次のような例が考えられます。

例12 転職に英語は有用か(2)

(大前提)転職を有利に進めるには「他の応募者との差別化」が必要だ。

(小前提)英語を覚えることは「他の応募者との差別化」につながる。

(結 論)英語を覚えることで転職を有利に進められる。

必要な前提条件は、「他の応募者との差別化」だと考えることができます。他にも「意欲をアピールする」など入れることができます。こうすることで、転職する上で英語を学ぶことの利点を整理することができます。

また、〇〇部分によっては「英語」を違う言葉にすることも可能です。「他の応募者との差別化」に役立つスキルとは何か?英語でなくても良いのではないか?このように考えることができます。

このように、様々なパターンを考えることで、自分がすべきことと目的を論理的に検証することができます。

「正しい」ことは「良い」こと?三段論法の注意

三段論法は議論の整理や筋道の明確化に非常に有効ですが、過信は禁物です。理由の一つは、これまで見てきた通り、論理が正しいからと言って、前提や結論が正しいとは限らないためです。結論や前提の一部ではなく、全体をみて正しさを判断しなければいけません。

もう一つの理由は、人は論理と感情を持つ生き物だということで、これは最も注意すべき点です。感情を無視して論理的な正しさのみを主張すると、かえって反感を生むことが、ままあります。

特にビジネスでは、論理的な説得によって「どのような仕事が可能になるか」、先を見なければなりません。

感情を無視した論理だけでは人は動かない

論理が反感を生む最も古い例には、ソクラテスの自殺があります。ソクラテスは自分の知らないことを知る「無知の知」を説き、ギリシャでは賢者と呼ばれ多数の弟子をとるようになりました。しかし、名声が高まるにつれ、彼に反感を持つ者を増やし、「若者を堕落させた罪」により裁判にかけられ、最後は自殺をすることになります。

現代ではSNSの炎上といった現象もあり、相手の感情や立場に配慮することが最も必要とされる時代といっても過言ではありません。

説得の先にどんな仕事があるか考える

ビジネスでは、相手を説得するために、論理に加え感情に訴えることも、時には必要です。

例えば、営業として新しいソフトウェアの導入を、ある会社に勧めるとします。しかし、その会社はいくら商品の説明をしても乗り気になってくれません。理由を聞いてみると、過去に同様のソフトウェアを購入した所、操作が難しく、すぐに放置されてしまったという失敗があることが分かりました。また、その会社の社内はPCに不慣れな社員が多いようです。

このような場合に、商品のメリットや導入することの経営的正しさを、いくら正確に説いたとしても、商品を買ってもらうことは難しいでしょう。むしろ、「そんなことくらい分かっている」と怒られる可能性すらあります。

ソフト導入の説得を一旦保留し、導入を躊躇う理由や、操作の不安といった顧客の事情をヒアリングしたうえで、場合によっては別のサポートや商品を勧めたほうが良い場合もあります。

ビジネスを、単なる商品の売り買いとしてではなく、今後に続く関係作りととらえ、今後の仕事にどのような影響があるかを考えることが重要です。

まとめ

三段論法はプレゼンや企画書の説得力を高めるだけでなく、業務の標準化や思考の整理にも役立ちます。しかし、論理的な正しさと、意味としての正しさは別であり、三段論法の形だけにこだわることは誤りの原因にもなります。

また、論理が正しいからといって、必ずしも人を説得できるとは限りません。むしろ正しいだけの論理は他人の反感を買うこともあるため、感情にも配慮する必要があります。

論理を使った説得の先にどのような仕事が生まれるかを考え、状況に応じて論理と感情を織り交ぜて使っていくことが、あなたのビジネスチャンスを広げることへとつながるでしょう。

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