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仕事は生きがいになる?人生をもっと豊かにする方法とは?

人生100歳時代と言われるようになり、年齢を積み重ねていくにつれ、生きがいを持って日々過ごすことが重要視されています。

特にこの数年は、厚生労働省などでも高齢者が生きがいを持って生活することを推奨する対策をしています。生きがいを持って働ける職場づくりを率先して行っている企業事例を紹介するサイトを公開していたり、福祉や老人クラブなどの社会活動の後押しもその一環です。

国や地方自治体ぐるみで推進していこうとする一方で、人生に生きがいを持っていますとは、なかなか言えないという人々は多いです。特にそれが、「会社」や「仕事」という環境でとなると、ますますそこに生きがいを見出せなくなっている、そんな人が増えているようです。

果たして、「仕事」に「生きがい」を見出すことは難しいのでしょうか?

「生きがい」を「仕事」にすることはできないのでしょうか?

もくじ

「生きがい」とは何かをあらためて考えてみる

ここ最近の傾向は減少していますが、戦後の日本の高度経済成長の流れから、仕事に生きがいを持っているという日本人は多くいました。労働年齢は若い世代が中心であり、働けば働くほど収入も増え、職位も上がっていくモデルです。サラリーマンは職場に働き甲斐や、人生の希望や、可能性を求めて、がむしゃらに働きました。それが美徳でもあった時代だったと思います。

その後、経済が安定し、ある程度のゆとりが持てるようになってくると、欧米の働き方と比較しても、日本は働き過ぎであると捉えられるようになってきました。

確かにヨーロッパの人々は、「生きがい」という言葉を「会社」や「仕事」に求めていません。家族であったり、友人であったり、趣味・レジャーであったり、あくまでもプライベートなものに生きがいを感じている人々が多くいます。そうした価値観は、今の日本にもだんだんとシフトしてきています。

「生きがい」とは何でしょう。この言葉を考えるとき、顕著な例として出されるのが、『夜と霧』の著作に代表されるオーストリアの心理学者であるヴィクトール・フランクルの強制収容所体験です。彼の過酷な収容所体験は、人生における生きがいの意味を考えるには、あまりにも重いです。

特に、クリスマスには家に帰れるという「生きる目的」を持った被収容者が、その希望が叶えられないと分かったときに精神が崩壊し死に向かう様は、生きる目的を見出せなくなった人間の絶望を如実に表しています。

どんな小さなことであれ、それが人生の目的に値すると本人が感じると、その目的に向かって人は生きるのです。

このことから、「生きがい」とは、「生きる目的」であり、「生きる希望」であると言い換えても良いでしょう。

では、これは、「仕事」という環境においても見出せるものなのでしょうか?

「仕事」と「生きがい」の関連性について考えてみる

年金シニアプラン総合研究機構という公益財団法人が2013年にまとめた、

『サラリーマンの生活と生きがいに関する研究 ~過去 20 年の変化を追って~』

という資料があります。この中で大変興味深いアンケート調査を実施しています。

2013年から過去20年を5回に分け、35歳から74歳までのサラリーマンに、仕事に対する生きがいの要素について質問しています。その累計回答件数は1万6,000件にも上り、この結果をまとめたものが本研究報告書になります。簡潔に整理してくれているのですが、概ね次のようなことがわかっています。

仕事に生きがいを感じる要素というものは、次のようなものである。

・仕事の内容に満足している

・職場での地位の高さに満足している

・人間関係や雰囲気が良好である

この3つの要素がある、あるいは高いと、生きがいを感じる、もしくは生きがいを持ちやすい、という傾向がある。

また、以下のような傾向もあります。

男性は高齢者になるほど、賃金の満足度は生きがいに対して影響を与えない

男性の働き盛りの年代は、責任があり、ある程度難しい仕事を与えるほど生きがいを感じて働く

ここで、いくつかの要素が抽出されていることに気づきます。

仕事に対する生きがいには、「仕事内容」、「地位」、「人間関係・雰囲気」、「賃金」、「責任・難しさ」というものが関連付けられるのです。

これらの要素について精査すると、さらに、「理念」、「上司」、「部下」、「同僚」、「評価に基づいた報酬」、「公正な評価」、「仲間意識」、「達成感」、「忍耐」、「創意工夫」、「顧客との関係」といった、いくつかの関連要素を抽出することができます。

これらの関連要素を含めた要素は、生きがいを感じるにあたって、無数に組み合わされ、取捨選択された上で、個々人にある価値観を形成していることが導き出されます。

「仕事」を通じて「生きがい」を見つけると人生は豊かになっていく

調査アンケートの結果と、それを分析した研究報告は、人は「地位」の高さや、「責任」ある仕事は生きがいに紐付くという結論を導き出しました。「地位」や「責任」は、職場において「自分が認められている」ということを表し、精神的、社会的な満足を得られている、と言えます。

さらに言うなら、この職場で「自分は必要とされている」、「自分はなくてはならない存在である」という、自己の存在理由を肯定し、高い価値で認めてもらえることに満足している、とも言えます。

つまり、人は他人に必要とされていることに生きがいを感じると言えるでしょう。そして、その結果、職場の「人間関係・雰囲気」は良好であることを望み、その場にいることが生きがいの一つとなる、ということでしょう。

この研究報告から5年後の現在までの、調査結果は明らかにされていません。恐らく少し違った傾向が出てくるかと思います。当時の若い世代が成長し、この調査の年齢層に加わってきているからです。しかし、まだ大局ではこの結果の傾向は残っているでしょう。

ここで、極めて重要な要素となるのが、良好な「人間関係・雰囲気」です。

つまり、職場の人間関係が豊かであること、雰囲気が素晴らしく居心地良くあることが、生きがいを感じるために必要で、そのようにするための活動こそが、生きがいにとって意味を持っていくことになります。

まとめ

人間関係や職場の雰囲気が良好であることが生きがいの一つなら、人は生きがいを持って職場や仕事を作り出すことができます。

「人間関係が良くて雰囲気の良い仕事こそ、生きがいを持てる環境」であり、「人間関係を良くし、職場の雰囲気を良好にするという活動そのものも、生きがいのある活動」となるのです。鶏か玉子かという表現のようですが、人は目的があれば生きがいを持てる生き物です。それは先のフランクル強制収容所体験でも明らかなことです。生きがいを持って始める活動が、いつしか生きがいを感じる職場、仕事へと変化します。

人は、好きな仕事に熱中できます。特に日本人はそのような気質に溢れています。

自分だけではなく、仲間を大切にする文化がまだまだ多くの組織やコミュニティで残っています。会社や職場ももちろんそんなコミュニティですし、そこでより良い場を作りたい、守りたい、職場を通じて人に幸せを与えたい、こうした思いが生きがいとなっていきます。仕事で人に幸福を与え、それとともに、自分も幸福感を感じることが生きがいへとつながるのです。

人生を豊かにするために、仕事に生きがいを見出すことはとても意義あることとなるのです。

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