せっかく新卒で入った会社なのに退職したい、入社当初の希望に満ちた思いと裏腹に現実を直面して挫折感を味わってしまったなど、辛い思いを経験したことのある方は多いのではないのでしょうか?もしくは今現在会社を辞めたいと思っている方もいらっしゃるかもしれません。世間では新卒で入った会社を辞めるのはもったいないという意見をよく耳にしますが、果たしてそうなのでしょうか?今回は新卒で退職することについて書いてみたいと思います。
もくじ
新卒で退職すべきでないのかを考えてみよう
世間一般で言われていることは、新卒で入った会社は退職するべきではない、という意見が多くみられると思います。その一つに在職期間が長い分、新卒採用の方が中途採用よりも出世しやすいという理由があります。会社側としても新卒と中途の社員を比較して、能力が同じであれば新卒採用の方をより上のポストに就けたいと思うのが新卒を採用した親心と言うものです。大学卒業から会社で教育を受け、ずっとその会社に貢献し続けていますので当然と言えば当然です。
新卒で入った会社を退職する時のデメリットとは何なのか?
逆に考えると、新卒の会社を一度辞めてしまうと、その次の会社では中途採用もしくは第二新卒の扱いとなりますので昇進に関しては不利になりますし、退職の理由次第では就労条件が悪化することも予想されます。就労期間が途切れるので退職金の額も下がってしまうなど一般的に風当たりは強くなります。他にも様々な理由から新卒で入った会社は辞めるべきではないということが一般的に言われていることです。
厚生労働省の発表している大学卒を対象にしたデータによると、新卒で入った会社を1年で辞める割合は10%程度で推移しています。2年目で辞める割合は10%弱で、3年目で辞める割合も10%程度です。社会情勢により異なりますが、3年で30%前後の方々が新卒で入社した会社を辞めていることになります。特に1年目で辞めるとなると10人に1人の割合ですので、同期の多くは会社に残っていることになります。このため、他社の人事があなたを見る目は厳しくなることも頭の中に入れておいてください。さらに、入社した会社をすぐに辞めてしまうと逃げ癖がついてしまい、再就職しても気に入らないことがあればすぐに辞めてしまうようになるかもしれません。
こうなると再就職スパイラルに陥り、どんどんと就労条件が悪化していき、後がないところまで追いつめられて初めて奮起するというケースもあり得ます。このようにならないために、少々のことは耐えるという我慢強さも必要です。
このような状況の方々は退職することを考えても仕方がない?
仕事では自分を守ることが大切ですが、守れなくなるとそれはうつ病などに繋がり体調を壊す原因となり得ます。こうなると、社会復帰できるようになるまで長い時間がかかる場合もありますので、絶対に回避したい状況です。例えば仕事がきつい、これは一見甘えかと思われますが、実際企業によっては膨大な残業時間を課す会社もあります。月に200時間以上残業すると、いくら若くても次第に肉体と精神両方に重く負担がのしかかります。ましてや搾り尽くしてから出がらしを捨てるように使えなくなった社員を切り捨てるなど言語道断です。社員は使い捨てではありませんので、ご自分の身体を第一に考えてください。
一方で、仕事を始めるとそれまで見えていなかった景色が見えだすと思います。そんな時にふと自分の本当にやりたかったことはこれだった、と思える瞬間が訪れるかもしれません。自分が心からやりたいと思える仕事に出会うことは幸せなことです。一生に一度の人生ですので、この場合はご自身の最優先し本当にやりたい仕事を求めて新しい世界へ船出しましょう。また、自分をより鍛えたい、例えば外資系などもっと厳しい実力主義の環境でバリバリ仕事をやりたいなど、自分を成長させるための前向きな理由でも転職しても良いかと思います。実際、他社の人事の方々もこのような前向きで野心のある方の話は聞いてみたいと思うはずです。
女性の方の場合は結婚される際に退職するかどうか悩むかもしれません。女性にとって結婚は人生における大切なイベントであり、その前後での生活はがらりと変化する場合もあります。家事や子育てに専念したいなど様々な理由があると思いますが、最近では会社によっては様々な制度を設けている場合がありますので、退職するしないは会社とよく話し合って決めるのがいいと思います。
このような場合は退職する前に一度誰かに相談してみませんか?
辞めたいと思っても今はまだ辞めないほうがいいケースがあります。特に思い付きで辞めた場合はその後苦労するケースが多いと感じます。なぜなら辞める前にしっかりと準備をしていないからです。辞めたいと思う場合は、社風が合わない、上司は同僚など人間関係がどうしても上手く行かず我慢ができない、いじめにあっているなどの場合はまず適切な相手に相談することをお勧めします。基本は上司ですが、上司には相談したくない場合はその上司、それでも駄目な場合は人事部に相談します。明らかに過労や残業代未支給などの法律違反は労働基準監督署や弁護士に相談してみるのがいいでしょう。
今の仕事がどうしても合わない場合やつまらないと感じる場合、他の仕事がやりたかったなどの場合には部署の移動を申請することもできます。もちろん、会社の大小によりけりですが、中規模以上の会社ですと検討してくれる場合があります。自分に合わない仕事をずっとし続けるよりも、自分に合った仕事をしてもらう方が会社にとってもメリットが得られます。もちろん、上司などとの人間関係で悩んでいる場合にもこの部署移動は問題解決の有効手段であると思います。せっかく新卒で入った会社を辞めるよりも、部署移動で解決する問題であればそれに越したことはありません。
どのような場合に仕事を辞めるべきではないのか?
個人により問題の捉え方は異なりますので、一般論としてお聞きいただきたいのですが、このような理由で辞めようと思っている方は少し思いとどまって考えてみた方がいいと思います。その代表例がミスをした、ミスが続くなど能力的な問題による場合です。個人差はありますが、ミスが続く場合でも同じことをやり続ければ次第にミスは減っていくものです。同期に比べても仕事の進捗が遅く、さらにミスをして上司に怒られて悩んでいるかもしれません。しかし、そこで諦めて退職して別の会社に行ったところでミスは続いてしまうのです。ミスを無くしたいのなら、また仕事が遅いのなら人一倍努力しましょう。厳しい方かもしれませんが、出来ないならできるように努力する、それが社会人です。
その他にも給料が上がらない場合も退職を考える理由となり得ます。給料のために働いているのでごもっともな理由ですが、入社1年目、2年目は上がらない場合があります。世の中が不況の時や会社の業績が悪化している時はボーナスが出ない場合もあります。また、これは本当に大切なことですが、給料の話はお金を稼げるようになってからするものです。お金を稼げない、また稼いでいないのになぜ給料が上がるのでしょうか?さらに新卒で入社した後に社内で教育してもらった際にもコストがかかっています。
これらを考えると、入社数年目で給料が劇的に上がるとは思わないほうがいいです。厳しい言い方をしてしまいますが、お金のことはまずは会社からも必要とされる一人前になってから考えましょう。
社会の荒波から身を守るためにはどうすればいいの?
新卒の方の多くは理解していないと感じますが、自分を守る術が身についていないです。この身を守る術を身に着けることでトラブルを回避し、人間関係をより円滑にしていくことが可能になります。社会に出ると自分の身は自分で守らなければなりません。学校のように先生が守ってくれるわけではありませんし、もう立派な社会人として巣立ちの時ですので、ご両親を頼るのも気が引けますね。では、自分自身で自分の身を守るにはどうすればいいのでしょうか?
新卒の方の多くは無防備で危うさを感じます。言い方をすれば無垢ですが、それは裏を返せば騙されやすく利用されやすいということです。小さなことでは上手く他人の失敗を擦り付けられたり、余計な仕事を言葉巧みに押し付けられたりする場合もあります。酷くなると職場のいじめにもつながってしまいます。このような経験を通して、数年経つと新人たちも次第に身を守る術を身に着けていっています。良い人でいることは人間的にも素晴らしいことですが、良い人のままでは社会を生き抜くには大変であると感じませんか?生き続けるために、そして大切なご自身を守るために多少の用心深さを身につけることも必要ですね。
ご自身の身を守るためには適切な相手に相談することが大切です
まず大切なことは、しっかりと相談することです。特に上司に相談ができなければその上司や人事、または大きな会社では相談窓口を持っている会社もあると思いますので、しかるべき場所に相談しましょう。そして、社会の仕組み、仕事の枠組みを知りましょう。自分の仕事の範囲、即ち責任の及ぶ範囲を知れば、仕事や失敗を押し付けられそうになった時にはおかしいと反論できます。度が過ぎるようであれば、しかるべき相手にしっかりと相談をしてください。同僚などに相談することはあまりお勧めしません。中には親身に話を聞いてくれる方もいらっしゃるのですが、職務で言うと同僚たちにはあなたの現状に対して責任は無いのです。ですので、あなたの現状に対してしっかりと責任を持てる職務の方に相談する必要があります。
また、突っ込みどころを作るような言動は極力避けてください。口は禍の元です。はいはい、と何でも安請け合いしたり、相手をいい気分にさせようと耳障りのいいことを言ったりしないようにしましょう。逆に言うべきところは曖昧にせずに強く言い、反対すべきところはきちんと反対の意を示しましょう。そして、悪口や文句も謹みましょう。周囲は結構聞き耳を立てているものです。このような突っ込みどころを作ってしまうとご自身の立場が悪くなりますので、職場で学生のノリで話すことは絶対に止めましょう。
退職する前に一息ついて少し考えてみましょう
最近耳にする機会が多くなったと感じますが、マルコム・グラッドウェル氏の著書の中で述べられている1万時間の法則という法則があります。これは経験則ですが、大体1万時間何かに取り組めばその道のプロフェッショナルになっている、という内容です。1万時間とは1日10時間、毎日3年間何かを続けるとプロフェッショナルになっているということです。これを今の仕事に当てはめて考えてみるとどうでしょうか?あなたの仕事では大体何年目からプロフェッショナルと呼べるようなスキルが身につきますか?どの仕事も大体3年以上はかかっていると推測します。
新卒で3年経たずに辞めると言うことは即ちプロフェッショナルにはなっておらず、中途半端な状態なのではないか?と言う疑問が出てきます。昔からよく一つの仕事を3年続けろ、と言いますが言い得て妙です。退職が頭の片隅にあっても、まだ続ける余力があるのであれば、3年はしっかりと続けてスキルを身に着けたいところです。3年経ってそれなりのスキルが身につくと、周りの目も変わり頼りにされだします。そうすると、責任ある仕事を任される様にもなり仕事が楽しくなる場合もありますよ。辞めるのはスキルを身に着けてからでも遅くはありません。
退職の際に必ず準備しておくべきことはこれ
退職する際には、自己都合退職と会社都合退職があります。これらは退職金や失業手当の支給にもかかわってきます。基本的にご自身から退職を願い出ると自己都合退職になり、退職金は満額出ずに失業手当も3か月のみです。さらに就業後1年未満ですと失業手当すら出ませんし、1年以上働いても失業保険の給付は給付制限が付き、退職直後ではなく3か月後からになります。さらに、住民税は前年の収入に基づいて決まりますので、働いていなくても前年度と同程度の額の住民税を払わなければなりません。この他にも通常の生活費に加えて健康保険や国民年金など会社を辞めても様々な出費があることを覚えておいてください。
実際、次の職がすぐに見つかるとは限りません。もし、あなたが1年経たずに新卒で入った会社を退職したのであれば、他社の人事はうちの会社に入ってもまた辞めるのではないか?と思っているかも知れません。そして不幸にも正社員の職が見つからなければ、割と良く募集がある派遣社員に応募することになってしまいます。これは政治の問題かもしれませんが、現在では一度派遣社員として働くと正社員としての復帰は難しいと言われています。しかし、これは現実なのでしっかりと受け止めて乗り越える必要があります。退職することは簡単かもしれませんが、退職の後に直面するお金の問題、そして再就職の問題は非常に大変なのです。従って、退職の際には再就職先をしっかりと見つけておくことを強くお勧めします。
退職後の時間が空いたときにやっておきたいこと
退職する場合は退職願を書き、上司へと渡します。基本的に退職の意思を伝えてから14日後には退職できるのですが、会社によっては退職の何か月以上前に退職の意思を伝えるなど、社則で明記されている場合があります。この場合はトラブルを避けるためにも社則に従っておいた方がいいでしょう。そして晴れて退職した後には少し時間ができるかもしれません。その時間に是非ともやっておきたいことがあります。それは自分を見つめなおすことです。
一体なぜ辞めてしまったのか、何がいけなかったのか、どうすれば辞めずに済んだのか、どこを改善しなければならないのか、など様々な分析が可能かと思います。紙に書き出してもいいでしょう。これらの事柄を改善しないと次の会社へ行っても同じことを繰り返す恐れがありますので、次の仕事のための課題だと思ってください。辞めるというのはご自身の過ちとも考えられます。すなわち、その会社を選んだのはあなたであり、人間関係が上手く行かなかったのもあなたに一因があるのです。次の会社に行ったときにこの失敗を繰り返さないためにも、自分自身を徹底して見つめなおして、この退職という機会を成長のチャンスとして是非とも生かして下さい。
まとめ
新卒で入った会社を辞める時はかなり考えた上での決断であると思います。もちろん、退職が絶対悪という訳ではありません。社風など個人との相性もありますので、長く勤める会社であればよりご自分に合った会社の方がいいですね。ただし、辞めた後で困りごとが出てくる場合がありますので退職の前にはしっかりと退職に向けた準備をしておいてください。一方で、社員の教育には多大なコストがかかりますので、新卒で会社に入るということはその会社にとって非常に重要な人材ということで期待されている存在です。そして、そのあなたを選んで仕事ができるように教育する機会をくれたのが今の会社であり、その会社を辞めるのだ、ということを考えつつ読んで頂けましたら幸いです。