キャリアプラン

迫りくる働き方の多様化と新しい社会。今から考えておきたいキャリアとは

現在、政府が主導する「働き方改革」。その中でも話題を呼んでいるのが「兼業・副業」です。一億総活躍を掲げる政府は兼業・副業と国民がより経済活動を活発に行えるよう主導しています。また、女性の働き方の改革も急がれています。男女ともに育児をしながらも働き続けられるような仕組みづくりは超高齢化社会に突入する日本にとっては早急の課題だからです。さて、日本は今バブル期以来の人手不足なのをご存知でしたか?とくに中小企業は若手人材の確保に頭を悩ませています。そんな中、今日本で起こっている「働き方の多様化」についてみていきましょう。

もくじ

「終身雇用制度」は終わりを迎え「人生100年時代」をどう生きるかの戦略が必要

今の時代は「人生100年時代」と言われています。これはあまり知られていない話ですが、現在の定年退職の年齢60歳というのは、定年退職年齢が決められた当時の日本人男性の平均寿命なのです。つまり終身雇用とは文字どおり死ぬまで一つの会社で働くという制度だったのですね。

さて、現在日本人の平均寿命は80歳を超えています。そして日本の企業は海外の企業との激しい技術競争、価格競争にさらされています。誤解を恐れずにいってしまえば、どんな大きな会社でもいつ経営が傾くかはわからないのです。あなたが一生養ってもらえる会社はまずない、と考えたほうがよいでしょう。

仮に100歳まで生きるとして、60歳で定年退職をしても残り40年はまだお金を稼いで生活していく必要があります。このときに会社の退職金や年金から生活費が賄えるかは現段階ではわかりません。少しずつ一つの会社で一生働くという選択肢が難しいものになっているのがわかりますね。また、最近になって、シェアリングエコノミーやAI、ブロックチェーンなど既存の業界を脅かすテクノロジーが現れ始めました。「この業界にいれば安全」、「大企業にいれば安泰」という時代はとうに過ぎているのです。

実際、メガバンクでは数千人規模の人員削減がすでに発表されています。AIを導入することで経費を大幅に削減することが可能だからです。海外ではすでにAIにより大量に仕事を失う人が増えると予測し、国民に一律に現金を配布するベーシックインカムという制度の導入実験を始めている国もあるほどです。

その他にもAirbnbなどの民泊サイトは既存のホテルや旅館と真っ向から対抗する新しいビジネスモデルで、政府も新しい法律の整備に追われています。こうした技術革新や日本企業の競争力が少しずつ落ちてきたことが背景にあるのか、少しずつ若い世代のあいだで「働くこと」への価値観が変わってきました。

最近、「ワークライフバランス」という言葉もよく耳にするようになりましたが、ある意味では「生きること」への価値観そのものが大きく変わってきたのではないでしょうか

今後の働き方は副業ではなく「複業」が一般的になる

以前はメインの収入源があり、サイドビジネスという形でいくらかの収入を得る仕事を副業と呼んでいましたが、状況が変わりつつあります。最近ではいくつかの職業をかけもちするという意味で複数の職業=複業という表現も使われるようになりました。これは今の時代において重要なキーワードです。(副業と複業に明確な語義の違いはありませんが、ここでは「複業」表記で統一させていただきます。)では、なぜ複業という言葉がキーワードになるのでしょうか。下記のような理由が考えられます。

AIによる失業リスクや企業の競争激化に伴う倒産リスクが働き方を変える

前章で述べた通り、AIを始めとするテクノロジーは圧倒的なスピードで発展しています。例えばタクシー運転手の場合、自動運転技術が発達し人間のドライバーが不要になれば仕事がなくなってしまうことも考えられます。そんな時に仕事がタクシードライバーだけとなると今後の生計を立てることが難しくなります。そんな時にもし他の収入源があればそれは大きなリスクヘッジになります。

AIにはディープラーニングという機能があり、日々自動的に賢くなっていっています。その可能性は未知数で人々の暮らしを便利にすると期待されている反面、実に多くの職種の人を失業リスクにさらすものでもあります。Googleの翻訳サービスが近年、飛躍的に向上しましたが、これはGoogle翻訳にAIが搭載されたからです。このまま発展が続けば翻訳者や通訳者の仕事の一部を奪う可能性は大きいです。

AIはホワイトカラーと呼ばれるナレッジワーカー(知識労働者)の仕事も奪うリスクがあるのです。かの証券会社最大手のゴールドマンサックスでは大規模なAIリストラがありました。2000年には600人いたトレーダーが今ではたったの2人になってしまったのです。大企業であっても安心はできません。ひとたび合併や買収があれば大きな変化は避けられません。そうした中で、一つの職業だけでなくいくつかの職業で収入を確保した方が安心だという考え方が徐々にではありますが、広がりつつあるのですね。

最新のテクノロジーが働き方の多様化を実現した

誰しも複業を考えられるようになった背景として、シェアリングエコノミーなどの技術革新があります。またメルカリなどのいわゆるC to Cビジネスがスマホでお手軽にできるようになったのも複業の後押しの一因といえるでしょう。ICTの革新が人々の多様な働き方を促進したのです。例えばUBERというライドシェアサービスでは利用客は事前に登録したクレジットカードから決済されます。またアプリの地図上でUBERに登録している車が表示されるため、お手軽に利用ができるうえ、金銭トラブルなどの心配もありません。こうしたビジネスはスマホの普及なくしてありえませんでした。

ひと昔前、複業はおろか転職すら大変な時代でした。ハローワークなど仕事を紹介してくれるところにわざわざ出向き、面接をして…というプロセスはどこかに勤めながらではとても大変な作業でしたが、これもスマホのおかげで電車に乗っている間も転職活動ができるようになりました。最近の若者がすぐに転職をするわけではなく、単に転職が簡単にしやすい環境にあるということがいえますね。

働き方の多様化を認める企業が日本でも増えてきた。

そうしたなか、企業でも複業を認める企業が増えてきました。中にはエンファクトリー社のように「専業禁止!!」という会社もあるほどです。それでは、日本の企業で複業を認めている企業の代表例をあげてみました。

<社員の複業を認めている企業の一例>

  • リクルート
  • LINE
  • エンファクトリー
  • サイバーエージェント
  • スマートニュース
  • サイボウズ
  • SONY
  • HP(ヒューレット・パッカード)
  • パナソニック

など

ベンチャー企業から大企業まで、実に多くの企業が複業を容認していることがわかりますね。会社によっては複業をすることでパラレルキャリア(本業とかけもちで平行して仕事をすること)を育むことを推奨しているところもあります。それでは、決して社員の複業にネガティブではない理由はなんなのでしょうか?

多様化する働き方を解説! 複業のメリット/デメリットとは?

企業にとって人を雇うということは毎月の給与の支払い以上に経費がかさむものです。本心としては、「自分の会社のためだけに働いて欲しい!」というのが本音ではないのでしょうか?しかし、実は複業をすることで社員が自分で稼ぐ力を身につけたり、人脈を広げたり、新しいスキルを複業で学び、本業に活かしてもらったり、さまざまなメリットがあると考える企業が多いそうです。確かに複業としてライター業をしている社員がいれば、本業のほうでも広報などで戦力になる可能性が高くなりますよね。何より、何があるかわからない時代、会社におんぶに抱っこよりも自分の手で稼げる社員のほうが、会社にとって重宝されはじめているのではないでしょうか?

もちろん、この複業の解禁には課題も残っています。例えば複業を認める企業のほとんどがIT関連の企業ですが、PC一つで作業ができるIT関連業ではもともと在宅ワークなどが他業界より早く進んでいます。業種によってはなかなか複業を解禁しづらい業種があるのも事実です。また単純に「本業がおろそかになる。」という理由で禁止にしている企業もあります。まだまだ企業のトップによって見解が大きく異なるようです。

ほかにも勤務時間の調整やノウハウの流出など解決しなければいけない問題はあるにせよ、全体的には複業を解禁する方向に進んでいるといえます。

複業ってどうやって始めるの? 知っておきたいクラウドソーシングとは…?

複業が日本でも一般化しつつあるというのがおわかりいただけたかと思います。しかしそもそも複業はどのように始めるのでしょうか?

例えば、複業でレストランを開業したり、NPO法人で働いたり、色々な複業をしている人がいますが、なんだかハードルが高そうにみえますよね。また会社以外の時間を飲食店などのアルバイトに費やすのも体力的に難しいでしょう。若い時にできたとしても年齢を重ねるごとにしんどくなっていくはずです。また地方で暮らしている人にとっては仕事の数が都会に比べ少ないのでそもそも仕事のチャンスが限られてきてしまいます。

そこで、最も多くの人が複業を始めやすいのはクラウドソーシングサービスではないでしょうか。クラウドワークスやランサーズなど、無料で登録をして在宅でもできる仕事が探せるサービスです。これであれば距離に関係なく在宅で作業ができますし、複業だけでなくとも育児中などの理由で外に出られない方も仕事をすることができます。またスキルによって受けられる案件があるため、少しずつスキルアップしていく過程で会社では学べない多くのことを学べます。

ココナラのように自分のサービスをフリマのように売るサービスもあります。昔に比べ自分のちょっとした特技や趣味が収入源にすることが可能になったのです。

働き方が多様化するなか日本は今後フリーランスが増える?

米国の世界最大規模のクラウドソーシングサイト、Upworkは2016年度のアメリカのフリーランス総数は35%以上と推計しました。一方で、日本では複業がようやく認知されてきた程度で、会社と兼業で仕事を持っている人はフリーランサー約1,000万人のうちの半分ほどです。アメリカでは近いうちには労働人口の半分はフリーランスになるのではないかという予測もあります。フリーランスは世界的にみても増えているといえるでしょう。

日本政府は今後、少子高齢化が進む中で、国の経済力強化には個人の起業が欠かせないとしています。フリーランスは一つの会社や組織のみに属さず、主に仕事ごとに契約をとって収入を得ている人なので、仕事の決定権は全て自分にあります。その点では起業をして会社経営するのに少し近いといえます。

昨年2017年3月にはフリーランスも失業保険の受給が可能になりました。国は現在、皆がより働き方を多様化させられるように法改革を進めています。また深刻な人手不足に悩む企業は、仕事をアウトソーシング(外注)することになるので、今後フリーランスの需要はさらに増えていくのではないかと予想されています。

会社員だって多様な働き方ができる! その方法とは…?

とはいえ、企業で働くことのメリットももちろんたくさんあります。やはり、規模の大きなプロジェクトは企業でないとできませんし、チームで動くやりがいもあります。そんななか、多様化するライフスタイルに対応すべく、企業もさまざまな働き方を取り入れています。

代表的な例がリモートワークです。これは会社に属しながら、在宅で仕事をするなど場所の制約を受けない働き方です。子どものいる人や通勤に時間のかかる人にとってはリモートワークのおかげで仕事を諦めなくてすむことから、いま注目されている働き方でもあります。企業にとっても幅広い人材を集めやすいことから積極的にリモートワークを導入するところが増えてきました。日本であればリクルートなどが上司の許可制でカフェやコワーキングスペースなど好きなところで働いてもよいという制度を始めています。

そして、このリモートワークは社会的にも大きなメリットがあることがわかってきました。PCメーカーのDELL(デル)はリモートワークを導入することで通勤ラッシュの緩和やガソリンの節約などの大きなメリットがあることを証明しました。リモートワークのほかにもフレックス制といって、コアタイム(皆がオフィスにいる時間)以外の勤務時間を従業員が決めるという制度も導入企業が増えてきています。

ちなみにAmazonではフルフレックス制を導入しており、勤務時間は社員の裁量に任せられています。リモートワークやフレックスなどの新しい働き方は社員のライフデザインを容易にする反面で、結果至上主義になりがちで、勤怠管理が難しいなどの課題も抱えています。今後、日本でも注意深くではありながらも導入が進んでいくのではないでしょうか?

まとめ

今回は多様化する働き方ということで、色々なケースを紹介してきました。時代が激変するなか、かつてのような「一つの会社に骨を埋める」覚悟で働く人は少なくなってきたのではないでしょうか。それは一つの会社からの給与で何十年も生活することが難しくなってきた、というのが一番の理由ではないでしょうか。また企業にとっても、人を雇うことの必要性を改めて考えはじめています。また業界によっても働き方の多様化のスピードは異なるので自分が属する業界の動向を注意深く観察するようにしましょう。画一的なキャリアではなく、自分の意思で人生をデザインする(できる)時代はすぐそこまで来ているのです。

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