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日本と海外は仕事の価値観がどう違う?これから目指すべき方向とは?

インターネットテクノロジーの発展により、私達は一昔前に比べ、グローバルな情報に簡単に触れることができるようになりました。グローバルな情報の多くは英語ベースであるため、読み解くにはある程度の英語力が必要となりますが、海外在住の日本人が発信しているものや、英語で記載されている情報の翻訳記事に事欠くことはないでしょう。

それにより世界が身近になり、私達の暮らしもグローバルに平準化されていっているように感じます。日本を訪れる観光客も増え、2020年には国内でオリンピックも開催されるため、その流れはより加速することでしょう。それを見越し、国や自治体、及び企業ではダイバーシティ(多様性)を意識した取り組みが色々と行われています。

それ自体は大変好ましいことなのですが、逆に様々な問題点が炙り出されてもいるようです。特に大きな問題とされているのは、労働環境や仕事に対する価値観の変化です。取得したグローバルな情報と私達の身近で接している現実との間の差異が大きく、今までの仕事に対する価値観は一体なんだったのかと疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。

もくじ

日本における世代間の仕事に対する価値観の違い、そして海外との違いは?

従来より日本では、労働というものは崇高なものであり、課せられた使命は身命を投げ打ってでも達成すべきという風潮が一般的でした。古来、武士の世界では御恩と奉公という制度が用いられており、武士は仕える主君のため時には命を差し出してでも奉公し、その御恩として報酬や地位を得ることができていました。これは仕事における基本的な考え方であり、提供したリソースに対してリターンを得るという、非常に合理的かつベーシックなものであったように思います。

ですが、「時には身命を投げ打って奉公する」ことが一人歩きして美徳となり、いつの間にか御恩があまり期待できなくとも奉公することそのものが素晴らしいという風に変化していったのではないでしょうか。

日本はどちらかというと個人主義より全体主義という価値観が主流

そのような価値観の元で、日本では身命を懸けた労働が長年美徳とされてきました。主君に仕えるという部分が、会社に仕えるという形に変貌し、会社の業績を上げることは、自分が幸せな人生を生きることよりも優先されるべきであるという風潮がありました。だからこそ20世紀後半における高度経済成長を成し遂げることができたのかもしれませんし、先進国の仲間入りをすることができたのかもしれません。

そのような価値観は、本来私達が誇るべきものでしょうし、ベースとしてはこれからも受け継いでいくものであるといえるかもしれません。個人主義ではなく全体主義による治安の良さや製品やサービスの品質の高さ、食事の美味しさ等は世界屈指のものでしょうし、実際に他国でも日本製品を愛用している方や、日本食に舌鼓を打っている方は多いようです。

ですが、反面考えなければならないことも多々あるでしょう。上述したような仕事の価値観というのは、上に立っている人間が優秀であり、部下にしっかりと御恩をリターンしてくれることが前提条件となっています。そうでない場合はただの奴隷契約に近くなってしまうので、それが過剰労働問題やブラック企業問題、各種ハラスメントや過労死といった形で顕現しているのではないでしょうか。

「karoshi」という言葉が持つインパクト。仕事に対する価値観は海外と日本では全然違う

過労死という言葉は、海外ではそのまま「karoshi」という固有名詞で紹介されています。あくまでも推測ですが、「death by overworking」等と普通に紹介するより、インパクトと分かりやすさ重視で「karoshi」になったのではないでしょうか。「sushi」に関しても寿司という言葉がそのまま使用されているように、恐らく日本文化独自のものは(あちらの一般常識的に)理解が難しいため、言葉をそのまま使用しているように感じられます。

そして、何故「karoshi」にインパクトがあったのかというと、海外では仕事に従事して死に至るという価値観は想像ができないからではないでしょうか。特にキリスト教をベースにした欧米諸国では、労働は美徳ではなく罪の対価であり、できる限り楽に効率的に処理するにこしたことはないという考え方が主流であるように感じられます。

また、欧米諸国はどちらかというと全体主義ではなく個人主義であり、会社や社会よりも自分の幸福を優先する傾向があります。その弊害として、時には痛ましいような事件も起こったりはしますが、人と人との間に垣根がなく、良くも悪くも他人にはそこまでは興味を持たないという文化が形成されているようです。

スペシャリストを養成する海外、ゼネラリストを養成する日本

欧米諸国と日本での労働に対する価値観の違いはそれだけではありません。基本的に欧米では仕事は自身のキャリア形成に基いて行うものですので、一つの職種のスペシャリストを目指そうとします。対して、日本では、特に正社員は包括的な業務を行うことが多く、自分の専門外の仕事でも場合によっては行わなければならないケースもあるでしょう。

前者は自分の得意分野のみを追求でき、余計な業務を振られても「それは私の仕事ではない」と突っぱねることができます。ですが、その反面、自分の専門分野が社会から必要とされなくなった場合は強制的に方向転換を迫られるというリスクが生じます。

後者に関しては、汎用的なスキルも専門的なスキルも同時に習得することができ、いざという時の潰しがきくと言えるかもしれません。その反面、専門分野におけるスキルを磨くことができないため、グローバルな分野でスペシャリストとして活躍することは難しいと言えそうです。

これらの違いは、どちらが正しい、どちらが優れているといった話ではありませんが、互いに良い面は見習い、悪い面は改善していくといった姿勢が必要でしょう。特に、日本の労働分野はなかなかグローバル基準に近づくことができず、国内の少子化傾向も含め、将来的に深刻な労働人口不足になることが懸念されています。現在でも既に人手不足の問題は発生していますので、早急に手を打つ必要があるのではないでしょうか。

現代は仕事の価値観が揺れ動いている。そのギャップに悩む時は?

このように、現在日本は従来の基準と世界的基準の間で揺れ動いている真っ最中であるといえるでしょう。それは仕事面に限らず、他の分野でも同様です。日本は島国ということもあり、これまではあまり他国の影響を受けず、独自の文化を築いてきました。それは時にガラパゴスと揶揄されることもありますが、逆にオリジナリティの強い、希少な存在であるともいえるでしょう。

ですが、こと労働問題に関しては、人材の奪い合いがグローバル圏に及びつつあること、そして国内が少子化傾向にあることから、これまでの価値観を変革せざるを得ない状況にあるように思います。そして、そのようなせめぎ合いの元で、仕事に対する価値観が世代間や個人間、そして会社間によっても大きく異なってきているようです。

この流れが収束するまでにはまだ時間を要するかと思いますので、自分の持つ仕事観と周囲のそれが異なり、そのギャップに悩んでしまうこともあるでしょう。そうなった場合の対処法をいくつか考えてみたいと思います。

相手の価値観を尊重し、自分の価値観も尊重してもらう

そもそも、仕事に限らず個々人で考え方や価値観の差異があるのは当然のことでしょう。皆が皆一様な価値観を有していたら、産業の発展も社会の発展も望むことはできません。多様性があるからこそ、私達は相互理解に努めることができ、人間としての成長や視野を広げることにも繋がります。

ですので、自分の価値観は自分の価値観として大切にし、同様に相手の価値観も相手の価値観として尊重するよう努めることが大事です。自分の考えと違うからといって何でもかんでも非難していては視野が狭まり、いざという時に変化に弱い人間になってしまいます。自分が何もかも正しいということはありえませんし、その考えは身を滅ぼす元になりますので、できるだけ色々な価値観に触れ、良いところはどんどん吸収するといった姿勢を心掛けたいものです。

ただ、相手の価値観を尊重するというのは相手に従うという意味ではありませんので、そこは混同しないように気をつけましょう。

周囲との価値観のギャップに悩む場合は、人間関係を断捨離しよう

とはいえ、価値観の異なる相手と始終共にいることで疲弊してしまうこともまた事実です。特に自分の価値観を絶対的な正義を信じて押し付けてくる人は大変に厄介であり、逐一それに応対していたら身が持ちません。そういった場合、思い切って人間関係を断捨離してしまうというのも一つの手です。

断捨離というと少々言葉が悪いかもしれませんが、現代では人間には様々な自由が与えられていますので、誰と付き合い、誰と付き合わないかを選ぶ権利があります。仕事関係の人脈をばっさりと切ってしまうことは難しいかもしれませんが、少なくともプライベートであればある程度コントロールがきく部分もあるかと思います。ですので、一緒にいて疲れてしまう人とは距離をおき、改めて人間関係を構築し直すというのも良いでしょう。

ですが、コントロール可能だからといって自分の価値観と同じような人ばかりと付き合ってしまうのは避けた方が良いかもしれません。単一の価値観の中で生活する弊害として、視野が狭まってしまう恐れがありますので、押し付けがましい人でさえなければ、異なる価値観や文化圏の人とは積極的に交流することをお薦めします。

まとめ

グローバルな労働環境においては、価値観や待遇、ワークスタイルを始め、従来では考えられなかったような様々な選択肢が増えてきています。地域や経済圏によってはベーシックインカムの実験もスタートしており、うまくいけば働かないで生活することも可能になるでしょう。そこまではいかなくとも、リモートワークやノマドというワークスタイルによって、場所を固定せず働くということも可能になってきています。

現在はそうした新しい価値観と今までの価値観が様々な場所でぶつかり合っていますので、時にはそのギャップに悩んでしまうこともあるでしょう。正直なところ、価値観が一様であれば選択肢もなく、考える必要もないので逆に楽という部分もあるのかもしれません。ですが、選択肢が増えたというのは、より自分の望む人生を送ることができるようになったとポジティブに捉えることもできるでしょう。

こうした新しい価値観や概念がどんどん入ってきている時代は、なるべく視野を固定化せず、柔軟な思考をもって色々な選択肢を模索するという姿勢が重要であると言えそうです。今後社会がどのような方向に進むかは分かりませんが、願わくば多くの人が仕事を通じて幸せになる、そんな世の中になってほしいと思います。

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