ビジネスで注目されている「数学力」。これはどんなスキルなのでしょうか?
ビジネスにおいて、データとして示される数字を、論理的に分析していくことは重要です。「数学は苦手だから…」と言って避けて通れるようなことではありません。
論理的な思考が求められるビジネスの世界では、この数字を読み取る「数学的センス」が求められ、それを使ってビジネスを進めていくのです。
ここでは、なぜ、数学力が求められるのか? 数学力とは具体的にどんな力か? そして、その数学力はどのように身につけるのか? ということを紹介していきます。
もくじ
なぜ今、ビジネスで数学的思考能力が求められるのか
ビジネスでは、ずばり、数学力が問われます。その理由は、数学的に考える能力がビジネスにおける問題解決につながり、それが多くの場面で使われるからです。
自分はデータの処理を直接担当しないから…と思っている人もいるでしょう。けれども、実は、ビジネスにおける考え方の根本的なところで数学的な要素が求められるのです。
数学力がある人、そうでない人。その違いが、今後仕事をしていく上で、さまざまな場面で能力に差がでてしまうかもしれません。
数字を読み取る「数学的センス」が求められる
まずはビジネスで求められるのが、具体的にどんな数学力なのかを知っておきましょう。
ビジネスで使う数学力は、難解な数学の問題をスラスラ解くのとは違います。簡単に言えば、データを見て、そこにある数値から状況を把握し、それらを使って今後の予測を立てたりすることができる「数学的センス」です。
データにあるのはあくまでも数字。それらを並べ替えて整理したり、分析したり、そこから現状を読み取ったりすることで情報になるのです。
こういった数字に対するセンスがなければ、ビジネスにおいては、第一線から外されてしまう可能性もあるくらいです。
ですから、「数学は苦手だから…」という人こそ、数字のもつ意味は大きいことを認識し、ビジネスを成功に結び付けるためにも、数学力を意識するといいでしょう。
物事の判断を論理的に考える力となる
ビジネスにおいて、論理的思考で物事を処理したり判断したりする、その重要性はご存知の通りです。数学力はその論理的思考を支える、基礎的な力となるのです。
提案書や報告書などビジネスにおける文書は、論拠があって書き進められているものです。その論拠のもとになる多く情報は、データで示された数字などを使って出されたものでしょう。
感覚的にこうなります…という主観的な考え方は、ビジネスでは求められていませんし、通用しません。
ビジネスで求められるのは、データや数字をもとに論理的に考えて得られた情報で、そこから生み出された意見や提案です。数学的に考えるということは、論理的に考えることのベースになっているのです。
ビジネスで求められる数学力とは?
それでは、ビジネスにおける数学力は、具体的にどんなことなのでしょうか?
「数学なんて今さら…」「難しいことはできない…」とあきらめてしまうことはありません。ビジネスで求められる数学力は、実にシンプルです。大まかに言えば、数字の持つ意味を考えること、そして、数字とそこから導かれる情報を自分の意見や考えに盛り込むことです。そしてもう一つ、概算力です。
まずは、それらがどのようなことなのか、数学力の中身を見てみましょう。
状況を把握する力、論理的に分析する力、判断力
数字によって導かれる結論や判断を総合的に表すのが数学力です。
数学力の基本となるのは、まず、直面する問題や課題について、データとそこにある数字やその傾向を見て「状況を把握する力」でしょう。データを並べただけでは「把握」していません。データから数字のもつ意味を読み取っていきます。
続いて、読み取ったデータから、現状を「論理的に分析する力」でもあります。論理的思考で状況を分析していくのですが、ここでも先に述べたように、数学力をベースにして論理を展開していきます。
そして、ビジネスでは、こうした情報や論拠をもとに状況を「判断していく力」も必要です。これも数学力があってできること。分析した数値や状況から、今後をどう予測するのかは、数学的センスが問われるところでもあります。
問題提起をシンプルに行い、先読みできる力
個々に求められる能力もありますが、概念として捉えたい数学力は、ビジネスで直面する問題をシンプルに説明できる力。そして、事業やプロジェクトなどの先を読むことができる力です。
ビジネスにおいて、問題点が分かれば、それを解決していくものですが、ここで求められる数学力は、潜在する問題をデータなどから見つけ出し、それを社内や社外の人にシンプルな形で問題提起できる能力です。複雑であれば、分かりにくいもの。誰もが分かる形で説明できることも、数学力のスキルでしょう。
また、こうしたデータを読み解く力があれば、それを使って今後の予測をすることができます。ビジネスでは、多くの場面で先読みできる力も求められています。これも数学力がもとになっているスキルです。
ビジネスにおける数学力の身につけ方
ビジネスシーンで大いに求められる数学力。「もともと、数学は得意だ」という人はいいですが、「数学が苦手だ…」という人は、一体、どうしたらこの数学力を身につけられるのでしょうか?
それにはまず、普段から数字に慣れておくことです。そして、割り算を素早くできるようになって、割合などの概算が頭の中で素早くできるようにしておくことです。
日頃から数字を見て概算したり、数字の持つ意味を考えたりしてトレーニングをしておくことも必要でしょう。
もしも、苦手意識があると自覚しているなら、まずは、自分が関わる業界の基本データを見ておくことです。
日頃から身近なデータで数字の意味を考える
数学力を日常で鍛えておきたいとしたら、まずは、自分が関わる身近なビジネスの数値を把握し、その変化を読み取っておくことです。
この数値は、環境が変わっても変化しない…、あの数値は、エリアや季節によって変わってくる…など、データを日々観察していれば、自ずと、どういった要因でデータが変化するのかが少しずつ分かってきます。
すると、新たにデータに基づいた資料を作成するように指示された場合でも、数字の変化をどう理解したらいいのかが、感覚的に身についてきます。
数字の変化には何らかの理由があるものです。それを探していく能力をつけていくのです。
ビジネスにおいては、こうした潜在する要因などを見抜く能力も求められているのです。
ミスを防ぐために概算力をトレーニング
ビジネスにおける数学力で求められるのは、計算のスピードではありません。重要なのは、論理的な考えに基づく計算式を作り出す力でしょう。
また、現状を判断するには、ざっくりとした概算による数値がいります。それらは、例えば、会議で提案されたデータや、営業や打ち合わせの場で出てくる数値についてです。
概算で言うならば、四則演算の中でも割り算でしょう。以前の測定値と現在の測定値がどのくらいの変化をしたか。それが資料としてある時に、スピーディに割り算をして、それぞれに占める割合がどのくらいかを頭の中でもざっくりと計算できると、その後、データをどのように使っていけるかという推測もできます。
また、概算する力があれば、万が一、作成した資料に示されたデータに間違いがあるかないかが瞬時に分かります。企画書や提案書では、入力ミスによる数値の間違いも多々あります。こうしたミスを防ぐことができるのも、概算できる数学力でしょう。
因果関係を見極める感覚を磨いておく
ビジネスにおいては、何が原因でこの結果が出ている…といった、因果関係について探っていくことも多いものです。目の前にある資料やデータから、きちんとした因果関係を結びつける力、因果関係を正しく見つけ出す力も数学力です。
簡単に言えば、算数の問題と同様に、どの数値を式のどの部分に当てはめていけばいいのかが分かることです。つまり、結果とその要因がデータとして出されていて、どの要因によってこの結果が出ているかというのを探すのです。
この時、結果と要因を入れ違えてしまうと、その後にどんな分析を重ねても、結論に結び付きません。データを見て、結果と要因、その因果関係を日頃から割り出す感覚を磨いておくといいでしょう。すでにある、ビジネスの実例やニュースなどから、どんな要因からどんな結果がもたらされているのか。正しい事例をより多く知ることも、判断の基準になりそうです。
まとめ
ビジネスにおける数学力。これについて、なぜ数学力が求められるのか、数学力とはいったい何か、そして、数学力を身につける方法について紹介してきました。
数学力とは、目の前にあるデータを読み取り、そこある数字を使って、状況を説明することができる力です。つまり、データを情報へと進化させる能力です。
「なんとなく…」「これまでの経験からすると…」といった、イメージや感覚などからしか状況を説明できないと、ビジネスにおいては、説明不足となり、厳しい目で見られます。
ビジネスで求められているのは、論理的に考えられた説明や意見です。その論理的思考のもとをつくるのが数学力です。これまで意識していなかった人は、この機会にぜひ、数学的センスを身につけて、数学力を味方につけていってください。