近ごろ、メンター制度を採り入れて新人育成を行っている企業が増えています。
新人のサポートを行う人のことをメンター、サポートを受ける側の人のことをメンティと呼びます。
メンターはメンティが、悩んでいたら助言したり、前に進むためのサポートをしたりするのが役割です。
メンティが社会人として活躍していくための大事なサポート役は、誰にでも任せられることではありません。もし、上司からメンターになるよう指名されたら、とても誇らしいことです。
とはいえ、メンターは具体的にどのようなことを行い、どのようなことを求められているのでしょうか。
はじめてメンターになる方のために、メンターの役割についてご説明します。ぜひ参考にしてみてください。
もくじ
直属の上司やリーダーとは求められていることが違う
メンターは、誰でもなれるというわけではありません。メンティが所属しているプロジェクトのリーダーや直属の上司ではない人が指名される場合がほとんどです。
メンターはメンティの悩みを取り除いたり、社会人として一人前として育てる役割をもっています。
リーダーや直属の上司がメンターになった場合、新入社員が仕事で悩んでいたとしても、仕事の進め方や考え方の指示をする可能性が高くなります。プロジェクトや仕事の面から見ると良い判断はできるかもしれませんが、メンティの成長を促す指導であるとは言い難いです。
そのため、上司やリーダーではなく、違う視点から新入社員の成長をサポートする人をメンターとすることが多いのです。
メンターに指名された時は、上司やリーダーとは違う役割を求められている、うという認識をもつことが大切です。
メンターに求められるのはコミュニケーション能力
メンターになる人に必ず求められる能力は、コミュニケーション能力です。仕事ができることも大切ですが、それ以上にメンターはコミュニケーション能力を求められます。
社会人になったばかりの新入社員は緊張感をもっていますし、上司との距離感にも迷いながら仕事をしています。緊張した状態では悩み事があっても口に出すことができない可能性があるので、メンターは気軽に相談できるような雰囲気づくりができなければなりません。
また、メンティによってコミュニケーションをどうとればいいのか、考える必要があります。考え方や感じ方は人それぞれですので、その人の特性に合わせた対応を行うことになります。
十人十色の個性に合わせたコミュニケーションを取ることは大変ですが、メンターとしての役割を担うためにはとても重要な能力と言えます。
傾聴の姿勢を持ってメンティの話を聞こう
メンターとしての大事な役割は、メンティの話をしっかり聞くことです。
メンティが煮え切らないことを言っていたとしても、イライラすることなく落ち着いて最後まで話を聞く「傾聴の姿勢」がとても大切です。傾聴の姿勢とは、しっかり耳を傾けて話を聞いているという姿勢を見せるということです。
少し話を聞いただけでどんな悩みかを判断しアドバイスしてしまうと、メンティには「違うことを言いたかったのに…」というモヤモヤばかり残ってしまいます。モヤモヤが積み重なると不満になり、「この人に相談をしても無駄だ」と思われてしまうことがあるのです。
メンティの話を聞き流したり、遮ったりするのは絶対にNGです。きちんと聞いているというアピールをしながら、最後まで話を聞くようにしましょう。そうすれば、メンティも安心して話ができるようになります。
命令や指示、高圧的な態度は逆効果!
話を聞くことも大切ですが、聞いた後の話し方も重要です。
悩んだり行き詰まったりすることも多いメンティに寄り添って、丁寧に話をすることがメンターの大切な役割です。
高圧的に話をしたり、命令をしてしまったりすると、メンティは委縮して話をしてくれなくなるなど心を閉ざしてしまいます。「相談しなければよかった」と思われてしまうかもしれません。それではメンターとしての役割を果たすことができません。
自分の意見を押し付けたりせず、メンティに問いかけるなど、メンティ自身が考えて行動に移すことができるような体制を取ることが大切です。
真面目に話を聞くだけでなく、時にはユーモアを交えて話ができると、メンティとより近い距離でコミュニケーションを取れるはずです。
メンターの役割はメンティの「自発性」を育てること
メンターの役割は、メンティが迷った時のサポートをするような存在です。サポートの仕方は色々あるものですが、メンティが自発的に動けるように成長させることが大切です。
社会人として一人前になるためには、自分で考えて進んでいく必要があります。
いきなり一人で前に進んでいくのは大変なことですから、メンターの豊富な経験を生かしてサポートをしていくことになります。
メンティが自分で考えて行動をするためのサポート役ですから、メンターが考える前に答えを出したり、自分の都合のいい部下に育てたりすることはNGです。
では、自発性を育てるためにはメンターとしてどうふるまえばいいのか、どう役割をこなしていけばいいのか、ご紹介します。
1.メンティにとって理想のモデル像になる
メンターになったら、メンティのお手本のような存在になることを目指しましょう。
入社したばかりの新入社員は、自分がどのような人になりたいのかがボヤっとしていたり、現実とかけ離れた理想像をもっている場合があります。これは、まだまだ自分に自信がなく、どこを目指せばいいのかわからないという状態なのです。
メンティが成長していくための道しるべになるためには、自分らしく、目標をもって前向きに仕事をしていきましょう。生き生きとしたメンターを見ることで、新入社員は憧れを抱くようになります。
メンターが、メンティにとって「こんな人になりたい!」「この人について行きたい」と思われるような人物像になることができれば、メンティはその人に近づけるように自然と努力を行うはずです。そうなれば、積極的な声掛けなどを行わなくても、自ら考えて行動をするようになっていきます。
2.「悩み」から「考える」にシフトチェンジさせる
新入社員は、仕事のことで色々と悩み、たくさんの壁にぶつかります。
社会人経験が増えればなんてことないことも、新入社員にとっては高すぎる壁となってしまっていることもあります。
「どうしよう」と悩み続けていても迷走を続けるだけで、解決に至らないことが殆どですので、「悩み」続けることから「考える」ことにシフトチェンジさせる必要があります。
このシフトチェンジをさせることが、メンターの大きな役割です。
「どうすればいいと思う?」というたった一言の声掛けでメンティが自ら考えはじめた、ということはよくあることです。
自分で考えて行動するというのは、社会人にとってとても重要なことです。
解決方法を答えるのではなく、自ら考えるための問いかけを行うようにしましょう。
3.問題にぶつかったら一緒に戦略をたてる
社会人経験の少ない新入社員は、ぶつかった壁を乗り越えようと思っても、乗り越える方法が思い浮かばないことがあります。いくら考えても答えが見つからず、迷子になってしまうこともあるでしょう。
そんな時は、経験豊富なメンターの出番です。
メンターが考えていることを聞き出し、そこへの道のりを一緒に考えてみましょう。仕事上で間違った判断をしていたとしても、まずは考えを聞いてから、正しい方向へ修正する道筋を立ててあげてください。
自分で考えて行動できるようになったという事実は、メンティにとっては自信につながります。行動したことによって、達成感も味わうことができるでしょう。
上司が出した答えに従うよりも、ずっと成長できるはずです。
すぐに結果が出なくても焦らず見守ろう
数か月、1年など、メンターとして動いていたとしても、メンティが思うように成長してくれないこともあるでしょう。
しかし、すぐに結果が出なくても、焦らず見守ることが大切です。
人の成長スピードは人それぞれ違います。急成長する人もいれば、悩み続けて成長を感じられない場合もあります。
メンターが慌てたり焦ったりすると、メンティも焦ってまた悩み続けてしまうこともあるかもしれません。メンティの成長スピードがゆっくりだったとしても、どっしりと構えることも大切です。
ただ、あまりにも同じことで悩んだりしているようであれば、メンティにとって合わないサポートを行っている可能性があります。
その場合はコミュニケーションの方法に変化をつけ、メンティに響くポイントを探しましょう。
まとめ
いきなり完璧にメンターとしての役割を果たせる人はいません。誰でも初めてメンターをやることになった時は、緊張して、どうしていいかわからなくなることもあるはずです。
メンターは、メンティの自発性を育てるサポート役です。「メンティの個性や考え方に合わせてコミュニケーションを取り、成長を促していくこと」これがメンターの重要な役割なのです。
メンティが迷っている時こそ、問いかけてみたり、どう考えればいいのか道筋をたててあげてください。しっかりメンティの話を聞くこと、いきなり答えを出さないことも重要なポイントです。
もしメンティが何度も同じところ悩み、躓いているときには、サポートの方法が合っていない可能性があります。その時は角度を変えて接するようにしてみてください。
メンティが立派に成長した時は、メンターとしての達成感も味わえるはずです。