いつからか、仕事で何かあれば、すぐに落ち込んでしまい、しばらくしてもまだ失敗について考えていてなかなか立ち直れない…そんな人を「メンタルが弱い」と表現するようになりました。
自分はメンタルが弱い…でもどうしてこんなにもメンタルが弱いのか分からない…どうにかしたい…と悩んでいませんか?
この記事では、メンタルが弱い原因を心理学や精神医学の面から徹底的に分析していきます。
もくじ
メンタルが弱いってどういうこと?強い人との違いとは?
すぐに精神的ダメージを負う人のことを「メンタルが弱い」「メンタルが豆腐」「心が折れやすい」などと比喩されることが多いですが、そもそも「メンタルが弱い」とは、具体的にどういうことなのでしょうか。
また、メンタルが強い人とはどのように精神構造が異なるのでしょうか。
まず、メンタル=精神的・心理的という意味を持つため、「メンタルが弱い」には精神的・心理的に傷つきやすいという意味が含まれています。
さらに、精神的なダメージを引きずりやすいという意味も含まれているため、ネガティブな印象が強くなっています。
一方、メンタルが強いということは、何か失敗をしたり、人から意見をされるようなことがあっても傷つきにくく、「気にしない」「忘れる」力があるということになります。
しかし、メンタルが強い人が絶対に落ち込まないのかというと、そういうわけではありません。メンタルが強い人は、落ち込んでも立ち直るまでのスピードが速いのです。
これを心理学の専門用語で「レジエンス」といいます。レジエンスとは、自発的な治癒力のことを指していて、精神的回復力とも呼ばれています。
メンタルが強い人は、このレジエンスが高い人といえます。落ち込んでも、立ち直る、つまり回復する力があれば、メンタルが強いということになるのです。
メンタルが弱い原因は親の育て方にあり?鍵は幼少期の経験!
メンタルが弱いことを気にしている人の中には、自分のメンタルの弱さの原因を自分だけのせいにする人もいれば、「親があの時あんな育て方をしたから…」と根に持っている人もいるでしょう。
実は、メンタルの弱さは、実際に親の育て方の影響を受けています。ただし、あくまでも影響を受けているだけであり、親の育て方だけが一方的に影響を与えているわけではありません。
親の養育態度が子どもの性格に影響を与えるというデータがある
1960年の宮城音弥の研究によると、子どもに対する親の態度によって、子どもの性格特性にある一定の傾向が認められると報告されています。
つまり、親の養育態度がどんなものかによって、子どもの性格的な特徴が影響を受けてしまうというデータです。
この研究によると、親が子どもを支配するような養育態度の場合、子どもは社会に適合しようと懸命になったり(人の顔色をうかがってばかりで傷つくことを恐れている)、服従しやすく、自発性に欠けた消極的な子どもになる可能性があります。
たとえば親があなたに命令ばかりして、あなたの要求をあまりのまなかった場合や、あなたの希望の進路よりも親の希望の進路を優先させようとした場合、このタイプに当てはまります。
メンタルが弱いことの原因は、他にも考えられますが、人間の発達や成長に最も大きな影響を及ぼすのは、生まれて初めて経験する「社会」でもある家族からの影響が色濃く出てしまうことは避けられません。
上記のような経験に思い当たる節のある人は、親の養育態度によって今のメンタルの弱さがある可能性があります。
幼少期にある課題をクリアしないと、一生メンタルが弱いままの可能性も
もっと広い視野で人間の発達をみていくと、人間が生まれてから亡くなるまでの間の変化を研究している「生涯発達心理学」という分野があります。
この生涯発達心理学の中でも、エリクソンという著名な心理学者が提唱した「人格の発達理論」でメンタルの弱さを説明することもできます。
エリクソンは、人間の生涯を8つの段階に区切り、その段階ごとにクリアすべき課題があるとしました。
その8つの発達段階のうち、4つめの「学齢期」つまり小学生の時代に、友人や学校での経験の中で勤勉性を獲得できなければ、その後の人生で劣等性(どうせ自分なんて…と思ってしまうこと)を抱えたままになり、これがメンタルの弱さにつながってしまうのです。
勤勉性とは勉強をマジメにすることだけではない!小学校での苦い体験もメンタルの弱さにつながる
エリクソンのいう勤勉性とは、小学校での勉強をマジメにするだけのことではありません。もちろん勉学に集中して取り組めるかも大切なのですが、もっと勤勉性を得るために、つまりメンタルを強くするためには、誰かに言われてではなく自分からやってみたいことをやってみて、実際に成功できるという体験が必要です。
親の言いなりではなく、友人同士で工夫して何かを達成したり、自分で行きたいと言った祖父母宅への小旅行を成功させたり、こんな小さな体験が有能感を生み出し、それが折れない心、つまり強いメンタルをつくるのです。
逆にいえば、このような体験がなく、特に深く考えずに小学生時代を過ごした人や、誰かに言われるがままに行動していた人、そして挑戦してみたけれど一度も成功しなかった場合、メンタルが弱い原因になり得ます。
「気質」という生まれ持った性格が原因でメンタルが弱い人もいる
もっと他の側面から見てみると、「生まれつき」メンタルが弱い人もいます。これを心理学では「気質」と呼んでいます。
気質は、親の遺伝でほぼ決まっていて、生涯を通して大きな変化がみられる人は少なく、赤ちゃんの頃から大人になるまで、大人になってからも続く大切な性質です。
この気質について、アメリカの心理学者トマスらが1963年に、同じ被験者を生まれてから青年期になるまでを追い続けた有名な研究「ニューヨーク縦断研究」があります。
この研究によると、気質には9つの類型があり、その中でもメンタルの弱さの原因につながると思われるのが「順応性」「機嫌の良さ」です。
順応性は、体験したことがない状況や人物、環境に対してどれくらいスムーズに適応できるのかを指します。機嫌の良さは、快・不快の感情をどれくらい敏感に感じやすいかということを指します。
順応性が低いと、知っている人としか上手に話せなかったり、なにかトラブルがあるとそのトラブルに対応できずに落ち込むことになります。
機嫌の良さの数値が低いと、人が普通にクリアできるような困難な状況でも、そり立つ壁のように感じてしまい、なかなか一歩を踏み出せないということも起こります。
気質は環境によって変化することもありますが、生まれつきの人の性質のため、よほどのことがない限り変えられません。
ただし、この気質を輪の中心にするように、年輪のように気質の周囲には「社会によってつくられた性格」が上乗せされていきます。
気質面でメンタルが弱くても、人によっては強いふりをすることで、本当にそのような性格を身につける人もいます。
メンタルを強くする第一歩は出来事の捉え方!
メンタルを強くする方法は、いくつかあります。メンタルが弱い人ほど、メンタルが強い人は自分とは別次元の人間だ…と諦めてしまいがちですが、上記で紹介したように、「メンタルが強い」という性格を「メンタルが弱い」性格の上にのせて隠しているだけの人もいるのです。
でも、これでは本当の困難に遭った時に、メッキがはがれたように本来のメンタルの弱い自分が出てきてしまいます。
そうならないよう、メンタルが弱い原因を分析した上で、メンタルを強くする方法を試してみましょう。
「リフレーミング」してみると、同じ出来事もポジティブに見える
メンタルが強い人は、落ち込む原因となる出来事が同じでも、その出来事をとらえる視点・目線が違います。
たとえば、「教育係の先輩社員から、いつも小さなことで指摘されてしまう」ということが事実としてあったとします。
これをメンタルが弱い人がとらえると、「先輩は私のことが嫌いだから、いじめているんだ」「自分は失敗ばかりしてしまってどうしようもない人間だ」などと考えるでしょう。
同じ出来事でも、メンタルの強い人は実際に起きた出来事のとらえ方をポジティブに行っています。それを心理学では「リフレーミング」と呼んでいます。
これは、同じ出来事でもフレームの付け方を変えてみる、つまり違う角度から(ポジティブに)見てみることを指します。
このリフレーミングを使って、先ほどと同じ出来事をとらえてみると、こうなります。「先輩は、私を成長させようとしているから、自分の仕事の時間を割いて教えて伸ばそうとしてくれているんだ」。
同じ出来事でもリフレーミングによってとらえ方を変えることで、メンタルを強くしていくことができます。
非合理的な信念を合理的な信念に書き換えることでメンタルが強くなる
メンタルが弱い原因として、もう一つ考えられるのは、自分にとってよくない出来事が起こった時に非合理的な信念を持っていることです。
つまり、実際に起きている出来事をネガティブで非建設的な方向に大きくしてしまうのです。たとえば、何度かたまたま機嫌の悪い上司と会話したら、実は機嫌がいいこともあったはずなのに、「この上司はいつも機嫌が悪い」と考えてしまいます。
このような非合理的な信念を捨ててみることでメンタルを強くすることができます。上記のケースなら、「機嫌がいい時もある」ことを見逃さずに、よくない出来事を大げさにとらえず、「実際に起きたこと」を冷静に見ることです。
”絶対に~””いつも~”という言葉は非合理的信念の典型的なパターンですから、”絶対に””いつも”と思ったら、本当にそうかな?と自分自身で疑問を持ってみることをおすすめします。
まとめ
メンタルが弱いと自覚している人は、弱いからこそ強くしようと心がけることができます。つまり、メンタルが弱いと自覚している時点で、自分でなんとかできるチャンスを掴んでいることになるのです。
メンタルが弱い原因がわかっても、自分だけではどうしようもない場合、メンタルが弱いままでも働けるところに転職するという方法もあります。
一方、メンタルが弱い原因が分かったからこそ、メンタルを強くしてもっと上に行くチャンスを掴むという方法もあります。
どちらを選ぶかは、あなたが自分自身のメンタルをマネジメントしてみて、その成果が出るか・出にくいかで決めてみてはいかがでしょうか。