転職をする際、「同業種への転職」と「異業種への転職」という2つの大きな方向性からまず選ぶことになります。 IT 業界で働く人の中には、異業種に転職したいと考えている人も少なくありません。
しかし、専門性の高い分野で働いていただけに、次の選択肢がうまく決まらないということもあるでしょう。
IT業界から異業種への転職は可能ですが、決める前にここでご紹介する5つのポイントについて考えておく必要があります。
なぜIT業界を離れたいと思うのか、異業種への転職にどんなリスクがあるのかなど、多角的に考えることで向かうべき方向が定まってくるはずです。
もくじ
IT業界がイヤになってしまった理由とは?
辞めたい気持ちが高まると、今すぐにでも行動したい衝動に駆られるかもしれません。しかしその前に、IT業界なんてもうイヤだと思うようになった理由について分析してみましょう。
理由を明確にしないまま転職をすると、次に進んでもまた同じ問題にぶつかってしまいかねません。
まず。自分の気持ちに正直に、思い出したことをできるだけ具体的にメモに書き出します。IT業界で働く人が抱える悩みは、職種が違っても共通している部分が多いものです。そこで、IT業界がイヤになる理由でよくあるものを5つご紹介するので、自分の気持ちを思い起こす際の参考にしてください。
長時間労働が当たり前の働き方に嫌気がさした
IT業界といえば、長時間労働が当たり前のようにまかり通っている側面があります。超人的なスケジュールの中、夜遅くまで残業をする日々が続き、休日も仕事で終わってしまうなら、誰でも仕事がイヤになってしまうものです。
心身共に疲れきった状態で頭をフル回転させなければならないのは、現場で働く人にとって大きなプレッシャーです。
時間に余裕さえあればもっと良い成果が出せるところを、間に合わせで終わらせようとするならやりがいを失ってしまうこともあるでしょう。
いわゆる「デスマーチ」の状態が続けば、体調を崩してしまう人が出てくるのはある意味当然の流れです。
もともとは好きだったはずの業界でも、長時間労働がこの先も続くかと思うと辞めたいと思うのも無理はありません。
仕事内容が自分のやりたいことに合っていない
IT業界は、専門的な知識や技術を持った人しか入れないというものでもなく、文系の人がからスタートすることもある業界です。そのため、IT業界の華やかそうなイメージに憧れて業界入りする人も少なくありません。
専門性が一切ない人も、業界入りすればゆくゆくはITに関する知識や技術を身につけていかなければなりません。しかし、IT分野に全く興味が持てない人にとって、勉強すべきことはかなり難解な問題ばかりでしょう。
高い専門性が求められる分野に興味が持てないなら、業界内でいい仕事はできないでしょう。
あまりにも自分がやりたいこととIT業界の仕事がかけ離れているなら、業界がイヤになってしまうのもうなずけます。
労働条件があまりにも悪すぎて続ける気になれない
長時間労働の日々を送っているはずなのに、給料は一向に上がらないとなると、そこで働く意味を考えてしまいます。みなし残業の場合はいくら働いても給料は同じなので、モチベーションがどんどん下がってしまうかもしれません。
IT業界におけるピラミッドのどこに属するかによって、労働条件は大きく異なります。
上流工程を扱う大企業か、下流工程ばかりを受注している下請けや孫請けかによっても、得られる収入の規模が変わってくるでしょう。
給料面ではそこそこ満足できていても、休日が少なすぎるなら、働く意味を見失ってしまうかもしれません。有給があっても形ばかりで、病気などよほどの事情がなければ取れない状況では、稼げたとしても楽しみがありません。
スキルアップとスキルを維持するための勉強が大変
IT系のスキルは、一度覚えてしまえば一生困らないという類のものではなく、常にアップデートしなければならないものです。1つのスキルを身につけるまでには、プライベートの時間を削らなければならないこともあります。
もともとITが得意な人はいいかもしれませんが、そうでない人にとってITスキルを維持することはかなりのエネルギーを使います。キャリアアップのために資格と目指すとなれば、空き時間は全て返上するぐらいの意気込みが必要になるでしょう。
IT業界は技術のトレンドの変化や進歩がとにかく早いので、必要に応じて新しいスキルを身につけていかなければなりません。忙しい毎日の業務をこなしつつ、最新情報をキャッチアップするのは大変なことです
IT業界に対して将来性を感じることができない
20代のうちは、長時間労働などの厳しい環境も、若さと体力で乗り切ることができるかもしれません。しかし、30歳を超えてさらに年齢を重ねるようになると、体力や気力は着実に落ちていってしまいます。
IT技術職には「35歳定年説」があると言われており、実際市場における需要もこの年代を境に少なくなります。本当に35歳で定年をむかえるわけではありませんが、この頃から管理職へとキャリアチェンジする人とそうでない人に分かれはじめます。
毎日の業務で精一杯で、新しいことに何も手を出せない状況が続くと、将来に不安を覚えるようになるものです。このままこの業界にいても、これ以上ステップアップすることはないと思うなら、いっそ別の業界で働こうと考えるようになるのです。
IT業界から異業種への転職はリスクを覚悟する
どうしてもIT業界がイヤなら仕方がありませんが、よほどの事情がない限り、異業種への転職は慎重に考えたほうがいいでしょう。経験したことのない異業種で働くということは、待遇もそれなりに下がってしまうことを意味します。
中途採用を行なっている企業が人材に求めているのは、即戦力であることがほとんどです。もし未経験者も募集しているとしたら、年齢が若い人が優先されるのが一般的です。もし年齢に関係なく未経験者を募集しているとしたら、求められているのは「誰でもできる仕事をこなす人材」です。
誰にでもできる仕事に支払われる給料は、専門職に支払われる給料とは比較にならないかもしれません。スタート時の待遇はもちろん一番下ですし、特別なスキルが必要なければスキルアップして昇級を狙うこともできなくなります。
スキルや経験を生かすことができる転職を意識する
少し考え方を柔軟にして、全くの未経験ではなく、IT業界で身につけたスキルと経験を生かせる転職に意識を向けてみましょう。IT業界に対してすっかり愛想が尽きてしまったとしても、ITの専門スキルと経験は立派な強みのひとつになります。
あらゆる業務がIT化されている中、多くの企業がIT系の技術を持った人材を必要としています。IT業界にいた頃に比べると、求められるスキルは基本的なことばかりかもしれませんが、かなり重宝されることが多いようです。
自社製品やWebサービスを開発している企業なら、IT業界特有のデスマーチにはまることなく、自分のペースで開発に専念できます。
そのようなタイプの開発は、トレンドの先端をゆくスキルを常に追いかけることもあまりありません。
IT業界内で職種を変えて転職するという選択肢もある
まだ自分が他の選択肢を知らないだけで、やりたいと思える仕事がIT業界内にもっとあるかもしれません。
請負業者で働くことがイヤなのであれば請負を行わない企業を探すなど、柔軟に考えてみるという方法もあります。
SEの仕事がイヤならば、ネットワークエンジニアやインフラエンジニアなど、別のエンジニア職を検討してみることもできるでしょう。同じIT業界の仕事でも、内容はそれまでの仕事とはかなり違ったものになるはずです。
せっかく辛い思いまでして身につけた経験を、みすみす捨ててしまうのはもったいないことです。IT業界そのものが自分に合わないというわけでもないなら、まずは経験を生かせる業界内で転職先を探してみましょう。
それでもやっぱりIT業界を辞めたいなら行動あるのみ
異業種への転職リスクなども理解した上で、それでもIT業界から離れたいという気持ちが固いなら、次のステップへ進みましょう。イヤでイヤでしょうがない業界で我慢して働き続けても、またどこかで転職したい衝動に駆られてしまいます。
転職するとはっきり決めたなら、もうそれ以上は悩まずに具体的な行動を起こすことが大切です。異業種ならどこでもいいという状況であれば、まずは異業種の仕事について調査します。ある程度行きたい業界が絞れているならば、その中から応募したい企業を探しましょう。
IT業界から異業種へ転職をする場合、より戦略的に転職活動をしていかなければなりません。何もかも自分で行おうとするのもいいですが、転職サイトに相談し、異業種への転職を成功させるための情報を集めるのも手です。
まとめ
「辞めたい」と思ってすぐ行動するよりも、自分の気持ちや将来の希望、現実面などについてじっくり考えたほうが転職は成功しやすくなります。また、年齢が若ければ若いほど異業種への転職がしやすく、20代のうちなら未経験でも選択肢が豊富です。
30代以上になると選択肢は減りますが、IT業界の経験を生かせばチャンスは広がります。未経験の仕事を1からスタートするならば、できるだけ早いほうがいいことは確かです。慌てて転職することはおすすめしませんが、のんびりしすぎるとチャンスが逃げてしまうかもしれません。
転職をしてから後悔しないためには、転職活動を中身の濃いものにする必要があります。自己分析や企業分析を丁寧に行い、自分が転職に何を求めているのかを明確にしましょう。
よく調べよく考えてから転職をすれば、転職後に満足感や達成感を味わうことができるでしょう。