仕事における納品物、納期、プロセスなどのタスクは、完璧であるに越したことはありません。しかし、その完璧さも方向を見誤れば、周囲の人間を混乱させるだけでなく、自身の首までも絞めかねません。昨今の労働環境の悪化の原因でもある「完璧主義を強いる上司」の声帯と、その「完璧主義を強いられる部下」について今回はお話させていただきます。自分自身がこういった完璧主義な上司かもしれないと思われている方や、完璧主義な上司に悩まされている部下の方はぜひご覧ください。
もくじ
完璧の矛先は自分と部下へ、完璧主義な上司の生態とは?
それではまずは完璧主義な上司のパターンを2つご紹介させていただきます。この2パターンの大きな違いは、その完璧主義の矛先が自分に向かうか、他人(部下)に向かうかです。冒頭でもお話した通り、完璧主義な上司は周囲の人間だけでなく、自分自身を苦しめることがあります。その事実に対しては実感がある方よりも、実感のない方も多いかもしれません。まずはその事実に気付いていただくためにも、この完璧主義な上司の生態についてご紹介したく思います。
また、この矛先に関してですが、自分に対して向かうこともあれば、他人に向かうこともあるといった、両方を兼ね備えているケースもあります。どちらの特徴も押さえていきながら、皆さんの周りの上司の方、もしくはご自身のことを考えてみてください。
自分に完璧主義の矛先が向かう上司は自分を苦しめる
まず「自分に完璧主義の矛先が向かう上司」を考えていきます。このパターンの上司は、完璧主義であることで、意固地になりがちです。それは責任感のあらわれでもあるのですが、自分の能力・許容範囲を超えた仕事を背負い、そしてそれを部下に的確に配分できない傾向にあります。こうした上司は「自分はまだまだやれる」と考えている場合や、「部下に手柄をとられたくない」と考えている傾向があるようです。それでこなせたとしても、同じ部署で働く部下や同僚にも迷惑がかかるため、やはり考えものです。
また、「部下を心配しているから」ということもあり、自分ばかりが頑張る上司の方もいらっしゃるかもしれません。これはこれで部下からすれば「頼もしい上司だ」と思われるのかもしれませんが、いつかはパンクする可能性があり大変危険です。仕事でミスをする危険だけでなく、自身の体調を悪化させる可能性があるでしょう。加えて、部下が成長する機会も失われてしまいますから、やはり完璧主義の矛先が自分であったとしても、回りまわって自分以外の人間にも迷惑がかかってしまいます。このように自分に対して完璧主義な上司の場合は、完璧主義であることを良しとしている場合もあるので、周囲の方が注視してあげる必要がありそうです。
他人に完璧主義の矛先が向かう上司は他人を苦しめる
他人に完璧主義の矛先を向けてしまう上司は、当然その対象である他人を苦しめます。ここでいう他人は、主に部下の方ですが、同僚の方も対象になりえるので注意が必要です。ただ、同僚はまだしも部下の方は、その立場の弱さから完璧主義を拒否することが難しく、過酷な労働環境を強いられる可能性が高くなります。こうした完璧主義は「サービス残業」、「やりがい搾取」、「パワハラ・モラハラ」、「休日返上の過重労働」といった様々な労働問題とも密接に関係しています。
また、仕事に完璧を追い求めるあまり、納品物の品質を究極まで高める…。これは一見すると美談ともとれる話ですが、その裏には完璧主義な上司を恐れる部下の苦労があることを忘れてはいけません。そして完璧主義な上司は、完璧に仕上がった仕事(納品物)の出来、クライアントから得られる高い評価に満足し、新しい仕事に対しても再び完璧主義を徹底してしまうのです。このサイクルのなかに巻き込まれた部下は、納品物の質が高まる一方、肉体と精神を日に日にすり減らしていくのです。
完璧主義な上司は「これが当たり前だろ」と言わんばかりの態度をとることもありますが、これに対して文句を言うことはかなり難しいです。会社側としてもそのやり方で仕事が上手くいっている以上、そのやり方に口出しをしにくいこともあり、放置されがちな問題となっています。そして部下が消耗しきった時にやっと、この完璧主義が問題として取り上げられるのです。その時にはもう遅いのですが…。
解決策1、完璧主義な上司の及第点を見極めよう
完璧主義な上司に出会ってしまった場合は、その上司の及第点を見つけることが大切です。いくら完璧主義といえども、その完璧具合にはある程度のラインがあり、これをクリアすることで満足してくれる可能性があります。もちろん、仕事の手抜きをすれば良いということではないのですが、上司の完璧主義に付き合い過ぎると先程も言ったように、どこかで肉体と精神の限界がやってきてしまいます。そんなことのないよう、ある程度のラインで妥協することも大切にしていただきたいのです。
こうした上司の及第点を見極めるためにも、「自信を持って仕事の報・連・相をする」ことが大切です。この報連相を怠ったり、怠っていなかったとしても自信がなかったりするようだと、「こんなのダメだ」と突っぱねられる可能性がありますので注意が必要です。必ず自信を持って話すように心がけ、完璧主義の付け入る隙をつくらないようにしましょう。
解決策2、過度な完璧主義であることを気付かせてあげよう
先程もお話させていただいたように、完璧主義な上司は完璧主義である自分に気付いていない場合や、完璧主義であることに気付いていたとしても自分の信念からそれを自分に強いている可能性があります。こうした上司には自分が完璧主義であることを気付かせてあげるようにしましょう。ただ、直接「あなたは完璧主義過ぎます」とは言いにくいですよね。言えたとしても関係をこじらせる可能性があり、最終手段になってしまうかもしれません。
そこで上司の方が仕事を自分で背負っている時は、その仕事を助けてあげるようにしましょう。上司が「自分でやる」と言い張ったとしても、絶対に手伝うのです。こうすることで「自分は頑張り過ぎていたのかもしれない」、「こいつ(部下)になら仕事を任せられる」と思ってもらえるかもしれません。逆に他人に完璧主義を強いる上司には、信頼できるその上司よりもさらに上の上司の方か、その上司の同僚の方に相談してみましょう。相談することでその方から、ストップをかけてもらいます。
こうすることで完璧主義に苦しめられる上司自身も、完璧主義に苦しむ部下も助けることができます。少し勇気がいる方法かもしれませんが、完璧主義は貫けば貫くほど手強いものになっていきます。事態の解決のためにもなるべく早く動くことをおすすめします。
解決策3、どうにもならない場合は転職で上司を変える
どうしたって完璧主義を変えられない上司というのも、残念なことに存在しています。長く完璧主義を貫いてきたせいで、その考えは凝り固まり完璧主義であることが当たり前になっているケース、そして行き過ぎた完璧主義によって助けられる会社という土壌が醸成されることで解決ができないケースです。このような場合には、もはや「転職して上司を変えてしまう」というのも1つの解決策です。
会社が変われば当然上司も変わりますし、完璧主義によって助けられていた会社の体制・社風も変わってくることが考えられます。むしろこれまでの完璧主義によって、転職先ではヒーロー扱いされるほどの働きをみせることもできるかもしれません。
上司も会社も、広い世界からみれば狭い世界の限られた存在でしかありません。あなたを苦しめる完璧主義はその狭い世界のなかでできあがってしまった産物です。それをそのまま受け入れることが賢いとは言い切れません。大切なのは上司や会社が強いる完璧主義ではありません。転職を検討することで新たな考えにふれ、伸び伸びと働ける世界を求めることも良いのではないでしょうか。
完璧主義に苦しめられるのは部下と上司の両方だ
今回お話させていただいたように、完璧主義に苦しめられているのは何も部下の方に限った話ではありません。完璧を追い求めるがあまり、上司も自分自身の首を絞めている可能性があります。ただ、立場の弱さから部下の方が限界に追い込まれる可能性が高く、その前に完璧主義の及第点を見つけたり、上司に事実を気付かせたりすることが必要です。そして、本当にどうにもならない場合には、その完璧主義から逃れるために転職を考えるのも1つの解決策になります。ご自身が本当に働きたいと思える環境・スタイルを追い求めても良いのです。
転職がうまくいった時には、「なぜ今までこんな上司に悩まされていたのだろう」と不思議になることもしばしば…。心からそう思える転職ができると素敵ですね。