企業年金として確定拠出年金を採用する企業が増えています。(導入企業は全体の54%、2016年8月時点)
確定拠出年金には転勤先に持って行くことできる、という従来の企業年金(確定給付企業年金)にはなかった大きなメリットがあります。ただし、その一方で年金運用については、従来の企業まかせから各個人がキチンと意識して行う必要があります。
転職や退職時に必要な手続きを実施しないと、せっかくのあなたの年金が放置状態となってしまい、減少あるいは60歳以降に受け取ることができなくなってしまう場合もあります。タイトルの「1428億」は転職時に必要な確定拠出年金の移管手続きを実施しなかったことにより放置状態となってしまい、老後資金としての運用機会を逃している金額です。実にもったいないですよね。(2016年3月時点)
本記事では、そもそも確定拠出年金とは何なのか、また転職や退職時に必要な手続きなどについて紹介します。
もくじ
従来の企業年金の課題に対応した確定拠出年金
サラリーマンの年金は以下の3点より構成されております。
サラリーマンの年金=国民年金+厚生年金+企業年金
- 国民年金:20歳以上60歳未満の国民全員が必ず自己負担で加入する公的年金。
- 厚生年金:サラリーマン向け公的年金。会社と個人が半分づつ負担。
- 企業年金:会社が社員向けに運営する私的年金。
確定拠出年金は上記の企業年金の一種で、従来の確定給付企業年金の以下の課題をクリアすることを目的に、2001年10月より運用開始されました。
・転職先に持っていけない
・経済状況の悪化による年金額減少あるいは企業年金廃止企業の増加。(現在の70歳世代の運用利回り年5.5%から現在はゼロ金利)
確定拠出年金とは支払(拠出)金額が一定(確定)
「確定拠出年金」「確定給付企業年金」なんて分かりづらいネーミングですよね。
ザックリ言うと、毎月支払う(拠出する)金額が一定(確定)なのが「確定拠出年金」、一方、私達が受け取る(給付)金額が一定(確定)なのが「確定給付企業年金」と考えましょう。
- 確定給付企業年金:従来、景気良かった時代は年功序列で定年まで働けば一定の年金がもらえました。運用リスクを企業が負担(企業側が何とかする必要があった)
- 確定拠出年金:企業側の負担を一定額の金額支払いのみに軽減、運用リスクや運用の面倒さ(複雑な年金計算など)を従業員および運営部門(銀行/証券会社など)側で負担
あなたの会社の年金は確定拠出年金ですか?
ところであなたの会社の企業年金は確定拠出年金ですか?
まだご存知ないのであれば、以下の方法によりぜひ確認しておきましょう。
・社内規定(従業規則/退職金規程など)を社内ネットで検索し確認する
・社内制度の概要を説明したハンドブック(企業年金ガイドブック/福利厚生ハンドブック/ライフプランガイドなど)を社内ネットで検索し確認する
・社内ネットで見つからない場合は人事/総務部に確認する(人事評価マイナスになりません)
転職時に行うべき移管手続きは転職先により2種類
転職時に行う移管手続きは、転職先によって大きく2パターンに分かれます。なお、会社のルールによっては、勤続3年未満で退職した場合は受け取った掛け金の金額あるいは一部の返却が必要な場合もありますので、あなたの会社のルールについて確認しておきましょう。
転職先が確定拠出年金を導入している場合
これまで積み立てた年金をそのまま移動することができます。転職先の職場担当者に移管手続きしたい旨を伝え、あとはその案内に従い手続きすれば問題ありません。
転職先が確定拠出年金を導入していない場合
退職により自営業あるいはフリーランスになる場合も該当します。
6ヶ月以内に個人型の確定拠出年金(iDeco)に切り替える必要があります。
次に、個人型の確定拠出年金(iDeco)への切り替え手続きについて説明します。
iDecoへの切り替えは金融機関の選定から
切り替え手順は以下の2ステップです。
1.金融機関を選びます
個人型の確定拠出年金(iDeco)は都市銀行、信用金庫、証券会社、ゆうちょ銀行(郵便局)、JA、保険会社などの金融機関で扱われています。まずは移換先の金融機関を選びます。手数料や取り扱い商品数などをチェックして選びましょう。
2.運用商品を選定し積立金額を決めます
運用商品の種類はとても多くてどう選んでいいか分からない、と悩んでしまう方も多いと思います。そもそも個人での運用が前提となっている確定拠出年金。ここは面倒くさがらずに各自で勉強し慎重に選定する必要がありますのでがんばりましょう。
運用商品が選定できたら積立金額を決めましょう。iDeCoは60歳まで下ろせませんので、無理のない金額でのスタートをお薦めします。なお、積立金額は年1回変更することができます。
退職や転職時の手続きを忘れるとどうなる?
ここでは60歳前の退職や転職時の手続きを忘れると一体どうなるかを見ていきましょう。
先にも説明しましたとおり、退職して自営業あるいはフリーランスになる場合あるいは転職先が確定拠出年金を導入していない場合には、6ヶ月以内に個人型の確定拠出年金(iDeco)への移管手続きを行う必要があります。本手続きを行わないとあなたの年金は国民年金基金連合会に自動移換され、以下の問題が発生します。
- 移管手続きを行うまでの期間が、あなたが将来年金受給時に必要となる加入期間(10年以上が条件)に加算されません
- 金融期間による手数料があなたの年金から差し引かれ続けます
- 国民年金基金連合会への自動移換状態からの脱出にも手数料が必要となります
最も深刻なのは1点目ですね。加算されないことにより、60歳になっても年金の受け取りの権利が発生しなくなってしまう場合もあります。
転職時には6ヶ月以内に移管手続きを必ず実施しましょう。
退職時の確定拠出年金の受取は分割あるいは一括で
確定拠出年金は60歳までの加入期間が10年以上であれば、60歳になると年金の受け取りの権利が発生します。これは会社の退職とは全く関係なく年齢と加入期間で決まります。
受け取る方法としては、分割で年金として受け取る方法、一時金として一括で受け取る方法、さらに分割と一括併用で受け取る方法があります。(取扱い金融機関によっては分割と一括併用が選択できないところもあるようです)なお、一時金として一括で受け取られる方が最も多いようです。
確定拠出年金の受け取り手続きは自分で運営管理機関に対し行う必要があります。一般的には、給付を受ける手続きは自分の加入している運営管理機関に対し「裁定請求書」などの書類を提出します。
なお、年金の受け取りは60歳になったからいって急いで下ろす必要はありません。70歳までの10年間の好きな時期に受け取りを開始することができます。
次に、60歳時点で年金を受け取らずに継続して運用する場合の注意点について説明します。
年金を継続運用する場合は想定外の税負担に注意
資産運用を継続して行うためには、毎月発生する金融機関の運用手数料の負担が必要となります。この運用手数料を会社が負担するのか本人が負担するのかについては会社により異なりますので、会社に確認しましょう。
年金を継続運用する場合の狙いとしては、運用により更に利益を得たいということがあります。確定拠出年金は運用益に対し税金がかかりませんからメリットが大きいですね。
ただし、60歳以降で確定拠出年金を一時金として受け取る場合は、その他の企業年金あるいは退職金の受け取りとの兼ね合いによっては、思わぬところで税負担が増えてしまう可能性があります。
確定拠出年金は受け取る時期を選べるだけに税金には注意が必要で、実際には税理士に相談し税金対策を行うことをお薦めします。
まとめ
確定拠出年金とは何なのか、また転職や退職時に必要な手続きなどについて見てきました。
従来の企業年金の問題点である、転職における転職先への可搬性、景気や金利悪化に伴う年金額減少や企業年金廃止企業の増加に対処すべく、確定拠出年金が誕生しました。
従来の企業年金である確定給付企業年金に比べて個人による運用が前提となるため、退職や転職時には年金の移管手続きを各自でキチンと行う必要があります。
退職や転職時の年金移管手続きを実施しないと、その間は年金加入期間にカウントされないだけでなく、金融機関手数料などの負担が発生してしまいます。
確定拠出年金は60歳で満期になると年金を一括、分割、一括と分割併用のいずれかの方法で受け取ることができます。
60歳に年金を受け取らずに継続運用することも可能ですが、この場合は運用手数料が発生、また、他の企業年金や退職金の受給との兼ね合いによっては税負担増の可能性もありますので税理士との相談がお薦めです。