「新入社員が入社してきたものの、卑屈な性格をしていて扱いづらい」「謙虚なのはいいことだけど、できればもう少し自信を持ってほしい」というような悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。現在新しく会社に入ってくる層はゆとり世代やさとり世代と呼ばれ、インターネットやスマホといったテクノロジーにネイティブレベルで触れて育ってきた世代です。それ故に優れているところもあれば、逆に複雑な部分も持ち合わせていますので、従来の接し方や教育方針ではあまり効果が出ない可能性もあるでしょう。この記事では、卑屈になってしまう原因や彼らへの接し方、そしてどのようにすればそのような卑屈さが改善されるのか等を考えてみたいと思います。
もくじ
今世代の若者や部下が卑屈になってしまう理由は?
昨今の情報テクノロジーの発展は驚異的なものがあり、今や誰とでも、何処にいても繋がることのできる時代になりました。電話やLINEといったツールに加え、現代ではSNSのような広範囲なコミュニケーションツールを誰でも使うことが可能です。それらを駆使することで、友人知人の近況からたわいのない話、そして情報共有までを簡単に行えるようになったのではないでしょうか。ですが、情報の行き来が早くなったということは、有益な情報を目にする機会が増えたのと同様に、不利益な情報を目にする機会も増えたことを意味します。
今世代の若者や部下が卑屈なのは、嫉妬や羨望といった感情の行き場がないから
不利益な情報とは、自分に対する悪口や罵詈雑言だけではなく、自分が羨んでやまないポジションにいる人の情報。そして、自分と同じレベルだと思っていた人がいきなり頭角を現して人気者になってしまった様等も含みます。それらは本来であれば喜ばしいものであり、他人に悪感情を抱かせる類のものではありません。ですが、人間には嫉妬という感情があるのもまた事実です。自分がどれだけ望んでも得られないものを持っている人を見ると、羨ましいと思う反面妬ましいと思ってしまうこともまた人間の性といえるでしょう。人によっては、そのようなネガティブな感情を反骨精神として昇華し、エネルギーに換えて成果を出すこともできますが、その感情を持て余し、無理矢理に押さえ込もうとする人もいるのではないでしょうか。
今世代の若者や部下が卑屈なのは、嫌われたり失敗するのが怖いから
そのような、無理やりに押さえ込んだ感情が彼らを卑屈にしているのかもしれません。一般的には嫉妬というのはあまり良いものではなく、持たない方が良い感情である言われています。ましてや、それを人前で出すなどというのはもってのほかで、そんなことをしたら一気に嫌われたり信用がなくなってしまうことでしょう。
ゆとり世代やさとり世代というのは、ことさら世間体を気にする世代とも言われていますので、彼らは嫉妬という感情を上手に取り扱うことができません。そんなものをエネルギー源として人前で見せてしまうのは恥ずかしいことであり、ましてやそれを糧にして何かに挑戦して失敗してしまったとしたら、立ち直ることができないほどにショックを受けてしまう可能性があります。そんな取り返しのつかないことになるくらいであれば、自分を苛み、悲劇のヒーローのように振る舞って、何もチャレンジせず、なるべく自分が傷つかないようにした方がましという考え方になるのかもしれません。
卑屈な部下を持ってしまうことによるデメリットは?
上述したものの他にも、卑屈になってしまう原因は様々であり、人の数だけ理由も存在するでしょう。ですが、卑屈になって良いことはありませんので、治せるものであれば治したいと思っている人も多いようです。
自分自身が卑屈なだけであれば、自分で意識的にコントールできる部分もあり、比較的直しやすいと言えますが、もし自分に近しい人間が卑屈な場合はどうでしょうか。赤の他人や自分に影響のない関係性であれば放っておけば良いもしれませんが、もし職場で部下として扱わなければならなくなったとしたらそうはいきません。
ここからは、卑屈な人の特徴や、そのような部下を持ってしまった場合のデメリット等を考えてみたいと思います。
卑屈な部下を持つと、チーム内にネガティブなオーラが伝染する
卑屈な人は基本的にネガティブなオーラを放っていますので、それがチーム内に伝播してしまう可能性があります。チームというのは能力や適材適所もそうですが、チーム内に流れている空気も重要なファクターですので、できればポジティブな空気感を保っていたいところです。
ですが、「悪貨は良貨を駆逐する」という言葉にもある通り、良いものは悪いものによって影響されやすいといった性質があります。そのため、どれだけポジティブな空気を出そうと頑張っていても、卑屈な人が一人混ざるとその空気は一変してしまうことも少なくありません。逆に、卑屈な人をポジティブなエネルギーで満たそうと思ってもそれは難しいでしょう。やはり「悪貨は良貨を駆逐する」結果になりそうです。
卑屈な部下を持つと、結果が出ずチームや自分の評価が下がる
ネガティブな空気が蔓延しているチームはなかなか労働生産性が上がらず、また問題解決力も低くなってしまうでしょう。それ故、努力をしてもなかなか結果に繋がらず、それが更にチームの士気を下げてしまうといった悪循環に陥る可能性があります。一度良くないスパイラルに嵌ってしまうと、そこから抜け出すのはかなり難しいため、チーム全体の評価が下がってしまうことにも繋がります。
卑屈な人は別段悪気があってそのようなことをしているわけではないのですが、彼らは自分が周囲に良くない影響を与えていると知っているため、非常に申し訳なさそうな態度であることが多いです。そのため、怒るに怒れないといった状況にもなりますので、良くない空気が蔓延する前に手を打つしかないでしょう。チームの評価が下がってしまうということは、イコールマネージャーの評価が下がってしまうことにも繋がります。
卑屈な部下を持つと、マネジメントに気をつかう必要がある
卑屈な人というのは非常にデリケートで扱いが難しいため、マネジメントにも繊細さが要求されます。褒めてもあまり自分事として捉えてくれませんし、問題点を指摘するとまるで人格を否定されたかのように落ち込んでしまうので、なかなか適切な言葉をかけることもできません。かと言って、卑屈な人だけに多大な時間を割いてマネジメントしていると、その他のチームメンバーから贔屓しているという風に見られてしまう可能性もありますので、そちらも合わせて気をつける必要もあります。そして、同時に通常のマネジメントも行わなければいけませんので、マネージャーの負担が過大になってしまう可能性を孕んでいます。その憤りが頂点に達し、思わず卑屈な人を怒鳴りつけてしまった場合、それが人前であったなら、貴方の評価が大きく下がってしまうかもしれません。
卑屈な部下がチームにいる時はどうする?直し方は?
そのような事態に陥る前に、できれば卑屈な人を少しでもポジティブな方向に向かわせる必要があります。ですが、先程も述べた通り、卑屈な人のネガティブさは一朝一夕で培われたものではありませんので、根本的な部分はそう簡単には変わらないでしょう。根本的な部分を変えようとするのではなく、まずはあくまでも表面上、小手先のテクニックで変化する部分を変えることをお薦めします。そうすることで、少なくともチームにネガティブな空気が蔓延するのを防ぐことができ、長期的に見たら卑屈な人も少しは変化するかもしれません。
卑屈な部下に対しては、言い訳ではなく論理的な説明を求める
卑屈な部下は、何かミスをしてしまった際にはとかく言い訳をしがちです。ですが、言い訳ではなく、具体的に何が起こったのか、そして何故そのミスが発生したのかをまず報告させるようにしましょう。これにより、彼らに論理的思考力を植え付け、あまり感情で物事を判断させないようにする効果があります。感情的に物事を判断することが必ずしも悪いことだとは思いませんが、卑屈な人というのはとにかくネガティブな色眼鏡で物事を判断することが多いため、頭の中で実像と虚像が入り混じっている傾向があります。まずはそれを正すために、起こった事象を主観を交えずに正確に判断及び報告してもらうことを心掛けましょう。物事を論理的に考えることによって、彼らに根付いてしまっている認知の歪みを取り払い、できるだけフラットな物の見方をしてもらうことが重要です。
卑屈な部下に対しては、なるべくドライに接する
そういう意味では、卑屈な部下にはドライに接することもまた有効かもしれません。彼らは感情的に物事を判断するため、人間関係にもウェットなものを求めがちです。ですが、そこで彼らとウェットな関係を築いてしまうと、たちまちネガティブオーラに毒されてしまいますので、なるべくドライな関係を心掛ける必要があります。
これは自分だけではなく、チームメンバーも同様に心掛けた方が良いかもしれません。それにより、チーム内にネガティブな空気が蔓延することを防ぐ効果がありますが、卑屈な人は被害妄想も人一倍強いため、嫌われているといった感覚を抱かせないことが重要です。自分が嫌われているといった被害妄想を抱いてしまうと、卑屈な人はより一層卑屈さを増してしまうことになります。
卑屈な部下に対しては、簡単な仕事を任せて自信をつけさせる
それでは、ドライに接しながら同時に気にかけている風を装うためにはどのようにしたら良いのでしょうか。それには、卑屈な人に簡単な仕事を任せ、無事完遂したらちゃんと褒めるといったことが挙げられます。卑屈な人は基本的には自分に自信がありませんので、小さな成功体験を積み重ね、自分に自信をつけてもらうといったプロセスが重要です。そして、任せていた仕事が完了したら良い部分を褒めてあげましょう。適度に賞賛し、貴方はチームにとって必要な人間であるということをしっかりと伝えておけば、「自分は嫌われている」といった被害妄想を防ぐことができます。
ただ、褒めるとしてもあくまで適度に、という程度にとどめておきましょう。あからさまに歯の浮くような賞賛をすると逆に白々しくなってしまい、本音だとしてもお世辞のように受け取られてしまう恐れがあります。そうならないよう、褒めるときは適度に、ピンポイントで真実を伝えた方が良さそうです。
卑屈な若者や部下は、決して能力が低いというわけではない
卑屈な人になってしまう原因や特徴、対処法等をいくつか見てきました。彼らもなりたくて卑屈な性格になってしまったわけではありませんので、ある意味被害者といえばそうなのですが、人間の性格というものは、一旦培われてしまうと正すのは非常に難しいものです。ですが、卑屈な人は自分が卑屈であることを理解しており、そのデメリットも熟知していますので、できればそれを直したいと思っている人も数多く存在します。上述した通り、人間の性格を直すというのは非常に難しいのですが、それでも手助けできるポイントが皆無というわけではありません。
自分と密接な関係がない人であれば無視するというのも選択肢の一つですが、そうはいってられない場合も多いでしょう。そういった際には、彼らの特徴をしっかりと捉え、なるべく引きずられない程度に手を貸してあげることもまた人生の先輩の役目かもしれません。卑屈な人は決して能力が低いというわけではありませんので、うまく認知の歪みを取り除ければ、戦力になってくれる可能性は十分にあるでしょう。