「この部下はいつも言った通りにしてくれない」「何度も説明しているのに分かってくれない」と思ったことはありませんか?
たしかに、説明が通じなかったり部下が指示を無視したりして、自分が上司に怒られたという経験をしたことがある人も多いでしょう。
部下がダメな人だと思う人は多くても、部下がダメなのは自分に原因があると考える人は多くありません。
この部下はできない人だと諦める前に、イライラの根本を改善する対処法を紹介しますので、ぜひ仕事に活かしてください。
もくじ
部下にイライラする理由を知ろう
上司として部下を持つと「いつも説明と違ったことをする」「言っても理解してくれない」など、イライラすることも多いのではないでしょうか。
そのようなイライラの対処法を知る前に、イライラの原因を探す必要があります。イライラの原因は本当に部下にあるのでしょうか?
部下のせいにしてばかりでは、本当の意味でイライラを解消することはできません。
上司は部下を知り、教育する義務がある
部下に仕事を与えたり情報を共有したりするだけで、教育した気になってはいませんか?
自分の経験を思い返せば分かるように、過去に一度は上司をイライラさせたり上司を嫌いだと思ったりしたことがあるでしょう。
上司の仕事は部下の性質を知り、それぞれに合わせて仕事を教え育て上げるのが仕事です。「それは理解できるけど、実際には難しい」「何人もの部下に同じようにする時間なんてない」と思う方も多いはずで、そのためにマニュアルがあります。
マニュアルは当てはめるものではなく材料とするべきものですが、それに安心して「この通りにやらなくてはいけない」と部下を当てはめようとするとイライラが生まれます。部下を知ろうとせずに自分や会社の価値観で物事を判断し、部下を無能だと思うとイライラするのです。
部下にイライラする原因は自分?
イライラは無能な部下のせいだと決めつける前に、自分に原因がないかを知ってみましょう。「今の若者は常識がないから」「言っても分からないから」と考える方も多いですが、まずはイライラする自分を客観視します。
自分には部下を指導するスキルがあるのかどうか、部下が自分の思った通りに行動しないのは自分に教えるスキルがないからなのでは?と考えられる人は少ないのです。
指示が抽象的過ぎる
例えば「顧客と信頼関係を築け」という言葉をよく耳にしますが、顧客との信頼関係とは一体なんなのか、どのような方法をとれば顧客との信頼関係が生まれるのかということに関して説明がなければ、部下は理解できません。
指示が抽象的すぎて部下が具体的な行動イメージを持てないと成果にはつながらず、上司は部下の成績が悪いことにイライラするでしょう。
先入観にとらわれている
「言わなければ分からないのか」「少し考えれば分かるだろう」と思いたい気持ちはわかりますが、説明が面倒だと思っていたり説明したくても実はよく分かっていなかったりしませんか?
それでは部下は上司を信頼する気にはなれませんし、部下と上司では勤続年数が異なるので見方や考え方が変わります。上司にとって当たり前のことでも、部下にとっては真新しいことかもしれません。
上司は常に部下の立場に立って状況を把握し、部下が能力を活かすようにコントロールしなければならないのです。
固定概念や一般常識にとらわれている
マニュアルや会社の風潮で、部下がやらなければいけないことや暗黙の了解などがある会社も多いのではないでしょうか。
コピーを取ったり資料を他の部署へ持っていったりするなどの簡単な業務でも、部下がやると決めつけずにできる人がやれば時間も短縮できますし、みんなが助かるのです。
根拠のない「部下だから〇〇をしなければいけない」という風潮や決まりごとをなくして、部下を役職ではなく個人として捉えましょう。これが部下の性質を知るための第一歩です。
部下へのイライラ対処法は「教えるスキルを身につける」こと
部下へのイライラの原因は部下が未熟だという理由だけでなく、上司に教えるスキルがないことも原因のひとつだといえるでしょう。
部下にイライラしなくなり、部下が成長して仕事ができるようになれば上司も安心して仕事を任せられます。上司も部下も仕事が楽しくなって、一石二鳥ではないでしょうか。
ここからは、部下にイライラしなくなる具体的な対処法として「教えるスキル」を以下の8つの順番で紹介します。
- 具体的な目標設定
- 雑談で部下の個性を見極める
- 自分事で考えられるよう、具体化する
- 2人でコミュニケーションする時間を1日に数分設ける
- 人格を否定しない、他人と比べない
- 役割を与える
- 「どう思う?」とこまめに聞く
- 理由を説明する
以上の順番でそれぞれ詳しく説明していきましょう。
1.具体的な目標設定
営業職を例にあげると「なるべく多くの契約をとってきなさい」より「今月は契約を〇〇件とってきなさい」の方が共感しやすく、どれくらいの努力をすればいいのかイメージしやすいです。
人は明確な目標があるほど努力しやすくなる生き物なので、いきなり大きな目標を掲げるよりは、小さな目標をいくつか用意して最終的に大きな目標を達成できるように計画する方が効果があります。
たとえ小さな目標でも、達成したよろこびを味わうことが仕事のモチベーションにもつながるのです。
2.雑談で部下との距離感をつかむ
雑談で部下と必要以上に親しくなる必要はありませんが、部下が小さな疑問や意見を言いやすい距離感をつくることは大切です。
怒られたり非難されたりするから上司に相談できないと考える部下は多く、そのまま進めた仕事はトラブルが起きやすいのです。
大きなミスや取り返しのつかない事態になる前に、小さな疑問をなくしてクリアな状態で仕事を進められる環境づくりを心がけましょう。
3.自分事で考えられるよう、具体化する
部下に仕事の説明をしたり説得したりするときは、具体例を出して部下が自分のこととしてイメージしやすいように伝えます。
例えば資料を作成させる場合には、ただこのテーマで資料を作ってほしいと伝えるのではなく「何文字で何枚くらいの資料で、グラフなどで視覚的に見やすいもの」という風に指示すると、作業のゴール地点がイメージしやすくなります。
4.2人でコミュニケーションする時間を1日に数分つくる
社内で行うミーティングを細分化するイメージで、部下と一対一で話す機会を意図的につくります。大人数の場で発言するのは抵抗感がある人も多いため、少ない人数で発言する機会をつくりアウトプットの場とします。
1日5分の雑談でもいいので、少人数で現在の仕事の進み具合や小さな疑問、自分で考えて実践したことなどを共有しましょう。小さなことでも質問しやすく、なにが問題なのかを共有することでチームワークが生まれます。
この積み重ねで部下の性質を把握できるので個性に合った指導法を考えられますし、部下の信頼も得られやすいのです。
5.人格を否定しない、他人と比べない
努力をしていてもミスは起こりますし、意識しないところで起こる問題があるのは当然です。気持ちのままに怒りたいときもあるかもしれませんが、人格を否定したり他人と比べて劣っているなどといった発言をしたりしないように気をつけましょう。
要領がいい人や覚えるのが早い人など、人によって向き不向きや得意なことに差があるので他人と比べる必要はありません。そのような個性を見抜いて部下を指導、教育するのが上司の役目です。
6.役割を与える
部下に重要な仕事を任せるという意味ではなく、任せた仕事に意味を与えるということです。
自分が会社に必要とされている、自分も会社の一部として働いているという実感を与えることで承認欲求が満たされ、仕事へのモチベーションが上がります。
7.「どう思う?」とこまめに聞く
上司が説明するだけでなく、質問して考えさせる習慣をつけることが大切です。自分事として考えることに共通しますが、自分で考えてイメージできないと質問できません。
あえて部下に質問することで考える機会を与え、仕事内容を具体的にイメージさせると行動がスムーズです。インプットとアウトプットのバランスを取るように、意見や理解度を引き出して考えるクセがつけば仕事への理解が高まり、成果を出せるようになります。
8.理由を説明する
現代の若者はとくに、精神論を嫌う傾向にあります。
「やれと言ったらやる」「会社がいったらそれに従う」という考え方は論理的ではないので、部下のやる気は上がりませんし「上司も実は分かっていないのでは?」と自分の信頼を失いかねません。
部下に仕事を任せるときにはその業務がどのように会社に働き、どのような効果があるのかを伝えます。自分が会社の一員であることがイメージしやすくなるため、やる気が上がるのです。
まとめ イライラは部下も自分も幸せにしない
部下だけでなく上司や同僚へのイライラも同じように、イライラする感情はすべてを負の連鎖に巻き込むだけで誰も幸せにしません。
愚痴を言い合ったり「この人はこういう人だから仕方ない」と諦めたりすることで気持ちを落ち着ける人もいますが、それはイライラを解消することにはならないのです。
本当の意味でのイライラの対処法とは、イライラの原因を突き止めて改善することです。
今のイライラの原因が部下にある場合、それは自分が正しい指導方法を身につければ改善できるのではないでしょうか。
人に教える技術を身につければ自分もスキルアップできますし、部下も成長して仕事で成果を出せるようになり、安心して仕事を任せられます。部下と上司どちらも幸せになるには、上司が教えるスキルをもって部下を教育することが大切です。
他人が変わることを求めるよりも、自分が変れるように行動する方が効率が良いのです。
部下だけを責めるのではなく、自分に改善できることがないかどうか探してみてはいかがでしょうか。