原因分析は理解しやすい言葉です。ものごとの原因となっていることを分析するだけのことなのですから。ところが、現実には原因分析がおざなりになっていることがあります。そこで、原因分析がなぜ必要で、どういったメリットがあるのか。
原因分析が行われにくい理由はなにか。原因分析を実際の仕事環境にどう取り入れていけばいいのか。ということを詳しく説明させていただきます。あなたがより質の高い仕事をするためには原因分析は必要な能力です。ぜひ身につけてください。
もくじ
原因分析なしに問題解決は意味がない
まず原因分析にどういう意味があるのか、行わないデメリットと行うメリットを説明します。さらに、仕事の現場で原因分析がなかなか行われない理由も知っておきましょう。その上で、着実に原因分析を行う必要がある理由も理解してください。
まず、日常的に行う仕事において、トラブルは1種のパニックを引き起こします。原因分析はそういったトラブルを事前に解消する力になります。トラブルにパニックにならずに対処するためにも、原因分析能力が必要なのです。
原因がわからない問題解決は解決ではない
仕事場で問題が発生しました。よくあることです。例えば、職場がスーパーで、雨の日にお客様が滑って転んでしまうトラブルが発生します。あなたはお客様に謝って床をモップで拭き、責任者に報告をしました。その後、責任者は雨の日には床が滑るので注意してくださいという置き看板を設置します。
これはスーパーなどで実際によく見る対応です。一見問題に対処して、解決したように見えますが、実際はその対処をお客様に任せただけということに気づいたでしょうか。このスーパーの問題は、原因分析をすることなく場当たり的な対処をしてしまったことにあります。雨の日に滑りやすい靴のお客様が訪れることがあれば、また滑ってしまうでしょう。そして今度はケガをしてしまうかもしれません。
手間を省くことで問題がループすることも
原因分析をしない場当たり的対応では、問題は解決していないことが多いのです。ではなぜ人は場当たり的な解決で満足してしまうのでしょう。それは原因分析には時間とコストがかかるからです。時間とコストをかけて原因分析を行って問題を解決することが、割に合わないのではないかと考えます。
場当たり的対応で一時的にしのげるなら、それで済ませてしまおうとするのは損失を恐れる心があるからです。ところが、原因分析をしないまま問題解決を先送りにしていると、同じ問題がループしてしまうことが発生します。そうなると結果的に多くの損失が発生するのです。つまり長期的に見ると、原因分析をしないことは多くの損失を産み出すことになります。
原因分析は面倒と思わず確実に行う
それではコスト最少で問題解決をするために原因分析が必要な理由を説明します。原因がわからないままで問題を一応終わらせることはできます。しかしそれは問題が残ったまま解決を先送りにすることです。
残った問題は現場を消耗させ続けます。原因がわかれば、その原因にのっとった解決方法を選択して、もっとも確実で低コストな解決を行うことができるのです。一時的な時間や出費を出し惜しんで原因分析を怠ってしまうと、問題が大きくなった際に対処できなくなります。問題はできるだけ小さいうちに原因分析を行って対処するのが最適解です。
仕事上で、不具合が生じてなんとかしなければと思いつつ、後回しにしてしまう。忙しいから、経費がもったいないからという言い訳をして原因分析を怠った先には、決して問題の解決はありません。
原因分析を効率的に行う手順とコツ
原因分析に手間と経費がかかると感じるのは、原因分析のロジックを知らないからです。いったん原因分析のロジックを学んでその手順とコツを会得することができれば、予想よりも問題解決にコストがかからない場合が多いと理解できます。
手間暇がかかってしまうのは手順がわからないままに、原因を求めて総当たりをしてしまうためです。問題の原因の分析方法を理解できれば、手早く確実に問題を解決に導くことができます。そこで具体的な分析方法を知っておきましょう。
原因分析のロジックを学んで効率化
原因分析のロジックについては具体的な事例で説明します。たとえば、掃除機をかけようとしたら動かなかったという問題が発生しました。この場合、大元の原因としてすぐに思い当たるのは「電気が流れていない」ということでしょう。そしてその原因に沿って、プラグがコンセントにきちんと差し込まれているかをまず確認するのではないでしょうか。
この場合、もしプラグがきちんとささっていて、電源コードにも問題がなかったら、途端に原因に行き詰まってしまいます。つまり原因分析のロジックとして何かが抜けているのです。原因を分析する際には、このように原因を思いついた端から試してみるのは悪手です。多面的に原因となるものを想定するところから始めます。
現状認識から始まり原因を現状に当てはめる
掃除機が動かない場合に、「電気が流れていない」という理由の他に原因として考えられるものは何があるか考えます。つまり電気は流れているけれど動かない場合があるということを想定するのです。
すると、掃除機の内部のどこかが「壊れている」のではないかという原因が思い浮かびます。次に電気も流れていて、内部も壊れていない場合を考えてみます。すると「ゴミが詰まっている」という原因も思い浮かびます。同じ手順で想定していって、原因として考えられるものがなくなったら、1つ目の分析のできあがりです。この際わかりやすいように、表に書き出してみましょう。この原因分析には、できるだけ多くの人の意見があるほうが多面的な分析ができます。
計画的に調査を行い解決策を立案する
原因分析のロジックが確立されていると何が違うかということが明確になるのが解決までの手順です。掃除機がなぜ動かないかという原因分析の1つ目の書き出しが終わったなら、そこから枝を伸ばして考えられる原因を詳細に書き出します。
- 「電気が流れていない」なら、コンセントからコードが抜けているなどがあります。
- 「内部の部品の問題」なら、スイッチが壊れているなど。
- 「ゴミが詰まっている」ならゴミがどこに詰まっているのかでいくつか候補が上がるでしょう。
そして詳細に書き出した原因からもっとも可能性があるもの、そしてすぐに調べられるものから順番に番号を振っていきます。その番号の若い順から実際に調べることで最小限の手間で原因まで到達でき、解決方法を立案できます。
現場では原因分析能力が活路を開く
原因分析能力は仕事で活用することはできるのか、気になりますよね。実は原因分析能力は、実際に動いている現場でこそ役立つ力になります。
仕事の現場にはアクシデントはつきものです。予定通りに全てがうまくいくということのほうが少ないでしょう。アクシデントが発生したときに原因分析のロジックを理解していないと、場当たり的に解決しようとしてしまいます。その挙げ句重大な問題に発展させてしまうのです。つまり原因分析能力は仕事の現場の責任者にこそ必要なものと言えます。
問題を繰り越さず素早くロジックを組み上げる
現場でアクシデントが発生した場合、原因分析のロジックを使った場合どう解決に導く力になるのかを説明します。日頃から原因分析の訓練ができている場合、アクシデントの原因を素早くロジック立てて分析できます。原因を取り除くことが即可能なのか、時間を要するのかが短期間で判断できるのです。
最初のその分析ができれば、その場での対応も即断することができます。短時間で解決する問題ならその場で解決すればいいですし、時間のかかる問題なら、一時的な仮の予防措置をしておくと決めることができます。アクシデント発生の際の対応の素早さ、その対応の正しさは、その後のアクシデントからの回復に大きく影響します。
問題が発生する原因は本当に解決しているかを理解する
原因分析のロジックを使うことで、多面的な視点で原因究明を計画的に行うことができます。そして解決の手順を手に入れることで、実際に問題が解決しているかどうかを知ることもできます。とても当たり前のことのように聞こえるかもしれません。しかし、世の中で起こっている問題や事故、不具合などは、この解決の確認ができていないことにより発生していることが大半です。
それだけでなく、原因分析ロジックで作り上げたロジックツリーにより、問題が発生する可能性自体を事前に予防することも可能となります。先に例に挙げた掃除機の場合なら、1度掃除機を点検に出して、部品に問題がないか確認するなどの措置を取ることができます。
原因分析能力の高さは仕事の能力を向上させる
単に問題を解決する能力として原因分析能力を考えているかもしれません。そうではなく、原因分析能力は、論理的思考訓練になります。物事の起こっている因果関係を紐解くためのヒントを理解するための思考の訓練となるのです。
だからこそ、原因分析能力の高い社員は、会社にとって貴重な人材になります。原因分析能力の低い社員は、小さな問題を大きくしてしまうことが多々あります。お客様からのクレームに対する受け答えなども問題の根本が理解できず場当たり対処をしてしまい、挙げ句に職場の評判を落としてしまうのです。
そこでまずは訓練として、日常的な問題解決に原因分析ロジックを使うところから始めてみましょう。
まとめ
今回原因分析能力を向上させて仕事に活かす方法をご紹介させていただきました。問題が発生したときに多面的な視野で、理論的なロジックを構築できる人は、多くの人に頼りにされる立場になります。突発的なアクシデントに人は弱いものです。
常日頃から原因分析ロジックをきっちりと使いこなしていれば、それは大きな力となります。あなたの現場対応能力向上のために、ぜひ原因分析能力を鍛えていきましょう。