現代のビジネスシーンでは、一昔前とは違って電話よりもPCやスマホを使ったメールのやり取りが主流になってきています。相手が電話に出ない限りコミュニケーションを取ることがままならない電話よりも、迅速かつ時間を問わず用件だけを簡潔に伝えられる電子メールが、情報伝達手段の割合を多く占めています。そういったものは「ビジネスメール」と呼ばれ、家族や友人とやり取りする時のメール作法と違った“ルール”が存在しています。
ですが、このルールの存在でビジネスメールを打つ事を苦手として感じてしまう人や、会社で誤った文章を送信してしまったり、返信対応に苦労してしまう人も中にはいらっしゃいます。今回は、ビジネスメールの作法、仕事の返信での注意やレクチャーをご紹介しましょう。
もくじ
たとえメールでも礼儀や決まりを遵守すること。
今では仕事におけるコミュニケーション・ツールとして普及している電子メールですが、実際に会って話す時の会話シーンや、電話口で上司や取引先の人とやり取りする時と同じく、たとえメールのやりとりでも礼節を重んじる事が必要です。直接画面越しで対話しているわけではありませんが、送られてきた文章を読むのは生身の人間だということを忘れないでください。敬意を欠いた文章を送ってしまうと、相手に不快さを与え、状況によっては自分だけではなく会社組織そのものにも影響を及ぼしかねませんので心に留めておきましょう。
「たかが一本二本のメールくらいで大袈裟だ。」と侮ってはいけません。メールがビジネスそのものを動かしているといっても過言ではありませんよ。
返信メールは丁寧で距離感を意識した文章に。
社会人としてしっかりと返信が出来るというのは基本中の基本です。そして基本だからこそ相手が会社の上司、お世話になっている取引先の人と関係なく、このお礼の文章がちゃんと書けているかが仕事を伸ばせるチャンスにも繋がります。仕事上のやりとりや会食後のお礼の返信など、状況に関係なく送られてきた丁寧なメールには丁寧なメールでお返事する必要があります。その際に気を付けることは、自分と相手の距離感をしっかり認識することです。一般的なビジネスメールの形式に反せず返信すれば何も問題は起こりません。
特に面識が無い相手だろうと丁寧な文章を送り、読んだ人の気分を害さないよう心がけましょう。また、日頃からお世話になっている人や、付き合い自体が長く距離が近い人が相手の場合は、ほんの少しくだけた文章を送っても問題はありません。ですがあくまでも相手とは“ビシネス上での関係”です。誤って友達感覚で一線を越えるような文章を送らないように十分に配慮して下さい。
スピーディーな返信をするには引用を活かす
メールのやり取りでは、よく引用を使用すると思います。しかし引用は返信の内容が相手に伝わりやすい分、あまりにも長い文章を引用すると、読み手に負担をかけてしまうというマイナスな面もあります。情報を上手く伝えるには下手に細分化するのではなく“端的に読みやすく”することが重要です。出来るだけ短く、そして読んでほしい大事な箇所だけを引用することを忘れないようにしましょう。仕事のメールになると「効率的に相手に短い時間でより多くの正確な情報を与えること」が求められます。
全文引用は避け、物事の核心となる個所以外を省いてください。なお、相手から送られてきた文章で、誤字脱字などのミスがあっても、訂正せず引用するようにしてください。原則として引用部分は変更してはいけないというのもビジネスメールの作法のひとつです。
絶対やってはいけない返信時のマナー違反
返信の書式についてですが、どんな内容に関わらずビジネスメールの基本構成を守ることは大事です。通常、返信する相手の名前や会社名、所属先の部署などをメールの冒頭に記載しますが、面倒だからとこれを省き、本文で書き出すのはNG行為です。最初はまず、相手の会社名や名前(宛名)、そして自分の名前や所属を話し(名乗り)、本文へ書き出して、後半は「~ですがよろしくお願いいたします。」という(結び)、そして最後に改めて自分の名前と所属を書き出す(署名)というのが返信における基本的なフォーマットです。
この流れを逸脱した不躾な返信をしてしまうと、相手に嫌な印象を与えかねません。もし書き出した後に不安になった場合は、先輩上司や同期の人に確認を込めて一度見てもらいましょう。また先程から距離感について触れてきましたが、社会人として敬語や丁寧語を間違えず使うというのも、相手とのベストな距離感を維持する為の大切なマナーです。例え親しみやすい相手でもビジネス上の間柄です。言葉遣いには細心の注意を払いましょう。
書きにくい催促メールは遠まわしな言い方で
“ビジネスメールの壁”ともいえる相手への催促メール。遅れている納期や締切、重要な約束が果たされていない時、どんな事情があろうといやでも返信メールを書き出さないといけません。ですがそういった催促メールは言い回しや内容に今まで以上に気を遣わなくてはならず、下手をすれば書き方次第で余計なトラブルを生んでしまうことも……。「何故遅れているのでしょうか」、「もう既に期限が過ぎていますよ」といった直接的なフレーズは相手を更に追い詰める結果になってしまうので避けましょう。
具体的なモノを挙げるとすれば「進捗はどのような具合でしょうか?」、「ご確認いただけますでしょうか?」といった遠回しで比較的ソフトな言い回しが無難です。最初から語気を強めるのではなく、物腰を柔らかく、段階を踏んで少しずつ強い言い方に変えていくというのがコツです。
相手からの提案や誘いを断りたい時の返信
ビジネスの世界では、相手からの提案や誘いに対しキッパリと断ることも大切です。ですが、相手の気持ちを重んじ過ぎて曖昧な返信をしたり、ずっと答えを保留にしてしまうのはかえって失礼ですし、関係が拗れてその後の仕事に差し支える危険性があります。ここで重要になるのが「どんな言い回しで断ればいいのか?」、「それはどの程度の強さが妥当なのか?」という点です。ストレートな言い回しで「お断りします。」や「ご遠慮申し上げます。」だと無愛想な感情が文字から伝わり、向こうの気分を害してしまいます。
こういった状況で丁寧に断るには「お気持ちだけ頂戴致します。」、「~ですのでご了承ください。」といった形が一般的です。相手の立場や関係性をよく理解し、どんな言い回しが良いのかよく検討しましょう。まず頭に入れておくのは“相手のことを傷つけないように”ということです。
打ち合わせなどの日程調整では無駄なくストレートに
会議や打ち合わせをする際、日程調節をメールでやりとりすることは往々にしてよくあります。「○○についてお話したいのですが、以下の日程で打ち合わせは可能でしょうか?」といった内容がまさにそうです。しかしこちらの都合がどうしても合わない場合はどうすれば良いのでしょうか?もしも相手側が先に日程を指定しているなら「○日は別の予定が入っておりますので、○日の○曜日でお願い致します。」という具合に、ダメな日程を最初に知らせ、都合の合う日程をこちらから提示して返信するようにしましょう。
こちらの希望を早い段階で示すことで何回もメールの往復をせずに済みますし、相手とスムーズに調整が出来ます。もちろんこの時も相手方に失礼のないよう、丁寧な言い回しで話すことを忘れないように。
返信メールは相手を思いやる気持ちが肝心要
「相手を怒らせないようにするにはどんな文章がいいのか……。」こういった悩みにぶつかってビジネスメール自体に苦手意識を抱く人をよく見かけます。確かに言い方ひとつで良好な関係を瓦解させたり、相手に勘違いさせてしまい取引が上手くいかなくなったりするケースも無きにしもあらず、その気持ちはよく分かります。ですが難しいことはひとまず置いておいて、まずはメールを送ってくれた相手の立場や気持ちを理解し、思いやることを優先しましょう。たとえメール上のやり取りにすぎなくても、人と人との会話には違いありません。
「こうすれば相手は喜んでくれるかな?」、「この言い方ならすぐに理解してくれるはず。」という感じに、相手の気持ちに配慮出来る癖が生まれたらおのずと気持ちのいい返信の仕方も身につくはずです。