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人との信頼を築ける傾聴トレーニング。必須スキルと使い方について解説

「傾聴トレーニング」という言葉を知っていますか? 「傾聴」とは辞書では“耳を傾けて熱心にきくこと”と現されますが、ビジネスシーンではもっと踏み込んだ意味で使われます。実はこの傾聴スキルを高めると、社会人としてワンランク上になれるとも言われています。スキルを高めるために講座に通ったりする方もいらっしゃいますし、会社によっては社員研修に取り入れられることもあります。でもそんな大げさなことをしなくても、傾聴のスキルは身に付けることができます。今回は自分でもトレーニングができるよう、傾聴の基本をまとめたので参考にしてみてください。

もくじ

傾聴スキルを高めれば、人間関係がスムーズに

傾聴とは簡単に言うと、相手の話に関心を持ち、注意深く話に耳を傾けること。ですが単純に話を黙って聴いているだけでは傾聴とはいえません。コツとスキルが必要です。

傾聴のスキル、と聞くと少し重苦しく思えるかもしれませんが、傾聴スキルを高めるということは聴き上手になることです。スキルの高め方も難しいことはひとつもなく、ちょっとした意識の変化で身につくものです。「なぜか人との会話がスムーズにできない」という悩みをお持ちの方や、「お客様ともっと親密になりたい」という方は、傾聴トレーニングにチャレンジしてみると良いでしょう。傾聴はコミュニケーションの土台にもなるので、一度身に付けておけばビジネスシーンに限らずいろいろな場面で効果を発揮してくれます。人付き合いが苦手な方や、身近な人とよく喧嘩になってしまう方にもおすすめです。

傾聴することで得られるメリットは多数

なぜトレーニングをしてまで傾聴のスキルを身に付けるべきなのかと言うと、強固な信頼関係を構築できるからです。話を聴く側の立場になってみると、傾聴することで相手の話への理解が深まります。すると相手の考えていることや望んでいることが手にとるようにわかり、アドバイスなども適切にできるようになります。ビジネスにおける営業のシーンであれば、相手の望んでいる商材を提供できます。適切なタイミングで適切な言葉や商品を提示すれば、当然相手からの信頼は深まり、良好な人間関係を築けるでしょう。また、傾聴を身に付けた上で話し手側になると、自分でも思いがけなかった考えに気付くこともあります。自ら考えながら話をするようになるので、会話が上手になったり判断力がついたりもします。傾聴のスキルを持っているだけで、聴き手側になったときも話し手側になったときも、対する相手に真摯に向き合えるようになるのです。

傾聴スキル その① 相手のペースに合わせる「ペーシング」

傾聴のスキルは、大きく3つに分類されます。まずひとつめは、「ペーシング」と呼ばれるスキルです。これは相手とのペースを合せること。具体的には話すテンションや姿勢、視線、心の状態などです。相手が落ち込んでいて相談を持ちかけてくれているときに、やたらとテンションの高い状態で接していると相手は話すことに疲れを感じてしまいます。ですが同じように悲しんで見せると、相手は安心して心を開いてくれます。このようにペースがマッチしていないとスムーズな会話は生まれません。大げさな例だと、すごく怒っている相手に対して必要以上に恐縮してみせることなどもペーシングに含まれます。「この人は私の気持ちを理解してくれている」と思わせるスキルが、ペーシングなのです。ただしやりすぎると「ばかにしている」と思われることもありますし、不快感を与えてしまうこともあるので注意が必要です。

傾聴スキル その② 相手を安心させる「オウム返し」

続いてのスキルは「オウム返し」というものです。これは従来の意味通り、相手の発言をそのまま繰り返すことを指します。傾聴トレーニングでは、反復と呼ばれることもあります。オウム返しには、「あなたの言っていることをきちんと認識しています」と表明する効果があります。カフェで「ブレンドコーヒーをお願いします」と注文したとき、店員に「ブレンドコーヒーですね」と復唱されることがあると思いますが、これもオウム返しのスキルを使っていることになります。復唱されたことで、「きちんと注文が通っている」と安心したこともあるでしょう。

ただ、会話中に何度もオウム返しを繰り返してしまうと「聴きながら何も考えてくれていないな」と思わせてしまうこともあります。何にでも復唱するのではなく、特に相手が特に強調していた言葉や、話の中で重要だと思われるポイントにオウム返しを行うと効果的でしょう。

傾聴スキル その③要約して伝える「パラフレーズ」

パラフレーズというスキルも押さえておいてください。これは相手の発言を要約したり言い換えることを指します。オウム返しのスキルと同様、相手の言ったことをきちんと認識していることを伝えられます。また、お互いの認識のズレを調整することもできます。

人によっては言葉の持つ意味が違うこともあります。「遊ぶ」と聞いたときに外でアウトドアスポーツを楽しむことを想像する人もいれば、夜にお酒を飲んで楽しむことをお想像する人もいます。パラフレーズのスキルを使えば、そのズレを調整して会話をスムーズにすすめることができます。

傾聴スキルを高めるために気をつけるべきポイント

傾聴して会話をスムーズに運ぶためには、ペーシングをベースに、適宜オウム返しやパラフレーズを取り入れると良いでしょう。スキルには入っていませんが、うなずきやあいずちも入れて相手の話を聴くようにしましょう。加えて視線をあわせたり、相手の話をさえぎらないことなども取り入れていきましょう。

さらに、自分の考えを押し付けないことと相手の考えを否定しないことも重要なポイントです。相手がAについて話していることに対し、「それについて私は絶対にAではなくBだと思っている」という風に答えてしまうとどうでしょう。相手はAについてこれ以上話すことができなくなってしまいます。こうすると相手はこちらのことを「話すに値しない人」と思い、それ以上の信頼関係を築くことが難しくなってしまいます。自分の考えを相手に伝える必要がないという場合には伝えないのが一番ですが、会話の中で自分の意見を伝えなければ、と感じることもあると思います。そういった場合にはまず相手の話を聴き終わってから、「それについて私が思っていることを伝えてもいいですか?」というように許可をとったあとに自分の意見を言うようにしましょう。そうすれば対等な立場でお互いの思いや意見を語り合うことができます。

傾聴は先入観を持たず、否定しないことが大事

より傾聴のスキルを高めたいのであれば、先入観を持たないこととを心がけてください。何度もあっている人や、長い時間を共有してきた人に対しては、人はついつい相手の考えを先読みしてしまいがちです。「あの人はきっとこう思うに違いない」と思ったこともあるのではないでしょうか。実はこういった思い込みは大変危険。相手はこれまでとはまったく違う考え方になっているかもしれませんし、案件によって反対の意見を持っていることもあります。毎回新鮮な気持ちで「相手はなにを伝えようとしているのか」を読み取るようにしてください。「前はこう言っていたのに」と否定するのではなく、考えが変わった経緯へ思いを馳せることができると相手との関係性はさらに深まるでしょう。そうすればいつ話しても真剣に話を聴いてくれる人、というポジションを手にすることができます。

傾聴が適している場、傾聴が適しない場もある

傾聴について学び始めたばかりの人が失敗してしまうケースに、スキルを無理矢理使おうとすることがあります。話を聴いているつもりでも「オウム返ししたから、次はパラフレーズだな」などと考えていると、上の空になりがちです。相手に不快感を与えてしまうことすらあります。スキルを使おうとするのではなく、相手が心地よく話できているかということを客観的に考えて傾聴しましょう。

また、傾聴が適しない場合もあります。たとえば会議やミーティング、ブレインストーミングといった場では、意見を出すことが必要とされます。相手の話にオウム返しやペーシングを繰り返しているだけでは活発に議論ができません。こういった場では自分の意見を出すことにも注力してください。一方、ただ話を聴いて欲しいという相手や問題に対してのアドバイスを求めている相手に対しては傾聴が有効。しっかり傾聴した上で、アドバイスができると相手に心地よくなってもらうことができます。

まとめ

傾聴するにはある程度のスキルが必要です。ペーシング、オウム返し、パラフレーズといったスキルを持っておくと、ビジネスや社交の場で大変有利になります。ですが何よりも大事なのは、相手のことを理解しようとする姿勢です。話し手が考えていることを真剣に聴き、内容を理解できることが、相手との信頼につながります。そういった意味ではスキルを使わなくても、相手の気持ちに立って話を聴くことができればそれも傾聴です。ただ、傾聴トレーニングをして損になることはないので、まずはスキルを身に付けることから始めてみてはいかがでしょうか。よりよい人間関係を築くため、信頼関係を作るため、人と楽しく会話をするために、きっと役に立ってくれるはずです。

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