転職活動を行う際には自己分析を行うのがセオリーですが、そもそも自己分析とは一体どのようなものなのでしょうか?なんとなく「自分を知ること」という認識を持っている人が多いのではないかと思いますが、その一言の中には深い意味が込められているようです。
この記事では、自己分析とは何か?そして、自己分析のメリットや具体的なやり方等を見ていきたいと思います。自己分析を行うことによって転職活動が捗るだけではなく、人生全般に有益な効果をもたらすでしょう。
もくじ
自己分析とは、自分を観察し自分を知ること
自己分析を一言で言うと、「自分を観察して自分を正しく知ること」です。「自分のことなんてもう十分に知っている」と主張する人もいるかもしれませんが、実際には他人のこと以上に自分については知らないことの方が多いようです。
勿論、意識の上では自分という存在をよく理解できているでしょう。自分の好きな食べものは何か、自分の趣味は何か、といった問いにはほぼ全ての人が答えられるのではないかと思います。
問題は、そのような表層意識上のことではなく、無意識レベルの話です。例えば、誰しも腹の立つことがあるかと思いますが、「自分は何故それに腹が立つのか」ということを論理的に説明できるでしょうか。
自分に実害がない事柄を目にして腹を立てるのは、論理的に考えると整合性のない話であり、多くの人はそこにある意味を意識しないままに日々を過ごしています。自己分析とは、そのような自分の無意識レベルの感情や特性、能力、才能といったものを客観的に観察及び思考することによって論理的に理解していく行為と言えるでしょう。
自己分析を行うことのメリットは何?
では、まずは自己分析を行うことによるメリットを見ていきたいと思います。自己分析を行うことによる最大のメリットは、やはり「自分について客観的に知ることができる」点に尽きるでしょう。
自己分析に限らず、主観的な判断には様々な誤りが生じてしまう可能性があります。客観性の高い判断が常に100%正しいというわけではありませんが、その様をつぶさに観察及びロジカルに思考して得られた情報は、主観的な思い込みよりは正確性が高いものでしょう。
自分を知ることによる具体的なメリットとしては、下記のような点が挙げられます。
どんな仕事に向いているかが分かる
自分の特性を知ることで、自分がどのような仕事に向いているのかを導き出すことができます。丁寧で細やかな作業が得意なのであれば、メーカーの品質管理や経理の仕事が向いているかもしれませんし、人の気持ちを慮ることに長けているのであれば、営業やマネジメントが向いているのかもしれません。
自己分析で知ることのできる自分の特性は、好き嫌いとは少々異なります。好き嫌いというのはどちらかというと主観的な判断であり、自分が「好き」「嫌い」と思う感情を主軸に据えた判断でしょう。
しかし、「向き不向き」はより客観性の高い判断軸です。好き嫌いはただ自分の感情の赴くままに結論付ければ良いものですが、向き不向きを判断するためは、それなりの根拠が必要です。
例えば、「過去その点を褒められることが多かった」「○○という目に見える結果を出した」等が根拠として挙げられます。好き嫌いという感情と向き不向きという特性はリンクしていることも多いものの、人によってはその限りではありません。
その場合は、好き嫌いとは別に、自分の向き不向きもしっかりと理解しておく必要があります。
アピールすべきポイントが明確になる
自己分析によって自分を知ることができれば、企業に対してアピールすべきポイントが明確になります。転職活動では、自分の長所や得意なことをアピールするのが一般的ですが、自己理解が伴わないアピールは根拠に欠け、説得力がなくなってしまうでしょう。
人は自分が「得意だ」と思っていることが意外とそうでもなかったり、「普通だ」と思っているものが実は得意という例もあるものです。主観による判断は常に誤りのリスクを抱えていますので、なるべく客観的に、正しく分析することが大切です。
根拠のないアピールはただの自己申告であり、誰かの心に響くこともなければ、採用に対してプラスに働くこともありません。しっかりと自己分析を行い、自分という商品のセールスポイントを探りましょう。
企業選びの際のミスが少なくなる
自分のことを知れば知るほど、企業選びのミスを防ぐことができます。勿論完全にというわけではありませんが、何も考えずに行うよりは、明らかなミスマッチを防ぐことができるでしょう。
自分のことを客観的に分析すると、自分は何を心地良いと思い、何を不快に思うのか等を掴むことができます。快不快という感覚も主観的な判断には違いありませんが、日頃は感情が邪魔をして正しく判断できていないケースも多いのではないでしょうか。
例えば、自分にとって不快な情報を何故か見てしまう、これをやれば爽快感を得られるのに何故か気分が乗らない、等が挙げられます。一時的であれば特に問題はないのですが、会社で働く以上、人生の多くの時間をそこで費やさなければならないため、冷静かつ正しい判断が求められるでしょう。
自分にとっての快不快の条件を客観的に掴んでおくことで、企業選びの際に重視すべきポイントが明確になります。それに沿って企業選びを行えば、大きなミスを避けられるのではないでしょうか。
様々な判断を客観的に行えるようになる
自己分析により自分という存在を知ることで、様々な判断を客観的かつ的確に行えるようになります。自分という人間が本質的に何を欲していて、どのような状態になれば心地良さを味わえるかを予め知っておけば、後はそれを得るための努力を行うだけです。
主観的で感情的な判断は短期的な快楽を追い求めがちですが、客観的で冷静な判断は長期的な利益の追及に繋がります。主観的な判断が功を奏するケースもありますが、多くの場合は客観的で冷静に判断した方が良い結果に繋がるのではないでしょうか。
何かを感情的に判断して痛い目に合ったという人も少なくないのではないかと思いますが、客観性を身につけることによって、そのような例を防ぐことができるでしょう。自己分析とは、自分を客観的に知ることに加え、自分に客観性を身につけるための訓練と言えるのかもしれません。
自己分析のための具体的な方法って?
それでは、引き続き自己分析の具体的な方法を見ていきたいと思います。基本的には他の何かを分析する時と変わらず、情報収集し、対象を観察し、仮定を設けて検証するという流れになるでしょう。
自分と関係のない存在であれば客観的に見つめることもできますが、こと対象が自分となると感情という壁に邪魔され、途端に難易度が上がります。自己分析を行う具体的な手法はさほど難しいものではありませんが、人によっては感情の壁が一番の阻害要因になるかもしれません。
そういったものに惑わされず、以下のような手法を取り入れ、正確な自己分析を心掛けましょう。
なるべく一歩退いて客観的に自分を見つめよう
普段は主観的な視点から様々なものを眺めているかと思いますが、自己分析を行う際は一歩退いて自分を眺めることをお薦めします。一歩退いて眺めるということが、すなわち客観的視点を持つという意味になりますので、自己分析を行う際は必須でしょう。
しかし、一歩退くというのは言葉で言うほど簡単ではなく、多くの人がそれができずに悩んでいます。人間には感情というものがあるため、自身を客観的に眺めようとしても、視点がぶれてしまったり、歪んでしまったりするのが通常です。
自分のことを一歩退いて客観的に見つめるためには、そういった感情要因を計算に入れなければなりません。元々感情的にならずに自分を見つめられる人は良いのですが、そうでない人は感情によってどの程度歪みが生じているかを計らなければならないでしょう。
そのような際、「自分は今認知がずれている」ことに気づくのが正しい自己分析への第一歩です。
過去のエピソードから自分の強みと弱みを探ろう
過去のエピソードから自分の強みと弱みを探るのも自己分析のセオリーです。客観的に自己を分析する際には、必ず何かしらの根拠を求めることになりますので、過去のエピソードはうってつけの材料となるでしょう。
例えば、他人から褒められたことは強みに繋がりやすいですし、頑張っても報われなかったことは弱みに直結しやすいと言えます。その辺りにも当然シビアな判断が要求されますが、強みというのは、「あまり努力しなくても他人が喜んでくれること(結果が出ること)」と定義しても良いかもしれません。
しかし、そのようなエピソードが全くないという場合はどのように強みを判断すれば良いのでしょうか?その場合は、今からでも様々なことに挑戦し、「さほど努力しなくても結果が出るもの」を探るというのも一つの手です。
もしくは、その片鱗を過去のエピソードから探るというやり方もあります。その際は、自分がやっていて楽しかったことや情熱を傾けられたものを軸に探してみることをお薦めします。
周囲の人に自分の印象を尋ねてみよう
周囲の人に自分の印象を尋ねることで、客観的な意見を得ることができ、自己分析の参考になります。自分自身に客観的な視点を育むのも有益には違いありませんが、元々客観性の高い他者に尋ねることで、自分の本当の姿を知ることができるでしょう。
その際に注意したいのは、あくまでも参考程度にとどめておくこと、そして何を言われても感情的にならないこと等が挙げられます。第三者の意見といえども、それもあくまでも一つの視点に過ぎませんので、100%正しいという保証はありません。
また、自分の期待していたことと違うことを言われても感情的にならず、冷静に受け止める覚悟が必要です。そこで怒ったり落ち込んでしまうと、相手は気をつかって今後本音を語ってくれなくなることが予想されます。
自己分析の段階で感情的になってしまうと、今後の転職活動に差し障りが出てしまうかもしれません。第三者的視点とはいえ、あくまでも一つの意見に過ぎませんので、あまり囚われすぎないことが大切です。
本を読み、自分の深層心理を理解しよう
本を読み、自分の深層心理を理解するのも自己分析の手法の一つです。この場合は主に心理学的な本を読むことになるかと思いますが、もう少しライトなものでも良いでしょう。
大切なのは、そこに書かれている内容を絶対視するのではなく、様々な考え方や仮説を取り込むという点です。そういった意味では、本に限定することなく、インターネットでも構いませんし、他人の知見でも良いでしょう。
自己分析は「自分を知ること」に違いありませんが、自分を100%正しく知るのは本質的には不可能です。人間というのは非常に複雑な心理を持っており、それが様々な経験によって形を変え続けているため、その様態を完全に掴むのはいくら観察力に優れた人でも難しいでしょう。
本やその他様々な媒体から得た情報は、自己分析における仮定の構築に役立ちます。それが正しいかどうかはともかく、自分のことを知ろうとする努力そのものが大切です。
然るべきフレームワークを利用しよう
自己分析を行う際は、既存のフレームワークを使うのも効果的です。フレームワークとは、考え方の枠のようなものであり、然るべき項目を埋めていくだけで、通常とは異なった視点を与えてくれます。
自己分析に使用されるフレームワークとしては、マインドマップやジョハリの窓、SWOT分析等が挙げられるでしょう。それぞれ特徴が異なりますので、自分に合ったものを使用するか、もしくは全て試してみるのもお薦めです。
フレームワークを用いることで、今まで気づかなかった自分の強みや特性、性格傾向が明確になるかもしれません。それを活かし、いつもとは異なった基準で企業選びを行ったり、より最適なアピール方法を探ることもできるのではないでしょうか。
自分を知らない人は他人を理解することが難しい
自己分析のメリットやその具体的な方法をいくつかご紹介しましたが、それ以外にも自分を知ることは様々な世界の扉を開いてくれるでしょう。自分を知っている人は何事にも動じることのない強い心を手に入れられるかもしれませんし、自分にとって心地良い環境を追い求めることもできます。
また、自分のことをよく知っているが故に他人を理解できるという面もあるでしょう。人間の精神は千差万別ですが、ベース部分は共通しているところも多いため、自分について理解することは他者理解に繋がる部分も大きいのではないでしょうか。
他人を理解することができれば、適切な関係を築きやすくなり、良い人間関係に繋がります。良い人間関係は人生の良薬となりえますので、自分が辛い時や困っている時に思わぬサポートを受けられるかもしれません。
しかし、自分のことに無知であれば、他者の心を慮るのは難しいものです。それでは仕事やプライベートに支障をきたしてしまう可能性がありますので、自己分析を行い、まずは自分のことをしっかりと理解できるよう努めましょう。
まとめ
転職活動時には業界研究や企業分析も必須ですが、自己分析の重要性も忘れてはいけません。そもそも、自分のことを知らなければ自分に合った仕事や企業を見つけることもできず、ひいては仕事を通して充実した日々を過ごすこともできないでしょう。
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」という言葉で謳われている通り、自分を知っている人間は強いものです。それは、感情や反射による主観的な判断以外にも、もう一つ客観性という視点が構築されるからではないでしょうか。
物事を正しく観測するためには、一つではなく、多角的な見方が必要です。それは自分に対してもそうですし、何かしらの決断を求められた際にも言えることです。
人生の岐路に立たされた時、自分の主観以外にも客観的な判断軸を用意しておくことで、自信を持って道を選ぶことができるでしょう。それが必ずしも正しいものとは限りませんが、失敗を糧に、更にその精度を上げることも可能です。