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電通だって選択肢?ワークライフバランスとは?

終身雇用制の崩壊や、政府の働き方改革など、日本人の働き方が大きく変わった21世紀になり、改めて考える人の多くなった「ワークライフバランス」。

現在就活をしている方は、自分のワークライフバランスを守りたいと思い、まだ見ぬ「ブラック企業」にそれを脅かされないかと怯えている方もいるのではないでしょうか。

今回はそんな就活中の方の未来の充実の為に「ワークライフバランス」の考え方と、その定義をご紹介いたします。

もくじ

「ワークライフバランス」の考え方

「ワークライフバランス」とは、辞書でその意味を引くと

やりがいのある仕事と充実した私生活を両立させるという考え方。仕事と生活の調和。企業はこの実現のために、フレックスタイム、育児・介護のための時短、在宅勤務、テレワークなどを導入している。WLB。

とされています。

この説明は定義化としては十分とは言えますが、では「やりがいのある仕事と充実した私生活の両立」というのは全ての人間に一律な答えがあると言えるのでしょうか。

択一的な意味の理想ではない?

例えば1日を時間で区切った時に「仕事の勤務時間が8時間、プライベートが8時間、睡眠時間が8時間で週休2日あれば誰だって満足する」という答えに全ての人が賛同できるかと言えば、そうではありません。

未婚者、既婚者、世帯の子供や要介護者の有無だけ見ても人それぞれですし、もっとお金を稼ぎたい、経験を積みたいという人もいれば、家族ともっといたいから仕事がしなくてもいいという人もおり、事情も様々です。

これはこの言葉の定義の誤解といわれている点なのですが、人によって「仕事のやりがい」や「充実した私生活」の定義も違うのであれば、当然「ワークライフバランス」の意味も変わってきます。

つまり現時点ではこの名詞には明確な定義がなく、主観的な捉えられ方をすることの多い言葉と言えます。

仕事の生産性向上も求められている

ではワークライフバランスの本質とは何なのでしょうか。

この言葉は時に、残業の廃止や有休育休の完全取得など、仕事を早めに切り上げるという意味の価値観だという認識をされています。

その認識はある程度正しいのですが、それだけでこの言葉を理解してはいけません。

ワークライフバランスとは、そのように仕事を早めに切り上げ、仕事以外の分野でも充実した生活を送るためには、労働者は時間当たりの生産性を上げなければいけない、という考え方なのです。

「仕事は程々にする」ということと「仕事は適当にやる」は似ているようで異なっており、ワークライフバランスを重視していても、勤務中の職務はしっかり行う、というのもワークライフバランスの考え方です。

それを実現するためには、単に時間を削減するのではなく、仕事のやり方などの手順や、仕事のやりがいなどの意欲の面でも、社員を変えていく必要があります。

つまりワークライフバランスとは、「個人個人の価値観の尊重」と「生産性の高い仕事をして仕事を早めに切り上げられる社員の育成」というふたつの軸を持って構築されるものです。

個人の価値観の尊重

前の章でワークライフバランスとは、個人の価値観の尊重と、仕事の生産性向上というふたつの軸で成立するとされています。

ですが後者の意味が「仕事を単に早く切り上げる」ことと誤解を生んでいることもあり、その言葉の理解はまだ浸透していないといえます。

この誤解は前者の「個人の価値観の尊重」についても同様です。

政府主導のワークライフバランス

元々ワークライフバランスとは安倍内閣が提唱した「一億総活躍社会」を目指すマニフェストから生まれた「働き方改革」によって脚光を浴び始めた言葉です。

この「働き方改革」の内容を大まかに理解してください。

現在の日本は超高齢化社会に突入し、将来的な労働人口の減少が見込まれ、それが年々深刻になると考えられました。

そのために日本国民が全員労働に取り組める社会構築が必要だと考えられると同時に、将来の労働人口の増加に取り組むべき、という理想への動きが「働き方改革」です。

具体的には、現代の拘束時間が長く、低賃金の続く若年層や、女性の働くことの難しさなどを改善し、子供を産みやすく、育児もできるような労働環境にしよう、といった考え方です。

そのために、仕事以外の生活も尊重するワークライフバランスを政府は提唱しだしたのです。

誤解が広がる「個人の価値観」

ですがこの政府主導のワークライフバランスが、社会に誤解を与えている側面が強いことも事実です。

多くの企業でワークライフバランスとは、女性の働ける環境を整えるためや、小さな子供を育てるための仕事のやり方だと誤解されているという問題を生み出しました。

ですが先述の通り、すべての労働者が現在子育てをしているわけではありません。

子供を育てている労働者も、子供が大きくなり手がかからなくなれば、自分の生活の向上や自己啓発、趣味の充実など、子育て以外の価値観を重視する時も訪れます。

なのに政府はワークライフバランスを主に子育て支援のように誤解させ、企業も政府の命令に従うように、育休制度の導入など、子育て世代のためだけのワークライフバランスを整えてしまうなど、局地的な取り組みで終わっているという場面も見られています。

今後のワークライフバランス実現のための取り組み

これまでの章で、ワークライフバランスとは定義としては確立しているものの、まだ理解を妨げる多くの誤解を抱えた言葉であることを説明してきました。

本来この言葉は全ての労働者に適用される考え方であるのに、政府や企業の主導で実現する現在のワークライフバランスは、一部の労働者への局地的な取り組みに過ぎないものになっているという問題を抱えています。

ではどのようにして、ワークライフバランスを実現していくべきなのでしょうか。

労働者は自ら時間を作らなくてはいけない

まず、労働者は企業に時間を与えられるのではなく、仕事を終わらせ時間を作るという考えにシフトしていけなければなりません

しかしこの場合は、労働者は勤務時間中にがむしゃらに働き仕事を終わらせようという意味だけではありません。

効率のいい仕事をし、支出を減らして利益を増やし、残業の必要性をなくす、という考えがワークライフバランスの理想系です。

仕事時間を減らして仕事を後回しにして破綻を招いたり、現在のやり方のまま時間を削って利益も減らし、賃金も減るというのはワークライフバランスの本来の意味とは異なります。

本来は充実した生き方の選択を助長することが理想なので、何かの為に別の何かを切り捨てるという問題ではないのです。

管理職世代の意識を変える

もうひとつワークライフバランスにおいて重要なことは、その答えがひとつではない、という前提で実現を模索することです。

新入社員、産休に入る女性社員、管理職、全ての人が平等に恩恵を受けるべきなのがワークライフバランスであり、特定の人を保護するルール作りではそれが実現したとは言えません。

ワークライフバランスの実現はひとつのルールのみで実現するものではなく、いかに多様な職業と私生活の両立のニーズにどれだけポリバレントに対応できるかという整備が必要になります。

そのために必要になるのが、日本の高度経済成長を担った、現在企業の管理職にいる世代と現在の若い年代の労働者の仕事観の認識の齟齬を埋めることです。

昭和から平成に移行する頃の日本では、仕事を長くやればやるほど成果となり、評価となる考えが確かにありました。

国全体がそのような働き方になるように最適化していた時代でした。

ですが今は働き方が変わり、ただ時間を長くやるだけでは成果が出るとも言えず、それが必ずしもよいわけではないという考えに変化していっています。

まずは管理職が今の時代に合わせた働き方を理解し、社員全員にそれぞれのライフスタイルがあり、それを尊重するという、自身の時代にはなかった考えが存在することを理解することです。

そのような意識が浸透し、それを当たり前のものにしていくことも、ワークライフバランスの理解を深めるために重要な要素になるといえます。

まとめ

フレックス出勤や育児休暇、定時帰社などの条件は、ワークライフバランスを意識した取り組みではあるものの、それはひとつの側面でしかありません。

金銭的なものや仕事のやりがいなど、多くの条件を総括しバランスを取るものがワークライフバランスであり、客観的な基準で個人の幸せを決定することはできません。

ワークライフバランスは全ての労働者に与えられるものであり、決して特定の労働者に都合のいいものではないということをまず理解しましょう。

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