可視化とは、その字の通り、物事を見えるようにすることです。
ビジネスにおいて、部署や担当者によって、事業の進め方の認識が違っていたり、情報の共有ができなかったりすると、事業をスムーズに進められず、企業活動の妨げになっていることもあります。
作業や全体の流れ、情報などを誰もが分かるようにすること、つまり、可視化をすることで、ゴールへの道筋も分かり、企業活動における今後の方向性も見えてくるのではないでしょうか。
ここでは、可視化の意味にはじまり、可視化をするねらい、そして、何について可視化をするのかなどを紹介していきます。
もくじ
可視化をすることで問題把握と情報共有ができる
ビジネスにおける可視化は、それに関わる誰もが、物事や情報、作業等の流れが分かるようにすることです。
可視化をすることによって、企業活動においてどんなことがもたらされるのでしょうか?
それまで見えなかった問題点を把握できるようになり、部署を超えて情報共有をすることもできます。
こうすることで、組織における風通しも良くなり、企業活動に役立てることができるのです。可視化は、ビジネスにおける有益な管理方法の一つです。
可視化とは物事を「見える」ようにすること
ビジネスの現場における可視化は、「見える化」と言われることもあります。
それまで、何となく感覚的に把握していたことを、誰もが分かるように客観的な数値や言葉などで表すことです。図や表などにしてビジュアルで見せることもあります。「見える化」とも言われるように、「見て」「分かる」ようにすることです。
可視化をすることで、それまでは「見えていなかった」ことが分かってくることもあるでしょう。組織においては、部署や担当者によって、とらえ方が違っていたり、思い込みがあったり、あるいはコミュニケーション不足だったりして、状況や情報の共有ができていないことも多々あります。
業務をスムーズに進行させるためにも、可視化をし、物事や全体像を把握できるようにすることは大切なのです。
可視化によって潜在する問題やニーズを探し出す
可視化をするねらい、その一つに業務の効率化があります。例えば、工場などの製造現場では、リードタイムを短縮するために、可視化をすることが早くから導入されてきました。
「効率を上げたい」「どこに無駄があるのか探したい」「コストを削減したい」などの問題を抱えている時に、まずは業務の可視化をします。それにより、作業の工程などを見直していくと、それまでは、担当者の経験や感覚によって進められていた業務が、具体的な数値や情報となってくるので、業務のロスや潜んでいた問題点などが、誰の目にも明らかになるのです。
こうした可視化によって、各現場や各業務、あるいは、部門をまたいで取り組んでいるプロジェクトなどで業務の見直しをすることができ、対策を立てることができるのです。
可視化をすることは問題解決の糸口になる
見えない部分が明らかになる、つまり、可視化をすると、その該当する部署や業務、プロジェクトなどにおいて、それまで隠れていた問題点が明らかになってくることもあります。そこから、業務改善、問題解決へとつながる糸口もみつかるでしょう。
これは、人間の行動サイクルからも言えることなのです。まず、人は見えてきたことを「問題として認識」し、それについて「考え」「判断」します。そして、それを周囲に「伝え」、それに沿って人々が「行動」します。
このような一連の流れで見ていくと、まずは、どこに問題があるのか。そして、その問題は何か。可視化をすることで視覚的にイメージしやすくなり、これらの問題点を把握することができ、それによって問題解決のスタート地点に立てるということなのです。
具体的には「何について」可視化をするのか?
それでは、可視化をする時は、何について、どこをすればいいのでしょうか?
可視化をするねらいには、業務の効率化やロスの発見などの問題把握があります。となれば、まずはどんな業務でも、第一線でその業務にあたっている現場スタッフが、現場ならではの問題をふまえながら主体的に可視化に取り組むことが望ましいでしょう。
そして、これまでは一部の経験者や担当者にしか分からない業務があったならば、それを誰が見ても分かるようにすること。そして、部署をまたいで作業を進めている場合などは、部署の垣根を超えて業務の流れが分かるようにすることです。
各部署の業務内容、経験、情報を可視化する
業務内容について可視化をするとなれば、具体的にどんなことを見えるようにすればいいのでしょうか?
業務のすべてについて可視化をしてしまうと、煩雑になり、逆にどこを見ればいいのか分からなくなります。可視化をするのは、その時、その場で求められている重要事項に絞って見えるようにします。
業務内容を誰にでも理解できる、誰にでも作業できるようにすることができれば、それら一連の流れが分かるように業務フローも作成します。
一方、この現場ならではの作業工程で留意しなければならないこと、守るべきルールなどの情報共有が重要であれば、それらを一覧にして、分かりやすい場所に掲示したりして可視化をします。
そして、もしも、これまでベテラン社員が感覚などで進めていた職人技のような部分があれば、そこは、他の社員でも作業できるように、マニュアルを作成して可視化をします。
マネジメントではプロセス、人、資金を可視化する
可視化をすることは、マネジメントにおいても有効で、経営改革等の判断にもつながります。
とくに、可視化をしたいこととして挙げられるのが、プロセス、人、資金などです。具体的な例としては、生産工程のロス、削減したいコスト、スタッフの適材適所などでしょう。
これにはまず、業務の流れを可視化することから始めます。それをもとに、どこをどう対策すればよいのかを検討していくことができます。
その上で、さらに、作業内容やスタッフの配置、在庫やコストなど、それぞれの詳細について可視化に取り組むことができます。
経営戦略を考える際は、トップの考え方が大きく影響するものですが、その判断につながる問題点や現状を、可視化によってつかむことができるのです。
可視化をすると何が見えてくるのか?
例えば、可視化をすることで、それまで主観的に進めていた業務や、前例に沿って進めていた数量、価格などに、実は対策すべき問題があることが分かってきたりします。
一方、それまでは、作業を終えればそれでおしまい…だった仕事も、製品を渡したその先の部署で問題やストックを抱えていることが分かってきたりします。
可視化をすることで、企業内の効率化について考えることができ、部門をまたいで情報の共有ができます。その結果、部門間でどのように連携していくかの方向性も見えてきます。
問題点が浮き彫りになり戦略を立てることができる
これまで述べてきたように、可視化をするメリットは、可視化により企業活動や組織における問題点や課題が浮き彫りになってくることです。現場のスタッフだけでなく、リーダーやマネジメントに関わる人にとっても、これは大きいことでしょう。
なぜなら、業務の問題点や改善点は、企業活動の将来に大きく関わるからです。
トップやマネジメントに関わる人であれば、業務の効率化はもちろん、マネジメントにおいて必要な売り上げやコスト、生産性や利益率、在庫なども注目したいところです。それらも可視化をすることによって、細かい点も明らかになってきます。
これらマネジメントにおける重要な要素は、事業の優先順位や投資先を判断するのにも使うことができます。そして、これらをもとに、事業計画、そして経営戦略を立てることに役立てることができるのです。
可視化をした内容をフィードバックし改善につなげる
一つ留意しておきたいのが、可視化をして、それで安心してしまわないことです。よくあるパターンが、可視化によって業務の問題点や改善点が明らかになり、そのことに納得して終わってしまうことです。
ビジネスにおいて大切なのは、その先です。業務の問題点を把握した後は、その対策を練り、取り組むべき内容を明らかにし、各人、各部署にフィードバックすること。さらに、それらを実施するように促したりすることも大切です。
業務管理方法の一つとして取り組むことの多い可視化ですから、このように、見えるようになった問題点をどう現場にフィードバックし、その改善作業についてモチベーションを高め、どう現場で実行していくかが、大きなポイントになるでしょう。
まとめ
ビジネスにおける可視化とは、それまで一部の人にしか分からなかった業務や情報などを、誰もが分かるように、文字や数値、図表などを使って表すことです。「見える化」と言われることもあります。
可視化をすることで、多くの人がその作業や情報を共有できるようになります。さらに、それまで分からなかった問題点が見つかったりもします。つまり、企業活動における問題解決の糸口となるのです。
可視化をするところとしては、業務の内容や流れ、情報、ベテラン社員が経験で進めていた作業などがあるでしょう。部署を横断するプロジェクトなどでも、取り組む内容について可視化をすることは有効です。
また、マネジメントにおいては、現状の把握をし、問題点や改善点を把握することで、事業の優先順位も見えてきます。それらをふまえて、今後の経営戦略を練ることもできるでしょう。