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働き方を変えたいなら、そのヒントはやっぱりシリコンバレーにありそうだ

東京で大雪が降ると、雪に不慣れな交通網は軒並み停滞します。近隣の県から首都圏に通っている人々が多い東京では、こうした天災一つとっても、移動もさることながら、どこかで待機がてら休むことも難しいくらいに混雑します。人の吹き溜まりができるのですね。人が集まる場所では、「非効率」さというものが必ず付きまといます。

さて、「働き方」という点では、特にIT業界などで参考にされているのがシリコンバレー(Silicon Valley) です。ここシリコンバレーでは、イノベーションが起きやすく、新しいアイデアと事業が次々と生み出され、若くして成功する経営者も輩出されています。そうしたシリコンバレーを参考に、多くの国や企業が、どうにかシリコンバレーのようになれないか、と模索しています。最近になってまた改めて注目され、この地に視察に赴く企業も増えてきています。

しかし、シリコンバレーとて、必ずしも良いことばかりではありません。働き方を考えたとき、シリコンバレーを参考にしつつも、日本の企業は独自の働きやすさを追求する必要があるでしょう。まずは、シリコンバレーの基本的な知識から、日本独自の働き方を考えるヒントをつかみたいと思います。

もくじ

皆が知っているシリコンバレーはこんな場所

シリコンバレーは地名ではありません。アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコにあるサンタクララバレーおよびその周辺地域をまとめた呼称です。歴史は古く、第二次世界大戦中からスタンフォード大学と軍需産業が中心となって始まりました。その後多数の半導体メーカーが集まり、谷の地形と掛け合わせてシリコンバレーと呼ばれるようになりました。今ではここはベンチャー企業の聖地であり、Apple、Google、Facebook、Yahooなどに代表されるソフトウェアやインターネット関連企業がひしめく場所となっています。

多くのIT先端企業が集まることで、そこで働く多種多様(ダイバーシティ)な人々も集まってきます。多様の価値観を持つ人々が集まることで、多様な文化も持ち込まれ、そこで混ざり合い、さらに多様な文化へと発展しやすい環境となっています。大学と企業が共存した地域ですので、比較的若く優秀な人材が出会う機会も多く、それが新しい技術の創出と発展を短期間に生みやすくしています。

一方、人が集まるからこその課題もあります。例えば住宅事情です。誰もが通いやすい家を求めるため、職場から近い人気の地域は考えられないほど高額です。億単位の家も珍しくありません。当然ながら、適度な値段の家に住むのであれば郊外になりますが、そうすると通勤時間の問題も発生します。車社会ですから、通勤の渋滞も問題になります。通勤や住宅の問題は、あたかも日本のそれと変わらないように感じます。

また、シリコンバレーにおいても、自由な働き方が歓迎されている分、「働き過ぎ」という課題も抱えています。もっとも、楽しく長く働くことを好む人も多いのでしょう。そこには仕事と好きな事の区別はありません。好きな事が仕事になっているからこそ、起きている間は全て仕事、という働き方の人も多いようです。

シリコンバレーの良い面を取り入れるためにも、日本の働き方との違いを知る

そうした問題があっても、シリコンバレーには優秀な人材が集まってきます。シリコンバレーと日本ではそもそも何が違うのでしょうか。よく言われているシリコンバレーの特徴には、「失敗を受け入れ、そこから学ぶ文化」であることが挙げられます。失敗したことを責めるのではなく、その失敗から学んだことで、次は同じ失敗をしない、むしろ失敗を歓迎する風土があるのです。当たり前のように失敗できることは、次も前向きに再チャレンジできます。失敗後に立ち上がるハードルが低いからこそ、果敢に新しい事業にチャレンジするスタートアップが出てきます。こうした環境で働いていると、失敗を恐れずにベストを尽くすことが当たり前になるのでしょう。

また、特にシリコンバレーでは、「決断の速さ」が重要視されます。多くの企業がビジネスで成果を上げるには、より速い決断を求められ、スピードアップを図っています。決断のスピードを速めるためにも、働き方の特徴としては、切り替えの柔軟さというところに現れてきます。今日やっていたことの続きが明日にもあるとは限りません。良いと思えば全く違う仕事に向かっていることも往々にしてあります。シリコンバレーに行ってみないと、その感覚を感じることは難しいかもしれません。しかしながら、ただシリコンバレーに行くのでは意味がありません。こんな課題をシリコンバレーではどう解決しているのだろうか、と、いくつかの具体的な課題を持って現地を訪問したいものです。

働き方の何を変えれば良いか、シリコンバレーからのいくつかのヒント

そうしたシリコンバレーの特徴を、そっくりそのまま日本に取り入れるのは難しいかもしれません。しかし、そのエッセンスを仕事の中に加えてみることはできるでしょう。どんなエッセンスを取り入れてみればいいのでしょうか。例えば、次のようないくつかの試みを始めることができれば、あるいは社内に違う働き方を受け入れることができる素地ができていくでしょう。

  • 多種多様な人たちが自由に話し合える場をつくる。
  • オフィスレイアウトをオープンな場に変える。
  • 理系や文系、学歴などの壁を失くす。
  • 希望するプロジェクトに自由に参加できるようにする。
  • 組織や部門の壁を失くす。フラットな組織にする。
  • 失敗を責めず、再チャレンジを歓迎するルールを作る。
  • 新しいビジネスを立ち上げる自由を与える。
  • 新しいアイデアは表彰する。

など、今すぐにでもやれることはたくさん見つかりそうです。こうしたいくつかの試みを、いきなり始めても、すぐには効果が出ることはないでしょう。文化や風土はある程度の時間をかけて徐々に馴染んでいきます。社内の風土が変われば、働き方も自ずと変化していくでしょう。それはシリコンバレーのそれと似たものになるのか、自社の文化と融合し、全く新しい働き方が誕生するのか、いくつかの変化のパターンもありそうです。この日本においては、できれば後者の「新しい働き方」が生まれやすい企業風土が求められているのだと思います。

まとめ:日本にもスタートアップが生まれやすい環境を

住宅や通勤事情、働きすぎになりがちな環境であるシリコンバレーは、それだけ見ると日本の、特に東京の抱える課題に似通っています。しかし、働き方に注目すると、「失敗」を受け入れ、「多様な考え方」を受け入れ、「スピード」や「変化」を重視しています。この考え方は、まず今の日本には決定的に不足しています。もし、日本がシリコンバレーを目指すなら、これまで日本がしてきたように、できるだけ模倣していくことも一つの選択です。しかし、働き方の模倣だけでは、シリコンバレーのようになれても、シリコンバレーを越えることはできません。シリコンバレーで何かを学び、何か大きな違いを感じることができたなら、それを今の働き方にうまく融合していくことこそが、これからの日本の働き方に求められていると感じます。

それがどのような働き方なのか、どんな企業がそれを見つけ適用していくのか、それはまだまだわかりませんが、すでにその試みは一部の企業で始まっていると考えていいでしょう。いずれ、日本にも多くのスタートアップが生まれやすい環境が生まれ、多様な働き方のできるシリコンバレーのような企業が出てくることを期待したいです。

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