期待を胸に入社した会社で働き始めると、いろんな刺激を受けます。最初は自分用のパソコンや備品がうれしかったり、会議や打ち合わせに参加することにも「社会人になった実感」として好意的に受け止められたのではないでしょうか?
ところが、日が経つに連れて「忙しい」「疲れる」という気持ちの方が大きくなったり、「この仕事は合わないんじゃないか?」という疑問を持つようになります。
家族や年上の友人に相談しても「若い人はこれだから」「入社したばかりなのに我慢が足りない」など、否定的な意見で責められ、ますます仕事に対しての気持ちはしぼんでいきがちです。
今回はそんな「入社早々に仕事を辞めたい」と感じている人へのお話です。社会や人生の先輩の意見は大切です。的を得ているものもあります。だからこそ「入社早々に辞めたいと思っている自分」に迷ってしまうのではないでしょうか?
もくじ
入社早々だからこそ「辞めたい」と考えやすい!それは「若いから」なのか?
そもそも「入社早々に辞めたい」と感じるのは「若いから」なのでしょうか?厚労省の発表した過去5年の離職率を見てみると、確かに年齢を重ねた人よりも若い人の方が離職率は高くなっています。 しかしそれは「辞められる環境だから」ということが大きく影響しています。ある程度年齢を重ねると「仕事を辞める」という決断を一人ですることは難しく、大抵の場合は、自分が仕事を辞めることによって影響を受ける人がいるからです。特に新卒であれば、まだ養う家族が居る確率は低いですし、会社で重要なポストに就いているから辞められない、ということもほぼないでしょう。
しかし、若い人も「この仕事を続けたい」と思って入社しています。ついこの間までは「この会社でがんばるぞ!」と思っていたはずです。それが短期間で「辞めたい」という思いにたどり着くことになるのは、仕事内容や待遇だけでなく、社会においての自分の立ち位置がガラリと変わってしまうところにも理由があります。
もてなされる人から、もてなす人へ 社会人になった事実に困惑
これは新卒の人に多いことですが「働いてお金を稼ぐ」ということだけが「社会人になる」と考えてしまいがちです。もちろん、その通りです。社会に貢献してお金を稼ぐということは、社会人として最初の目標ですよね。でも「社会に貢献」って何だろう?と思いませんか?頭ではちゃんとわかっているのですが、実際に自分がどんな立ち位置で生きていくのか?といわれると、上手く答えられない人は多いのではないでしょうか?
社会に貢献するということを、わかりやすく言い換えれば「お客さんの立場だけではなくなる」ということです。これまでは、どこに行っても、何をしても「お客さん」でした。サービスを受ける、物を買う、何かを届けてもらう、などいつだってエンドユーザーだったのです。それが社会人になると「提供する側」の立ち位置も兼任することになります。アルバイトなどで理解していたつもりでも、そこには「いつかは辞める」という、ある種の安心感があったのではないでしょうか?しかし就職をすると「これをずっとやるのか」と改めて実感することになります。その時になって「続けられないかもしれない」「向いていないかもしれない」と、気が付くことになるのです。
入社早々に辞めることの3つのメリット!「今」の価値を活かすには?
入社早々に「辞めたい」と感じた時、「でも辞めてどうするのだろう?」「次がすぐに見つかるとは限らない」などを案じて落ち込んでしまうかもしれませんね。もちろん、辞めた後のことは考え無くてはいけません。でも、そんな時だからこそ「入社早々の今だから得られる辞めるメリット」を先に知っておきましょう。
心配事というのは気持ちを占領します。「心配事で他のことが手に付かない」ということは良くあることですよね。でも、物事には表があれば必ず裏があります。不安に押しつぶされて、本意では無い決断をしてしまわないために、まずはメリットを考えてみましょう。
メリット①「今しかない時間」を有効に使える
この世で「誰にでも平等で、一度過ぎたら絶対に戻ってこないもの」は何でしょうか?それは「時間」です。誰でも1日24時間、1年は365日、1分は60秒、これを変えられる人はこの世に一人もいません。あなたが今、何歳でどんな生活をしてたとしても「昨日に納得がいかないから昨日に帰ろう」ということはできませんよね。これは「仕事」についても同じです。
今の会社を続ければ「この会社での経験」が手に入ります。辞めたらそれは手に入りません。でも今の会社を辞めれば「今しかない時間」が手に入ります。辞めなければそれは手に入りません。時間が戻ることはなく、時間が経てば年齢は重なります。もしあなたがしたい仕事を選び間違えた、と感じているのであれば「今しかない時間」を少しでも早く有効に使う、というのは大きなメリットでしょう。
メリット②「高い順応性」を活かせば転職が怖くない
人間は年齢が重なると「順応性」が下がります。今まではすぐに新しい場所や人に馴染めた、という人でも、徐々に「場所に慣れるまでに時間がかかる」「人に慣れることが難しい」と感じやすくなっていくのです。新卒の人は「初めての職場」で緊張もしていますし、同期と打ち解けない人もいます。しかし、そうであったとしても、あなたの順応性は今後の人生において今が一番高いと言って良いでしょう。
毎日出勤する職場には一日も早く馴染みたいでしょうし、一緒に働く人々ともできるだけ早く打ち解けたいものです。それであれば、少しでも早い段階で転職をするというのも良いでしょう。「この仕事は自分には合わない」と思っていても「次の職場馴染めないのではないか」という不安が原因で、仕事を辞められない人はたくさんいます。今のうちに辞めて、自分の感覚が順応できる内に違う職場へ移ってしまうというのも方法の一つです。
メリット③「こういうのは合わない」自分の適性を知って軌道修正
社会人を長く続けている人の中には「自分の仕事が自分に合っているのかどうかわからない」という人は多いものです。それは毎日を必死に過ごす内に「合っているとか合ってないとかじゃなくて、とにかく毎日やらないといけないから」です。
入社早々に「辞めたい」と感じていて、その理由が「この仕事は自分には合っていない」ということなのであれば、今なら軌道修正することができるのではないでしょうか?「仕事が合っているかはわからないけど、だんだん居心地が良くなって長く続けている」という人はたくさん居ますし、それはそれで良い巡り合わせだったのです。でも「辞めたい」と考えていて、かつ「合っていないから」ということが理由なのであれば「これは自分の適性を知るために必要な就職だった」と受け止めて転職を選択するのも良いでしょう。
入社早々に辞めることの3つのデメリット!「次」への影響はどれくらい?
では、次に「入社早々に辞めることのデメリット」について考えてみましょう。きっと一番最初に「辞めたい」と感じた瞬間から、デメリットについては考え始めているのではないでしょうか?「まだ若いから」「転職先はいくらでもある」という意見も正しいのです。しかし、「入社早々に辞めたい」という状況に陥った人が「次はもっと早く辞めたくなるような会社」を選ぶことはありませんよね?「次こそは続ける」「次はもっと自分に合った会社を」と「期待」をしているでしょう。その期待は主に「職種や待遇など」について向けられます。「今より良い会社に入れなかったらどうしよう」「求人がなかったら」という部分に気が行きがちです。でも「入社早々に辞めること」のデメリットは、職種や待遇以外のところにも潜んでいます。
デメリット①「退職理由」と「志望動機」を考える
転職をする時に、必要なものが「履歴書」「面接」です。履歴書には「志望動機」を書く欄がありますし、ほとんどの転職面接では「前職の退職理由」を聞かれます。新卒の志望動機は、その企業の特徴が自分の性質とマッチしている、ということを伝えれば良いですが、転職の志望動機はそれだけでは不十分です。「前職を入社早々に辞めてまで、転職でこの企業を選んだ理由」が必要です。これは相当の思い入れがなければ書けません。何となく見栄えの良いことを書いても、面接で見抜かれてしまいます。
前職の退職理由も悩むところです。「新卒で入社して早々に退職」という事実を前向きに受け取ってもらう必要があります。基本的に前職の退職理由に「待遇」「人間関係」は使わないというセオリーがありますので、退職理由に使えるのは「自分の都合」だけです。自分がどうして入社早々に前職を辞めると決めたのか、ということを前向きに説明しなくてはなりません。
デメリット②「辞め癖」を付けてしまう可能性
就活を頑張った人ほど、最初の退職をした後に「辞め癖」が付きやすいものです。「あんなに頑張った就活で入社した会社を辞めた」という事実が重すぎるのでしょうか。「あの会社を辞めたのだから、もうどこに行っても同じ」と考えてしまいやすくなります。そうすると、転職先で何か不満を持ったり、ピンチに遭遇したりした時に「今回も辞めればいい」と、辞めるという決断をしやすくなるのです。
仕事は生きていく上で当分続けなくてはなりません。「何かを続ける」というのは、何についても同じで「それが当たり前」になる必要があります。「歯を磨くのは当たり前」だから歯磨きは続くのです。当たり前でないことは「どうしようかな?やめようかな?」と考えやすくなります。「仕事を続ける」ためには「辞めることが当たり前」を癖づけるわけにはいかないのです。
デメリット③「同期がいない」は結構キツい
就活を経て新卒で入社すると、少なからず「同期」という仲間がいます。同じ時期に入社した、自分と同じ立場の人たちですね。人によっては「入社から何十年も経つけど、いまだに同期とは飲みに行く」という人も多いものです。「ただ入社が一緒だった」というだけのはずなのに、気が付くと気持ちのよりどころとなることもあります。
転職をしても、同じ時期に入社をする同期はいるかもしれません。でも「自分と同じ状況の同期」は簡単には見つからないでしょう。自分とは違う立場の同期は、話していて楽しくもありますが、やはりどこかで「自分とこの人は違う」という思いがつきまといます。「違い」というのは、自分に余裕があるときにこそ受け入れられるものです。自分に余裕が無ければ、それは「不安」でしかありません。「同じ時期に入社した人はいるけど、同期というのとはちょっと違う」を、楽しめるようになるまでには時間がかかることが多いでしょう。
入社早々に辞めたいと感じた時の「決め手」にしてはいけないものは?
入社早々に「辞めたい」と感じた時、いろんな思いが頭の中を駆け巡ります。「辞めたい」とまで思うくらいですから、理由はひとつではないでしょう。そんな時に、自分の中で「辞める決め手」となるものが出て来ます。「これだけは譲れないから辞める」という決定打となるものです。それは人によって違います。「残業が多すぎるから」「倫理観に欠ける企業だったから」「希望の部署に配属されなかったから」などさまざまです。どんな理由であっても、それが「あなたにとっての決め手」であれば、他人からとやかく言われることはありません。
しかし「入社早々の退職の決め手」にすると危険なものもあります。「これを理由に辞めることを決めてしまと、後悔しやすい」という「退職理由」を2つご紹介します。
お金の不満はキリがない!他人と比べてはダメ
一つ目は「お金の不満での入社早々の退職」です。収入は働くことの最大の目的と言えるでしょう。そこに不満があるのに、どうして辞めてはいけないのか?と疑問に思うかもしれませんね。確かに、労働に見合わない収入は受け入れるべきではありません。でも、それは入社の時にいったん納得しているはずです。「これだけもらえれば良し」と納得したから就職したのではありませんか?
実務に入って働き出すと「こんなにキツいのに、給料がこれだけ」と不満を覚える人もいるでしょう。別の会社に就職した同級生の話を聞いて、自分よりも多く収入を得ている、と知った時に「自分の給料は安い」と決めてしまう人もいます。でも、お金には天井がありません。給料を求めて転職をしても、そこの仕事に慣れてしまえば、また同じ理由で転職をする可能性は高いのです。
「合わない人が居る不満」は働く上で避けられない
二つ目は「人間関係を理由とした入社早々の退職」です。人間関係は大事です。それは間違いありません。仕事という労働の中で、一緒に働く人との円滑なコミュニケーションは欠かせませんよね。でも、これも入社早々の退職を決める決定打にすることは危険です。それは「人間関係にひとつの不満も無い職場は無い」からです。会社というところには、人が集まります。それぞれが違うところで生まれて、違う親に育てられ、違う道を歩んできて、たまたまその会社で出会ったのです。考え方が違ったり、言い方が受け入れられなかったりすることは必ずあります。
「あの人が苦手、あの人がいないところに行きたい」と思ってやめても、転職先では違うタイプの合わない人が待っているだけです。よほど理不尽な対応をされた、不当な扱いを受けた、などは別ですが「感覚が合わない」「好きになれない」という程度であれば、「それなりの付き合い」を習得する方が安全です。
まとめ
「入社した会社を辞める」ということは、誰にでもいつかは訪れることです。転職を繰り返している人の中には「転職をしたから、今の自分がある」という人もたくさんいます。一方で「ずっと同じ会社で働いているけれど、早い内に転職をすれば良かった」と後悔している人もたくさんいるものです。結局は「辞めることがいけない」「辞めることが良い」ではなく、自分が「何を思って辞めるのか」ということではないでしょうか?
入社した会社を辞めたいと考えているあなたのことは、あなたにしかわかりません。人がどう言っても、あなたにとって正しいと思える選択なら良いのです。他人の意見は「参考」であって、「決定すべき」ではありません。あなたが納得できる選択であれば、それで良いのです。