会社を辞めるときに会社に返却しなくてはいけないものの中に、「健康保険証」が含まれていること、ご存知でしたでしょうか。
いざ退職というときまで、会社の人事総務課などにおまかせで、ほとんどの会社員があまり気に留めていないのが保険証です。
転職先ですぐに勤務開始するのか、ブランクがあくのかによっても保険証の切り替えが違ってきます。なかなかひとに聞くことのない保険証の切り替えにまつわるあれこれをご案内しますので、慌てずスムーズに手続きできるように準備をしておきましょう。
もくじ
保険証の有効期限は退職する当日まで。切り替えはテキパキと!
会社員の健康保険は、運営主体が会社によって異なります。退職によってその会社の健康保険の加入資格を失うので、辞める日に返却するわけです。
注意しなければいけないのは、保険証の有効期限は退職当日までということです。つまり、翌日からはそれまでの健康保険証を使えないのです。
日本では国民皆保険制度といって、お互いが病気や怪我の時に助け合うように、何らかの健康保険への加入が義務付けられています。手続きを怠って未払の状態だと、後になって未納分の請求があります。
保険証があると3割負担で済む診療費が、持っていないと100%自己負担することになります。
健康保険への加入は義務であるだけでなく、病院の診療費や薬代を軽減してもらえる有難い仕組みでもあります。保険証の切り替えは、退職後できるだけはやく手続するようにしましょう。
退職した後の身の振り方によって、大きくわけて4種類の加入方法があります。それぞれのケースをご紹介します。
期間をあけず再就職する場合は次の会社の健康保険に加入
ブランクなしで次の会社に就職するというケースです。
新たな会社で即時勤務を開始するのであれば、転職先の担当部署がその会社の健康保険制度に入る手続きをしてくれます。自分では特に何をするわけではありません。
前職で「健康保険資格喪失証明書」を受け取っているはずなので、転職先の総務課など担当部署に提出すれば手続してくれます。
通常は10日前後で新たな健康保険証が手元に届きます。健康保険が適用されるのは入社日からなので、保険証がとどいていないだけで健康保険には入っています。
もし保険証の発行を待っている間に病院にかかる場合は、会社の総務課など担当部署にお願いすると、「健康保険被保険者資格証明書」の発行してもらえます。
この資格証明書があれば病院の診療費や薬代が3割負担で済みます。全額負担してあとから清算は大変なので、めんどうでも資格証明書をとることをおすすめします。
再就職するまで期間が空く場合の健康保険はどうする?選択肢は3つ
新たな職場に入社するまで期間が空く場合があります。また、退職後しばらくお仕事を休むケースもあるでしょう。
切り替え方法には次の3つがあり、すべて自分で手続きします。
- 国民健康保険(こくほ)に加入する
- 前職の健康保険を任意継続する
- 社会保険に加入している家族の扶養に入る
どの方法を選べばよいのか、特徴や注意点をご説明します。
選択肢①国民健康保険に加入する
お住まいの地方自治体が運営する「国保(こくほ)」に入るという選択肢です。条件は特に設けられておらず、だれでも加入できます。
自治体の健康保険窓口に直接赴き、離職票や「健康保険の資格喪失証明書」など、退職日のわかる書類を窓口で提出して必要書類に記入すれば発行してもらいます。手続きから約一週間で郵送で届きます。
ちなみに川崎市では本人が運転免許証など写真付きIDを持参すれば、当日保険証を受け取れます。すぐに病院を受診するのに助かりますね。
退職翌日から14日以内にとされてはいますが、それをすぎても日を遡って手続き可能です。
保険料は前年度の収入に基づく計計算ですが、各市町村によって算出方法は異なります。経験上、その場でささっと計算してくださいますので気兼ねしなくても大丈夫です。
選択肢②退職前の会社の保険を任意継続する
退職しても、これまでの会社の健康保険に2年を限度に加入する制度です。退職日前日までに2ヶ月継続して保険に加入していた実績があれば加入できます。
ただし、退職前は会社とご自身が半々で保険料を負担していましたが、任意継続になると全額自己負担となります。
手続きの期限は退職日翌日から20日以内を厳守です。加入する社会保険事務所へ申請書を郵送もしくは直接赴いて手続きをします。期限を過ぎると受け付けてもらえません。手続きはすみやかに行いましょう。
手続きに必要な書類については前もって会社の総務課などに相談することをお勧めします。20日という短い期間で手続きを済ませるために、事前準備をしておけば慌てることがありません。
保険料の算出は退職前の「標準報酬月額」によります。
料金の支払いが1日でも遅れると資格を喪失しますので注意してください。
選択肢③家族の扶養に入る
会社員や公務員などのご家族の被扶養者になれば保険料の負担はありません。
扶養に入る場合の条件として主なものは次のとおりです。
- 生計を維持されている家族の3親等以内の親族であること
- 60歳未満の場合は年収130万円未満であること
- 被保険者と同居している場合、年収が被保険者の半分未満であること
- 別居している場合は被保険者からの仕送り額より年収が少ないこと
などです。
そのほか、家族が加入している健康保険組合によって扶養の要件が異なっていますので、まずはご家族が勤務する会社に相談して手続き方法もあわせて確認しましょう。
国民健康保険(こくほ)と任意継続どちらがおトク?比較の注意点
国保と健康保険の任意継続を選択する場合、どちらがお得なのでしょうか。任意継続のほうがこれまで同じ健康保険に加入しているので安心、という理由でそちらを選択したくなるものです。しかし、これまで会社と折半だった保険料が全額自己負担となるという事実を忘れてはいけません。実際に試算すると想像以上に高額に感じると思います。
親切な総務担当者のかたに任意継続の相談をすると「保険料が国保より高くなるかもしれませんよ」とアドバイスを受けることもあるでしょう。
ここでは選択したあとに後悔したり、いざ手続きをする際に現実を知ってあわてたりしないよう、事前に比較するポイントをご紹介します。
注意点①国保と任意継続の保険料を事前に確認
まず国保の場合、保険料を試算するウェブサイトもありますし、自治体のホームページでも計算方法が載っています。でも確実なのは直接市町村の健康保険窓口に行って試算してもらうことです。本人だとわかる身分証明書と前年の源泉徴収票や市県民税・特別徴収税額の通知書を持っていけば計算して教えてもらえます。
任意継続の保険料はおおまかには退職前の約2倍です。健康保険健康保険組合や全国健康保険協会(協会けんぽ)など、加入していた団体に問い合わせて制度を調べてみましょう。
保険料の試算のもととなる「標準報酬月額」には上限が設けられています。標準報酬月額の上限は、運営団体によって幅があり、例えば協会けんぽだと28万円です。28万円以上働いてもそれ以上保険料があがることはありません。
注意点②任意継続は2年間保険料が変わらない
任意継続の場合、退職時の標準報酬月額で保険料を算出した保険料は2年の加入期間中変わりません。
つまりガッチリ働いて稼いでいた当時の所得をもとに算出した保険料を退職後、一般的には収入が少なくなった状況で支払い続けるということになります。
一方で国民健康保険であれば、初年度は会社員のときの所得に基づいて保険料を支払うわけですが、翌年は収入が少なくなった所得をもと計算されます。
初年度は国保の保険料が高くても次年度は国保のほうが安いケースもありますので、転職するまでの期間がどれぐらい空きそうかも考えて任意継続と国保を比較してみましょう。
まとめ
退職したら健康保険証がどうなるのか、切り替えの種類や特徴、方法をご案内しました。
間をおかず新たな会社に勤務する場合は、特に自分で手続きは不要です。
しかし間が空く場合は、この記事で説明したような切り替え方法を知っておく必要があります。
保険料を節約するという意味では、一番よいのは家族の扶養に入ることです。任意継続か国保(こくほ)かを比較して選ぶのはその次です。
会社を辞める前に、任意継続と国保の保険料を比較するのはもちろんのこと、手続き方法や必要書類をおさえておくことでスムーズに切り替えができます。
ぜひ自分にあった健康保険を選んでいただければと思います。