女性の社会進出が当たり前になった今日でも、まだまだ女性が生涯働くには、環境整備が追い付いていない印象を受けます。管理職として転職したいのに、女性というだけで難しくなったり、出産・育児などのライフイベントで転職せざるをえなかったり…。今回は、そんな女性の転職に焦点をあてて、女性の転職希望者が苦労している場面や、女性が転職を成功させるためにできることを紹介します。
もくじ
転職するにもまだまだ厳しい性別の壁!男性社会日本でどう生き残る?
1985年に男女雇用機会均等法が施行されて以来、確かにそれ以前の日本社会に比べれば、女性の仕事の現場は確実にひろがってきました。
戦後初の女性運転士が伊予鉄道で誕生したのは2017年、航空自衛隊初の女性幹部管制官が誕生したのは2003年…。国内初の女性〇〇誕生!というニュースは珍しくなくなってきました。
それでも、女性が介入できない、または女性が採用されにくい仕事はまだまだあります。転職市場でも、男性を優先して採用する業種・職種はいまだに存在します。
履歴書に性別記入欄がないのが欧米諸国のスタンダードであるにも関わらず、日本国内ではいまだにほとんどすべての履歴書に性別記入欄があります。
このことからわかるように、就職でも転職でも、いまだにこの日本では男女の間に高い性別の壁がそびえたっているのです。女性の転職希望者の中でも、特に建設系、金融系では性別の壁を強く感じることでしょう。
女性の転職希望者が苦労していること6つ
転職というだけでもさまざまなリスクをはらんでいるものですが、女性という条件がつくと、転職したくてもできない事情が複数でてきます。
性別を問わないという求人でも実際は男性優先
求人票を見ていると、「性別問わず」という記載があったり、そもそも性別欄のない求人票が多くなってきました。かといって、本当に性別を問わないのかというと、実際は性別を見て採用・不採用を決めている企業もあります。
どの企業でも「タテマエ」としては、「男女関係なく、人間性や能力を重視します」という姿勢を示しているものの、「ホンネ」の部分は決してその通りではありません。
実際は、「女性は採用しても、その後続きにくいから、キャリア育成の名目で男性を採用しておこう」とか、「会議の後の接待が本番のようなものだから、お酒に弱い女性は採らないでおこう」など、オモテには出しにくい理由で男性を優先的に採用している企業は少なくありません。
妙齢だと結婚→妊娠の予定を聞かれることもある
”妙齢”という言葉は近頃誤解されがちですが、本来は「うら若い女性の年頃」という意味あいがあります。妙齢というと、近年では「結婚できるか微妙な年齢=30~40代」という意味で使っている人もいますが、かなり的を外れています。
正確な意味での妙齢の女性が転職を志すと、必ずといっていいほど、面接では「結婚のご予定はありますか」、既婚の場合は「お子さんのご予定は?」という非常にデリケートな内容に踏み込んだ質問をされるものです。
確かに、せっかく採用しても数年で結婚から妊娠、そして産休、育休に入られたのでは、想定していた働きをしてもらう前に長期の休みを取られてしまうことになり、企業側にとってはあまりよくない結果になってしまいます。
それでも、いわゆる適齢期だというだけで男性ではありえない質問をされること自体に憤りを感じる人もいます。
子持ちは残業・休日出勤ができないと決めつけられる
既婚・未婚にかかわらず、子どもがいることを履歴書等の応募書類で伝えてしまうと、女性ならではの問題がまた発生します。
子どもがいるというだけで、「残業はできない」「休日出勤はできない」と勝手に想像されてしまうのです。面接などで「〇〇さん、お子さんはおいくつですか?」という質問がきたと思ったら、「弊社では業務上夜遅くまでの会議があって…」「弊社ではイベント設営のために日曜でも出勤してもらうことが多く…」というように、表面上は女性側に立った物言いで、丁重に断られることがあるのです。
子どもがいれば確かに独身者と同じように働くことは難しいかもしれませんが、こちらの回答を聞く前に、「子持ち=残業ゼロ」という決めつけをされてしまうので、この時点で独身者や、男性の既婚者に差をつけられてしまうという問題があります。
女性でハイクラス求人を見つけることが難しい
女性の管理職の割合は、平成24年厚生労働省の調べによると、わずか11.6%です。男女雇用機会均等法が施行されて33年の時が経つというのに、この日本社会ではいまだに9割近い管理職は男性なのです。
能力のある女性が少ないのではありません。女性でも評価される人は多いのに、結婚・出産・子育てなどのライフイベントが、女性にばかり重くのしかかるため、女性が管理職になる前に仕事を辞めざるをえなかったり、転職しても親の介護などで休職したりと、男性のように順調に出世街道を渡れる人の数が圧倒的に少ないのです。
そのため、能力がある人であっても、女性だというだけで管理職、高収入のいわゆるハイクラス求人に転職することが難しくなっています。そもそも、女性でも管理職に就けるような企業が少ないということも問題なのです。
男性よりも厳しい年齢制限が不採用につながることも
「長期にわたるキャリア形成のため、若年層の採用を希望する」という理由で、28歳以下、30歳以下などの年齢制限のついた求人票を見たことがあるでしょう。
病院の受付などの仕事の場合、長期にわたるキャリア形成という理由のほかにも、純粋に若い人が欲しいという理由で、実際に求人票に記載されているよりも厳しい年齢制限を独自に設けている企業もあります。
「女性である」「しかも若い」という2つの条件を満たしている人を採用したい場合、28歳以下という条件を設けていながら、実際は25歳以下しか採用しないのです。
そうなると、女性の転職希望者のうち、その狭い門を通れるのは第二新卒くらいのもので、ほとんどの女性は転職できないという問題に突き当たってしまうのです。
結婚・出産の予定があるのにサポート制度がない
女性ならではのライフイベントが、自身の妊娠・出産です。もちろん産まないという選択肢もありますし、産むという選択をしているのに希望が叶いにくい人もいるでしょう。
しかし、もしも出産を望んでいるにもかかわらず、企業側がそれをサポートしないなら、女性転職者にとって大きな壁となってしまいます。
産前産後休暇、育児休暇は、労働基準法、育児・介護休業法という法律によって定められた制度であり、労働者の権利でもあります。企業は必ず就業規則にこれらについて記載しなければいけませんが、まれに記載のない企業もあります。それでも、労働者からの申し入れがあれば断ることはできないはずなのです。
ところが、産休・育休の制度はありながらも実際は取得しようと申請すると、退職をほのめかされたという人もいます。実質的なサポート制度はないも同然です。
これから出産の予定がある女性ほど、このような環境の企業に転職することはできないでしょう。
女性が転職を成功させるためにできる4つのこと
上記で挙げてきた問題のように、女性の転職には複数の乗り越えるべき壁が存在します。それでも、女性が転職を成功させるためのポイントについて紹介します。
女性であることが有利になる業種・職種の求人を探す
男性を多く採用する業種としては、建設関連が挙げられます。肉体労働という仕事柄、体力の問題で女性は志望する人が少ないからです。
また、金融関連の営業職でも男性のほうが多く採用される傾向にあります。これも上記で説明したようなライフイベントに対応しにくいことが問題として考えられます。
一方で、女性を多く採用する業種・職種もあり、こちらに焦点をおいて転職活動をすることで、女性も転職に成功しやすくなります。
具体的には、病院などの医療事務職は、圧倒的に女性採用が多くなっています。病院には不安な気持ちで来院する患者が多く、女性のやわらかい口調や物腰で応対されることで不安を軽減する目的だと考えられます。
この他にも、コールセンターも同様の理由で女性を積極的に採用しています。心配事や困りごとがあって電話をかけている人に対して、女性が対応することで初期にクレームが悪化することを抑制しているのです。
このように、女性を積極的に採用している業種・職種に応募することで、女性の転職は成功しやすくなります。
女性管理職が数多く活躍している求人を探す
女性転職希望者の中でも、ただ転職できればよいのではなく、転職してキャリアアップを狙っている人も多いでしょう。このような場合、実際にその企業で活躍している女性管理職の割合を調べるようにしましょう。
企業の口コミサイトを見てみてもいいですし、実際に会社見学に参加して、直接社員に質問してみるのも効果的です。大切なことは、性別にかかわらず実力を評価してくれる会社かどうかを見極めることです。
実力主義をうたっている企業はわかりやすいですが、そうではなくとも性別ではなく能力で管理職を決めている企業は日本にもあります。そのような企業を見つけるには、企業の内情にある程度精通している必要があります。
子持ちなら、子育てのサポートが十分あることをアピール
子持ちの女性で、残業などの時間外労働ができないだろう、という決めつけによって転職の機会を失っている人は、子持ちであってもサポート体勢が家庭に整っていることをアピールしましょう。
たとえば夫の仕事が自由業であること、実家が車で5分の距離にあり実母に子守りを頼みやすこと、同居しているので仕事に専念しやすいことなどが挙げられます。
子育てのサポートがあることがわかれば、企業側も子持ちを理由に不採用にすることはしにくくなります。大切なことは、「子どもがいても、十分に働けるだけの環境は整っています」ということをアピールできることなのです。
独身・妙齢なら仕事の明確なビジョンがあることを説明
あなたがもし未婚で、まだ第二新卒のような若い年代で転職を希望している場合、上記のように結婚や出産の予定を勝手に想定されてしまい、転職に失敗することがあるかもしれません。
でも、仕事上何歳までにどのようなポジションにいたいのか、または何年以内にどのような実績を残したいのかというような仕事上のビジョンを持っていて、それを採用試験で伝えることができればよいのです。
企業側としても、仕事を重視していることがわかりますし、ライフイベントは置いておいても、採用したら自分で出産までにここまではやる!という目標を持っていることがわかるため、採用しやすくなるからです。
女性転職希望者におすすめ!使える転職支援サービス
女性が転職活動をするにあたって、女性が働きやすい職場、働きやすい条件があるでしょう。女性に特化した転職支援サービスを利用することで、女性の転職率はアップしやすくなります。
女の転職@typeは女性を積極的に採用する求人を掲載
女の転職@typeは、「正社員で長く働きたい女性のための転職サイト」というキャッチコピーの通り、全国各地から女性が働きやすい求人を紹介している転職サイトです。
具体的には、「残業少ない」「産休育休制度活用有」などの項目あり、自分で条件をかなり絞って求人を検索することができるので、効率的な転職活動が実現できます。
また、キャッチコピーの通り、派遣や契約社員の多い女性の仕事についても、正社員での枠があるため、家庭があっても正社員で働きたい女性や、シングルマザーで正社員の収入が必要な女性も仕事を見つけやすいというメリットがあります。
エン転職WOMANは女性が働きやすい求人が満載
エン転職WOMANは、トップページに「すぐに応募できる女性歓迎求人」が掲載されており、その数は2,000件近くにのぼります。女性歓迎求人は、上記で紹介したように、女性を積極的に採用している求人であり、男性転職者との競争がない分、転職がすぐに決まりやすいというメリットがあります。
また、日本最大級の転職サイトであるエン・ジャパンが運営母体となっているため、保有している求人数も、企業とのネットワークの規模も大きく、希望する働きやすい求人が見つけやすいのです。
マイナビエージェントは女性のためのオリジナルコンテンツ多め
就活サイトとしてもおなじみのマイナビが提供しているマイナビエージェントは、上記の2サイトと異なり、転職サイトではなく転職エージェントです。
ただ求人を掲載しているだけではなく、専門的な知識・スキルを持つキャリアアドバイザーが、マイナビグループが保有する豊富な求人から、あなたのスキルやキャリア、実績にマッチした求人を紹介してくれます。
女性キャリアアドバイザーも数多く在籍しているため、女性特有の悩み、転職の際に直面する課題についても相談しやすく、的確なアドバイスをもらうことができるというメリットがあります。
まとめ
女性の転職では、本来は男性も同じくになうべき出産・育児の仕事への影響が重くのしかかり、キャリア形成にも影響を与えます。転職したいけど、今はまだ子どもが小さいから無理、転職したいけど親の介護があるから無理、という女性ならではの転職を思いとどまる理由があります。
それでも、面接や応募書類での言い回し、表現方法に気を付けるだけで、転職自体は成功しやすくなるのです。
大切なのは、転職した後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないよう、企業の育児や介護などの社員に起こり得るライフイベントへの対応がきちんとされているかどうかを調べることです。
しかし、それはイチ転職者にはわからないことも多いため、転職エージェントを利用することで、企業の内情に詳しいキャリアアドバイザーを通して、企業の内情を知り、女性が本当に働きやすい企業かどうかを見極めてから応募することをおすすめします。