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会議の目的から考える5つの形式 話し合いの生産性をあげよう

日本のビジネスパーソンが会議に費やす時間は、全体業務のおよそ15%弱という調査結果があります(NTT経営研究所)。一日8時間の勤務が年245日あるとすると、37日近く会議をしていることになります。この時間を非効率と感じる方も多いでしょう。

一方で、長時間の会議が、社内の生産性にどのような影響を及ぼしているか、これを正確に裏付ける統計やデータはほとんどありません。イギリスの公共放送であるBBCでは「イギリスやアメリカの方が会議時間が長く、日本の会議は生産的だ」と報告されたこともあります。

会議の生産性を上げるにはどうしたら良いのか、会議の目的にそって考えてみましょう。

会議が無駄に思えるのは原因がある

NTTの調査に、現在勤めている会社の会議について、全国の社員がどのような感想を持っているか調べたものがあります。

感想の上位3つは「無駄な会議が多い」「会議等の時間が長い」「会議の頻度が多い」でした。そして、そうした感想を抱く原因として「会議等のコミュニケーションが活性化しない」「不必要な参加者が多い」といった回答もあります。

ここで大事なことは、必ずしも会議の存在そのものが無駄とみなされているわけではないことです。

会議には、議題の重要度や、議決事項の内容など、様々な形があります。多くのプロジェクトや業務と同様に、会議は「目的」と「手段」、「参加者」から考えられるべきです。会議を無駄と感じる多くの原因は、多くの場合、こうした検討の不十分にあります。

目的別に考える会議の形式やメンバーとは

ここでは日本の会議を、5つの目的に分類し、最適な方法とメンバーを考えます。

目的別に分類するのは、会議には思った以上に多くの種類や方法、そして考え方があるためです。

例えばアメリカでは、会議の終了後に延長をするかどうかの決を採ることがあります。延長に賛成を入れることは、会議に貢献に意欲的であることを示すPRにもなります。

会議の有効性を目的ごとに分類することの利点は、このような多様な会議を比較して検討できることです。

1「アイデアを出す」会議はルールが重要

目的

まだ結論の出ていない課題や問題に対し、参加者からアイデアを求め会議です。アイデアをたくさん出してもらうことの他に、アイデアを広げ新しい視点を得ること、形にするための具体策を考えることなど、多くの目標があります。

手段

達成すべき目標が多いため、司会や書記を設定する、それぞれの行程を分けるなどルールの工夫が必要です。一般的には「ブレインストーミング」と呼ばれる手法が適しています。

「ブレスト」はある程度の訓練も必要ですが、付箋やカードを使うなどのバリエーションも豊富で、参加者が飽きずに会議をすることができます。

参加者

参加者にはルールの理解が原則となり、やや敷居が高くなります。人数4~12人程度が許容範囲ですが、少ない方が効率が高まるという実験結果もあります。

2「決断を下す」会議は責任者を明確にする

目的

会社の将来に関わるような大きな判断を下すことを目的とする会議です。例えばプロジェクトの方針決定や新規事業の立ち上げ、広範囲に及ぶ人員整理や施設の大規模改修などを議題とします。

手段

一般的には役員会や総会といった会議方式が想定されます。

最終決定をどのように行うか、決定権者をどのように決めるのか、欠席者の取り扱いなどの規定を整備することが前提となります。

現状の正確な理解、各提案を実現した場合の影響や将来像など、決断を下すために必要な材料を用意することも必要です。

後に紹介するように、小規模な意思決定には、事前資料の用意を禁止する国際企業もあります。こうした企業でも、意思決定を行う「責任者」は必ず明確にされるという共通点があります。

参加者

株主総会では規模によっては数千人単位に及ぶものもあります。役員会では10名程度が多いようです。大事な事は、参加資格や人数が規定に適っているかどうかです。

3「伝達」の会議は参加者を集め素早く手短に

目的

広く周知する必要のあるものを、できるだけ多くの人に知ってもらうことを目的とします。電子メールや回覧等でも代替可能ですが、参加者の反応を直に見る必要があるかどうかで、手段が変わります。

手段

最も多く見られる形式として、朝礼・終礼が考えられます。スケジュールの都合を合わせる必要がありますが、参加者の反応をみられることが大きなメリットです。あくまで伝えることが目的なので、可及的速やかに、必要事項のみを伝えます。

メールや社内BBSでも代替可能であり、資料の閲覧などその方が良い場合もあります。ただし、こうした手段はネット環境に依存するため、たとえば出張ですぐに外にでなければならない職員などには伝わらないこともある点に注意が必要です。

参加者

伝え忘れが問題になることが多いため、人数は多い方が良く、雇用形態や役職に関わらず、可能であれば職員全員が出席したほうが良いと言えます。

4「情報収集」の会議は質疑応答を丁寧に

目的

参加者から報告や事例等の情報を集める会議です。情報共有の一環であり、「伝達」と性格の近いものです。

手段

例として、ヒヤリハットの事例報告などがあります。工場での作業中の事故、医療機関でのカルテの取り間違いなど、事故に至る可能性のある大小さまざまな事例を報告し合うものです。

メール等での置き換えも可能ですが、現場の危機感や反応を共有できるため、対面で行った方が効果が高いと言えます。

質疑応答の時間を中心に時間配分を考え、発言者に対し、当時の状況や経緯などを詳しく聞き取ることが肝要です。原則的には、改善案の検討は別の機会にしたほうが良いでしょう。

参加者

目的の一つは多くの事例や情報を集めるものです。そのため、参加者は多いほど良いです。

しかし一人当たりの発言時間が公平になるようにするには、時間との兼ね合いが必要です。

30分の会議であれば、一人当たりの発言・質疑応答を3分とし、参加者を10人にするなど調整が必要です。

5「合意形成」の会議は納得感がカギ

目的

利害関係者の意見を調整し、一つの結論として取りまとめるための会議です。会議のプロセスを通じて、問題意識や将来像の共有を目的する会議で、ある意味最も難しいものです。

手段

日本では、行政の地方自治や街づくり、環境問題など、行政・民間・市民での対話がこれにあたります。

反対意見、対案などは考え付く限り提出し、検討することが大切です。場合によっては、一度では終わらず、延長したり、何度も繰り返したりということが必要になります。

関係者が納得できる落としどころを探るための会議なので、適正な手段にのっとって、プロセスを積み重ねたという実績が大切になります。議事録は必ず残す必要があります。

参加者

関係機関が納得する案を考えるのが目的のため、関係機関の代表者は全て集まった方がよいでしょう。一方で、人数が多すぎると収集が付かなくなるため、多くても20人程度が適正と考えられます。

この時重要なのは、所属間で人数の差を付けないことです。会議の公平性を担保するため、「機関から3名ずつ」などルールを設ける必要があります。

世界の企業に見るユニークな会議例

高度成長期が終わり、日本の労働環境は日々変化を続けています。特に、向上心の高い労働者にとって、時間は悩みの種です。限られた時間と人数で目標を達成し、かつ新しい技術や能力を学ぼうとするには、日々改善や効率化を勧めなければなりません。

このような視点で会議の改善を考えたとき、国際企業の取り組みは、参考になります。国際企業は、複数の国との取引を行い、他国籍の関係者と共に仕事をするために、柔軟かつ挑戦的な風土を持っていることが多く、会議にもそうした傾向が現れているからです。

ここでは、そんな企業を例に、ユニークな会議方式を紹介します。

必要の無い者は退席する Apple社

Appleの共同設立者スティーブジョブスは、企業の「イノベーション」を活発化するため、会議や立ち話を大事にしたという逸話があります。彼の会議方式は「アイデアを出す」型に分類できます。

参加者を最小限にする

彼の主導する会議は、第一に参加人数を最小限にします。ケン・シーガルによれば、定例会議に新人を連れて行くとその理由を尋ねられたといいます。出席する理由が見当たらなければ、例えプロジェクトメンバーだとしても退席を促されます。同様の理由で、オバマ元大統領からの会議出席依頼を断ったこともあります。

責任者を明確にする

議題の責任者を必ず明確にし、誰にでも分かるように会議資料に明記されます。次回の会議では、各プロジェクトの責任者が、進捗について報告することになります。これにより、各プロジェクトに対する当事者意識が強く刻み込まれます。

プレゼンツールを使わない

パワーポイントや資料によるプレゼンではなく、フリーディカッションが多く行われます。ツールを導入すると、資料作りに時間を費やしてしまい、それだけで会議をした気になってしまうからです。

時間と効率を第一にする TOYOTA方式

「ジャストインタイム」などの徹底した合理性と効率を重視するTOYOTAの生産方式は、会議の運営方針にも投影されています。特にトップミーティングでは意見が自由に出ることを歓迎し、「アイデアを出す」と「情報収集」に近い形式です。

本音で話せるように円卓を使う

上座、下座の区別をなくし、上下関係を気にせず意見交換をできるようにという配慮です。ディスカッションを活性化する意味に加え、意見や報告の言いづらさを無くす、コミュニケーション改善の効果が考えられます。

話し合うテーマを事前に決めない

議題については、参加者がその場で気になったことを述べ、その中から選んで話し合う方法です。緊急時以外は、司会進行や議長も定めないこともあるそうです。マンネリを防ぎ、発言者が偏りを防ぐ効果があります。

会議資料を持ち込まない

資料を作るために必要な作業や時間を解放し、議論の方向性があらかじめ決められてしまうことを防ぐためです。特に内部報告については、生産性がないので無駄とされています。

会議にもスマート・クリエイティブ Google社

Googleは、インターネット時代にビジネスを成功させるために、優秀なエンジニアを雇い、可能な限り彼らを自由にすることを、会社の軸にしています。専門性や創造性を持ったこれらの人材はスマート・クリエイティブと呼ばれ、会議方式も彼らの時間を有効にするルールが作られており、「決断を下す」を洗練させた形と言えます。

できる意思決定は会議前に行う

会議をする必要の無い議題は、その場で方針を決めて行動に移します。どうしても議論が必要だと判明した場合は、その場ですぐに会議を設定します。これは意思決定のスピードを上げることで、決定するまで動けないという状況を少しでも減らすための工夫です。

会議の参加者は最大8名

会議の傍観は時間の無駄であること、人数が膨らむと議論が長引くことがその理由とされています。参加者以外に利害関係者いる場合は、会議の議事録を送付することで調整を行います。

意思決定者を指名する

会議の主催者兼最終決定者を明確にし、事前に周知します。意思決定者は、会議の目的、議題、参加者について、会議の1日前までに参加者全員に送ることが原則とされています。会議後には取りまとめを行い、決定事項やプロジェクトについて2日以内に関係者に送付することとされています。

本当に「無駄」なのか これからの会議との付き合い方

ここまで見てきたように、会議には様々な目的や方法があります。しかし、会議改善として、すぐに方法を改めるのは簡単ではありません。なぜならば、会議の運営や在り方は、その会社や国の社風や文化と結びついているものだからです。

例えばアメリカの多国籍企業では、集合時間の5分後までは遅刻と考えません。また、日米欧州では、会議中に電話に出ることはマナー違反ですが、中国ではよく見られる光景です。

このような現状を考えれば、他社や他国でやっている会議方式を、形だけ自社に取り入れても、すぐに成果が出るかどうかはわかりません。

むしろ、他社や世界には様々な会議方式があることを理解し、その都度対処できるような、柔軟性を身に着けることが大切です。会議の目的を考えることは、そのための最初のステップになります。

まとめ

会議に費やす時間は、長く無駄に思われる部分が多いものの、どこまでが生産的で、どこからが無駄かを判断するのは難しい問題です。会議の種類によっては、無駄と思える時間をかけて、少しずつ進めることが、かえって納得感を高めるものもあるからです。

大事な事は、会議の目的に併せ、手段や参加者を見直し、生産を高める工夫をすることです。会議の在り方には、社風や国柄などが関わっているため、他社の方法をすぐに取り入れることは難しいですが、現在はテクノロジーの進歩により、電子会議等でこれまで以上に広い範囲の人々と会議を行うことができます。

そうした機会にそなえ、様々な会議や文化の在り方を学べば、どんな場でも対応できるビジネスマンへと成長することができるでしょう。

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